ギルガメッシュ叙事詩

ギルガメッシュ叙事詩--------------------------------------------------------------------------------------

 キ・エンギの土地で、人々は自分たちの幸運を讃えた。「神々は我々と共にいる。神々は死を止められる!」と人々は互いに言った。バンダは父エンメルカルの跡を継いで、ウヌグ・キ(ウルク)の王座に就いた。彼の称号はルガル、“偉大な人”だった。彼はエンリルの種子である女神ニンスンを妻とし、息子が生まれた。英雄ギルガメッシュである。ギルガメッシュはバンダの跡を継いで、王座に就いた。


 ギルガメッシュは年を取ってくると、生と死に関して母に尋ねた。アヌンナキの子孫なのに死んでしまった祖先について、彼はいぶかしがった。
「神々は死ぬのですか。私も2/3が神ですが、死すべき運命の人間として壁を乗り越えるのでしょうか」
と彼は尋ねた。
「地球上に留まっている限り、地球人としての死が、あなたを打ちのめすでしょう。でも、ニビルへ行けば、そこの長い寿命(不死)を獲得するでしょう」
と母は答えた。
 ニンスンは、ギルガメッシュをニビルへ連れて行ってくれるよう、ウツに頼んだ。ウツは拒否したが、来る日も来る日も懇願されたため、“着陸場所”へ連れて行くことを許可した。彼を導き保護するため、ニンフルサグは彼の影武者を造った。エンキドゥ、“エンキによって造られたように”と影武者は呼ばれた。彼は子宮から生まれたのではなく、血液も流れていなかった。エンキドゥはニンフルサグによって造られた人造人間で、火を吹く怪物や“天の牡牛”はロボットである。
 エンキドゥと共に、ギルガメッシュは“着陸場所”へと旅し、ウツが神託で彼の進み具合を監視した。ヒマラヤ杉の森の入り口で、彼らは火を吹く怪物に阻まれた。彼らはペテンで怪物を混乱させ、粉々に壊した。彼らがアヌンナキのトンネルへの秘密の入り口を発見すると、エンリルの創造物、鼻息が致命的な“天の牡牛”に挑まれた。その怪物は彼らをウヌグ・キ(ウルク)の門まで追い立てたが、都の城壁のところでエンキドゥに打ち倒された。エンリルはこれを聞くと、苦悶のあまり涙を流して泣き、その嘆きは天のアヌにまで聞こえるほどだった。しかし、“天の牡牛”を惨殺したため、エンキドゥは罰せられ、溺れて死んだ。そのことはニンスンとウツに知らされていたので、ギルガメッシュは惨殺を免れた。それでもニビルの長寿を求めて、“二輪戦車の場所”へ向かうことをウツから許可された。

 数々の冒険の後、彼は第4の地域“ティルムンの土地”に辿り着いた。地下トンネルを進むと宝石の庭に出て、そこでジウスドラ(ノア)と会った。ジウスドラ(ノア)は大洪水について話し、長寿の秘密も教えた。庭の井戸に、ある植物が生えていて、それがジウスドラと配偶者の寿命を長くしていたのである。それは、地球の植物とは異なっていた。それにより、人間は溢れんばかりの元気を取り戻せるのである。「“年取った人が再び若返る”、これこそがその植物の名だ」とジウスドラは言った。


 ジウスドラ(ノア)が寝てしまうと、ギルガメッシュは自分の足に石を結び付けて井戸に飛び込み、その植物を引き抜いた。そして、植物を入れた鞄を持って、急いでウヌグ・キ(ウルク)へと引き返した。途中、彼が疲れて寝ていると、その植物の芳香に蛇が惹きつけられた。その蛇が植物を奪い、どこかへ消えてしまった。朝になってそのことにギルガメッシュが気付くと、彼は座って泣いた。そして、手ぶらでウヌグ・キ(ウルク)に戻り、死すべき運命の人間として、そこで死んだ。

 長寿の植物はニビル由来である。しかし、ギルガメッシュは母がエンリルの種子で、地球で誕生しているから、ジウスドラほどの寿命は得られない。
 鞄に入れた植物を蛇が盗んだというのは、例え話である。蛇神が地球人の長寿は許さなかった、ということである。これが世界中の“不老長寿の秘薬”の話の原型となっている。
  日本では、田道間守(たじまもり)が第11代・垂仁天皇の命により非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)を求めて常世の国に渡ったものの、持ち帰ってきた時には天皇が崩御しており、半分を垂仁天皇の皇后に献上し、残りを垂仁天皇の御陵に捧げ、悲しみのあまり泣き叫びながら亡くなったという逸話に投影されている。泣き叫んだ原型は、ギルガメッシュだった。