イナンナの不死宣言

イナンナの不死宣言----------------------------------------------------------------------------------------

 ウヌグ・キ(ウルク)とアラタ(インダス)を行き来しながら、イナンナは落ち着かず、満たされなかった。飛び回りながらも、太陽の光にドゥムジが揺らめき招いている姿を見た。夜には夢に彼が現れ、僕は戻って来るよ、と囁いた。そして、“2つの峡谷の土地(エジプト)”にある彼の領地の栄光を、彼は約束してくれた。こんな幻影に、彼女は翻弄されていた。

 ウヌグ・キの神聖な区域に、彼女はギグヌ、“夜の愉しみの家”を設置した。若い英雄たちを、彼らの結婚式の夜に、イナンナは甘い言葉で誘い出した。花嫁とではなく、彼女と寝ることにより、長生きと至福の未来を約束したのである。イナンナはドゥムジに思いを馳せながら、彼らと夜を共にした。そして、朝になると、彼らは彼女のベッドで死んでいた。
 しかし、中には生きていた者がいた。英雄バンダ、ウツの曾孫である。彼女の住まいでバンダは入浴させられ、房飾りの付いたマントに飾り帯を締めさせられた。
「ドゥムジ、私の最愛の人!」
 彼女は彼をそう呼んだ。彼女は花々で飾られたベッドへ彼を誘った。朝になってもバンダは生きており、イナンナは喜んで叫んだ。
「奇蹟よ!奇蹟だわ!私の最愛のドゥムジが帰ってきたの!」
 ウツの恩寵(おんちょう)により、彼は死から蘇ったのである。
「死なない力を私は手にした!不死は、私によって授けられたのだわ!」
 そして、自分のことを女神イナンナ、“不死の力”と呼ぶことにした。イナンナの両親は、このような彼女の宣言を喜ばなかった。エンリルとニヌルタは彼女の言葉に狼狽し、ウツは困惑した。そして、エンキとニンフルサグは「死者を蘇らせることなど、不可能だ!」と言った。

 満たされない願望と性欲を、イナンナは地球人の英雄たちにドゥムジを重ねて交わることで解消しようとしたのであった。純粋なニビル人と地球人とでは時間の流れが異なるので、地球人にとっての一晩でも、イナンナにとってはごく僅かな時間にしかならない。よって、朝まで続く行為により、イナンナの相手は大方、朝には死んでいた。
 そして、この“聖なる結婚”の儀式は世界中のあらゆるところで行われるようになったが、後のあらゆる宗教における性的退廃の原型ともなった。つまり、イナンナもまた、サタンの原型の一部なのである。つまりイナンナがイエスとサタンの両方の原型でもある。
 イナンナのシンボルは金星で、イエスのシンボルは明けの明星(みょうじょう)で同じなのは、イエスの原型がイナンナだからである。そして、サタンも明けの明星と言っている。イエスが光なら、サタンは闇なので、宵(よい)の明星となる。しかし、共に明けの明星とされているのは、原型が同じだということを暗示している。
 さらに、イナンナが創造神のインダス文明(遠い地アラタ)では、様々な女神が分身として登場する。実質の主神としてはシヴァだが、その分身の女神にはドゥルガーや暗黒のカーリーがいる。これなども、イナンナの暗黒面なのである。


 生命現象に詳しいエンキとニンフルサグも、死者を蘇らせることは不可能だと断言しているので、ウツの恩寵(おんちょう)により死から蘇ったとされるバンダも、以前の火星でのアンズの“死と復活”も、そしてイナンナ自身の“復活”も、いずれも仮死状態あるいは瀕死の状態からニビルの高度な医療技術で助かったということである。
 そこから、イナンナの思い込みで“死と復活”という概念が登場し、名前もイルニンニからアンニツム、イン・アンナ、そしてイナンナとなった。