神々の誤算と大いなる惨禍

神々の誤算と大いなる惨禍--------------------------------------------------------------------------------

 自分たちがしでかした邪悪な仕事を見渡しながら、2人の英雄は目の前の光景に困惑した。空はにわかに曇り、風が吹き始めた。黒い雲の中で渦巻きながら、“邪悪な風(放射能)”が空から薄暗がりを運んできた。日が暮れると、水平線の太陽を、その薄暗がりが覆い隠した。夜には、おぞましい光が暗がりの縁を取り巻き、月は昇ってくる途中で姿を消した。次の朝になると、西から、“上の方の海”から暴風が吹き始めた。それは、暗褐色の雲を東へと導き、入植地の方へと広がって行った。その雲が到達した場所は、生きているものすべてに情け容赦ない死をもたらした。“容赦しない渓谷”から、閃光によって引き起こされた死が、シュメールへと運ばれてきた。
 ニヌルタとネルガルは、エンリルとエンキに警告を発した。「止められない“邪悪な風”が、すべてに死を運んでいます!」エンリルとエンキは、その警報をシュメールの「神々」に伝えた。「逃げろ!逃げるんだ!人々を分散させろ!身を隠させよ!」「神々」は自分たちの都から逃げた。怯えた鳥のように、彼らは自分たちの巣から逃げ出した。
 国中の人々が“邪悪な風(放射能)”の手中に落ちた。逃げても無駄だった。死はひっそりと、幽霊のように、田畑や街を襲った。一番高い壁も、一番厚い壁も、洪水の水のように通り抜けていった。どんな扉もそれを締め出すことができず、どんな錠も撥ね返すことができなかった。扉に鍵をかけて家に隠れていた人は、ハエのように殺された。通りに逃げた人は、道の上に死体となって積み重なった。咳と痰(たん)が肺を塞ぎ、口は唾と泡で一杯になった。“邪悪な風(放射能)”は目に見えず、人々を包み込むと、彼らの口は血で溢れた。“邪悪な風”はゆっくりと吹きつけながら、西から東へと、平野や山地を移動していった。後には死者と死に行く者が残され、生きていたものはすべて、人も牛も同じように犠牲になった。水は毒に犯され、田畑はすべて植物が枯れた。南はエリドゥから北はシッパールまで、“邪悪な風(放射能)”は国を打ちのめした。バビリ(バビロニア)より南の国々はすべて“邪悪な風”に飲み込まれ、第2の地域の中心部もかすめた。しかし、マルドゥクが最高権力を宣言したバビリは、“邪悪な風(放射能)”を免れた。