イナンナの奸計(かんけい)

イナンナの奸計(かんけい)---------------------------------------------------------------------------------

 ニヌルタ(アラム・ムル)が王権を手に入れた様子を見ていたイナンナは、エンキから“メ”を手に入れることを企んだ。彼女は自分の部屋女中ニンシュブルをエンキの下に送り、自分が訪問することを知らせた。これを聞いたエンキは大喜びで、高官イシムドに指示を与えた。
「乙女が一人きりで、我が都エリドゥに歩みを進めている。到着したら私の部屋に案内し、冷たい水を飲ませ、大麦のケーキにバターを添えて出すのだ。甘いワインを用意し、ビールを容器になみなみと注ぐのだ」


 イナンナが到着すると、イシムドが言われたように出迎えた。エンキは彼女に会うと、その美しさに圧倒された。イナンナは宝石で飾り立て、薄いドレスから体の線が透けて見えた。彼女がかがむと、エンキは彼女の外陰部に惚れ惚れした。2人はワインを飲み、ビール飲み競争をした。
「“メ”を見せて、“メ”を私の手に握らせて?」と戯(たわむ)れるようにイナンナはせがんだ。ビール飲み競争をしながら、エンキは7回、“メ”を握らせた。主権と王権、神殿での司祭権と筆記権の神聖な公式、愛の作法のためや交戦のための“メ”を、エンキはイナンナに渡した。音楽と歌のため、木工と金属と貴石(きせき)と、文明化した王国に必要な94の“メ”を、エンキはイナンナに渡した。
 イナンナは戦勝品をしっかりと握り締め、まどろんでいるエンキの下を抜け出した。そして、“空の船”まで急いで行き、舞い上がった。エンキはイシムドから起こされると、イナンナを捕まえるよう、イシムドに命じた。イナンナの住居があるウヌグ・キ(ウルク)に近付いたところで、イナンナの“空の船”はイシムドの乗ったエンキの“空の船”に阻止された。イナンナがエリドゥのエンキの下に連れ戻された時、“メ”は彼女の手元には無く、ニンシュブルが“アヌの家”に持って行った後だった。
 エンキは自分の権力とアヌの名において、“メ”を戻すよう命じ、自分の家に監禁した。これを聞いたエンリルがエリドゥにやって来た。
「私は当然の権利として“メ”を手に入れたの。エンキ自身が、私の手に乗せてくれたのよ!」とイナンナはエンリルに言った。エンキはやむなく、それが事実であることを認めた。
「最初の約束どおり、任期が完了したら、ウヌグ・キ(ウルク)に王権を渡す!」とエンリルは宣言した。