イナンナ(イルニンニ)の怒り

イナンナ(イルニンニ)の怒り------------------------------------------------------------------------------

 イナンナはエンキの住まいに行き、マルドゥクの死を要求した。「もう、死は十分だ!マルドゥクは扇動者だが、殺人には関与していない」エンキにマルドゥクを罰する気が無いことを知ると、イナンナは両親とウツのところに行った。彼女は天に届くほどの声で嘆き悲しんだ。「正義を!正義を!復讐を!マルドゥクに死を!」
 エンリルの住まいに、彼の息子たちも合流した。戦いの会議のためである。ニヌルタ(アラム・ムル)は厳しい措置を主張した。マルドゥクとイギギが交わした密約を、ウツは報告した。「邪悪な蛇、マルドゥクを地球から取り除かなければならぬ!」とエンリルは賛同した。

 マルドゥクの引渡しの要求がエンキに為されると、エンキは息子たちを集めて言った。「最愛のドゥムジのことを悼(いた)んではいるが、マルドゥクの権利は守ってやらなければならない。マルドゥクは邪悪な行いを唆(そそのか)したが、ドゥムジは不運によって死んだのだ。ニヌルタ一味によって殺されないよう、守ってやらなければならない」
 その父の言葉に賛同したのは、ギビルとニナガルだけだった。

 邪悪な蛇、特に西洋で嫌われている蛇の根源はマルドゥクだった。東洋では、神の使いあるいは神自身とされる良い蛇と、このような邪悪な蛇がある。それは、こういう話が大元なのである。この蛇は龍にも例えられ、マルドゥクこそが本来のサタンの原型である。マルドゥクを守ることに、ニンギシュジッダは反対だった。つまり、良い蛇はニンギシュジッダということである。

 2つの氏族の間で前代未聞の残酷な戦争が勃発したのは、その後のことである。地球人の子孫であるホロンとサトゥの間の闘いとは違っていた。ニビル産まれのアヌンナキ同士の闘いが、ニビル以外の惑星で行われた。イナンナにより戦争の火蓋は切って落とされた。
 彼女は飛行船に乗ってエンキの息子たちの領土へ向かった。彼女はマルドゥクに闘いを挑んだ。ニナガルとギビルの領土へ彼を追跡した。ニヌルタは彼女を援助するため「嵐の鳥」から敵の砦めがけて致死光線を放った。イシュクルは空から焼却光線と粉砕落雷で攻撃した。アブズで彼は川から魚を追い出し、野の家畜を追い払った。それからマルドゥクは、北へ、人工の山(ギザのピラミッド)のある場所へ後退した。
 彼を追跡したニヌルタは、居住地へ毒のミサイルを雨のように降らせた。彼の「引き裂く武器」により、その土地の人々は感覚を失ってしまった。川の水を運ぶ運河は、血で真っ赤になった。イシュクルの光り輝く兵器は夜の暗黒を燃えるような昼に変えた。壊滅的な闘いが北上すると、マルドゥクはエクル(ギザのピラミッド)の中に身を隠した。
 ギビルはそのため見えないシールド(遮蔽幕:しゃへいまく)を考案し、ネルガルは天に向けて全ての物を見る目を持ち上げた。イナンナは「光り輝く兵器」で、角型アンテナにより方向を定めて、その隠れ場所を攻撃した。ホロンは祖父を守るためにやって来た彼女の「光り輝く兵器」で、彼の右目は損傷を受けた。ウトゥ(ウツ)がイギギとその地球人の軍勢を第四地域ティルムン(シナイ半島)の向こうに引き留めている間に、人工の山(ギザのピラミッド)の麓ではアヌンナキ同士が、それぞれの氏族を支援してぶつかり合った。
「マルドゥクを引き渡せ、流血を終わりにしよう。」
 そうエンリルはエンキへメッセージを送った。