ヨーガ

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 ヨーガ哲学とは、サーンキヤ哲学の中心に神を据え、自我の欲望を滅し、宇宙と一体となる実践的システムである。ヨーガの基本は、神話などにしばしば登場する“修行、苦行”である。この実践方法については大きく2つの流れがあり、1つは顕教としてのラージャ・ヨーガ(王者のヨーガ)であり、もう1つは密教としてのハタ・ヨーガである。

 前者は、ひたすら欲望を無くすことを主眼とし、欲望から解脱することで悟りを開く。このヨーガの実践者をヨギンと言い、マントラを唱えながら実践する。釈迦が行っていたのは、このヨーガである。ラージャ・ヨーガの経典とも言うべきヨーガ・スートラ(スートラ:教典)には八支ヨーガと言われる修行の8つの階梯”かいてい”(禁戒、歓戒、坐法、調息、制感、凝念、静廬、三昧)が記されている。消極的な修道の概念であるニローダ(“積極的に鎮め封じること”の意から、心の動きを抑止すること)を標榜(ひょうぼう)し、哲学的追求に重きを置いた形而上学的修道論である。

 これに対して、ハタ・ヨーガはサーンキヤ哲学に基づき、俗的な属性であるプラクリティの否定によって聖なるプルシャとの合一を目指す。そのため、ラージャ・ヨーガのような階梯(かいてい)を踏まえず、一気に三昧(ざんまい)に至る方法である。ラージャ・ヨーガよって顕現したパワーを使い、俗的な世界を積極的に聖化させ、神々との合一を図る。このようなハタ・ヨーガは神秘思想とも言うべきものであり、仙人の概念へと発展し、道教、密教、禅の根源となった。ヨーガでも師のことを導師(グル)と言う。

 タントラでは、実際の身体に対して“微細身体”と呼ばれる存在を想定する。これは、肉眼では見えず、触れることもできない。しかし、肉体と同じ形、大きさであるとされる。微細身体には、脊椎に沿って7つの霊的中枢があると考える。この霊的中枢をチャクラと言う。チャクラとは“輪”という意味で、ヨーガを極めし者には、霊的中枢が円形に見えるらしいことから、このように言われる。(ヴィシュヌが持っている円盤もチャクラである。)
 また、微細身体は大宇宙に対する小宇宙を象徴する。チャクラとは、人体を小宇宙に見立てた場合、人体の中心を貫く7つの中枢のことでもある。

①サハスラーラ(頭頂)
②アジナ(眉間)
③ビシュター(喉)
④アナハタ(心臓)
⑤マニピューラ(臍”へそ”)
⑥スワディーナ(丹田”たんでん”)
⑦ムラダーラ(会陰”えいん”)


 チャクラは「生命の樹」を人体化したアダム・カドモンと対応し、背骨に沿うセフィロトだけでなく、左右のセフィロトを中心に合わせた7段階を示す。「生命の樹」に於ける慈悲の柱は陽、峻厳(しゅんげん)の柱は陰で、均衡の柱は両者が一体となった太極を表す。それ故、慈悲の柱、峻厳(しゅんげん)の柱にある同じ高さのセフィロトは、均衡の柱に於いて1つに統一することができる。

①ケテル:頭頂
②ビナー・コクマー:左右脳
③ダアト:喉
④ゲブラー・ケセド:心臓、右心房・右心室、左心房・左心室
⑤ティファレト:太陽神経叢(しんけいそう)
⑥ホド・ネツァク:両足
⑦イエソド:会陰(えいん)

 マルクトは足の裏のツボ“湧泉(ゆうせん)”として隠されており、脊椎(せきつい)には関与していない。また、アダム・カドモンの頭部も示しており、顔のカバラも構成する。マルクトは喉として、顔の外にある。

①ケテル:頭頂部
②ビナー・コクマー:両目
③ダアト:第3の目
④ゲブラー・ケセド:両耳
⑤ティファレト:鼻柱
⑥ホド・ネツァク:両鼻孔
⑦イエソド:口


 頭頂サハスラーラ以外のチャクラはマハットと五大にも対応している。サハスラーラは頭頂部から少々浮いた箇所に存在するので、微細身体に於ける実質的な最上部のチャクラはアジナである。

ムラダーラ:地・四角形
スワディーナ:水・三日月
マニピューラ:火・逆三角形
アナハタ:風・六芒星
ビシュター:空・円形
アジナ:マハット
サハスラーラ:無し

 7つのチャクラに大宇宙から絶対的エネルギーであるプラーナが降りると、チャクラの門が次々と開いて覚醒する。すると、ムラダーラ・チャクラで眠っていた生命の根源エネルギーが覚醒し、大宇宙の真理と一体化するために脊椎(せきつい)を上昇する。そのエネルギーをクンダリーニと言い、3回転半のとぐろを巻く神蛇で象徴される。
 現在流布しているヨーガでは、次のように解釈されている。まず、呼吸を整えることにより、空間に充満している特殊な宇宙エネルギー“プラーナ”を取り入れる。これは“気”“オーラ”などとも言われる。
 そして、ヨーガの独特なポーズにより会陰部(えいんぶ)を刺激し、ムラダーラのクンダリーニを活性化させる。クンダリーニにはとぐろを巻いた蛇がいることをイメージし、そのとぐろを解きほぐすように、意識によってクンダリーニを脊椎に沿って上昇させる。上昇は熱さや振動として感じられる。上昇できるまでは、精液を漏らしてはならない。最終的には、頭頂のサハスラーラまで上昇させる。クンダリーニは神妃シャクティ、サハスラーラはシヴァであり、両者の神秘的な結婚により梵我一如(ぼんがいちにょ)を達成する。サハスラーラまで上昇したクンダリーニは、体の正中を通してムラダーラまで戻し、クンダリーニを体内で循環させる。これを大周天(だいしゅうてん)と言い、これを達成できれば超人(リシ、仙人)となる。

 つまり、ヨーガにより体を柔軟にし、体内の霊的エネルギーの流れを良くすることにより、締め付けられているチャクラが開くようになる。そして、クンダリーニとプラーナが体中に行き渡ることにより、超人になれると考える。カーマでは、クンダリーニの活性化のために、性愛を利用する。男女が共に行うことにより、シャクティとシヴァの完全なる合一を達成できると考える。
  また、プラーナの通り道を気道(ナーディー)と言う。ナーディーは血管や神経のように張り巡らされ、72,000にも達するという。その中で最も重要なのは3本ある。脊椎を貫くスシュムナーを中心に、体の右半身から脊椎に絡みつくピンガラ(太陽のナーディー)と左半身から絡みつくイーダ(月のナーディー)であり、太陽と月に象徴されるように、右が陽、左が陰である。
 左右のナーディーは、アジナ・チャクラから伸びている。これは、人体としては脊椎を中心とした中枢神経と自律神経を示しているが、アダム・カドモンを正面に向けた時の、三柱の位置に相当する。そして、3本のナーディーの交差点にチャクラが存在し、「生命の樹」に於ける三柱が1本に統合された時のセフィロトの状態を示している。


 人体の中心を貫く7つの中枢チャクラは、“イナンナの冥界下り”に於ける「生命の樹」の7段階のことである。プラーナとは「生命の樹」に降下する“雷の閃光”の象徴で、頭頂部から順にセフィロトのシンボルであるチャクラを降下し、ムラダーラに達する。そこから、今度は上昇する。上昇する神蛇は3回転半のとぐろを巻いているので、「生命の樹」に絡まる蛇である。
 つまり、チャクラはあくまでも大宇宙の真理を人体に例えたものであって、大宇宙の真理と一体化するためには、「生命の樹」の奥義を知る必要がある。決して、肉体の修行や性愛に溺れることを言うのではない。そして、人体のすべてが「生命の樹」で成り立っていることを象徴している。あるいは逆に、人体の構造が大宇宙に通じる構造なので、神界に通じる奥義を「生命の樹」として象徴したとも言える。

 チャクラにはいろいろな形があり、チャクラは3本のナーディーの交差点にあるので、締め付けられた状態になっている。それがヨーガによってチャクラが覚醒すると、開花した蓮華として象徴される。各チャクラの蓮華の花弁の数と色は、例えばサハスラーラは1,000枚で光、アジナは2枚で白、ビシュターは16枚で薄紫などとなっている。込められた意味は様々で、いろいろな解釈がある。
 例えば、皇室の十六弁八重表菊紋を連想させるビシュターの色は薄紫で、紫は古代、どこの国でも最も高貴な色とされた。そして、微細身体にマルクト(足下)を加えると立ち上がった時の完全な人体となり、中心には全部で8個のチャクラがある。男女それぞれ8個で、陰陽の合一で16となる。また、エジプトの十六弁の蓮を持ってくれば、それは“復活、再生”を象徴する。陰陽の合一という点では、六芒星が究極と言える。よって、真の解脱者は肉体的修行を行わず、性愛に溺れず、薬物も使用しない、「生命の樹」の奥義を知る賢者のことである。