マルドゥクの追放

マルドゥクの追放-------------------------------------------------------------------------------------------

 マルドゥクは生きたまま葬られた。地上では、彼の妻サルパニトが泣いて訴えた。エンキの下へ行き、「生きている者たちの下へ、マルドゥクを戻すべきです!」また、イナンナへの取り成しができるウツとナンナルの下へも、償いの服を着て行った。「マルドゥクに命を与えたまえ!支配権は放棄しますから、慎(つつ)ましく人生を続けさせて下さい!」と懇願した。
 イナンナは「私の最愛の人の死の咎(とが)を受け、扇動者は死ななければなりません!」と突っぱねた。
 仲介者ニンフルサグはエンキとエンリルを呼び寄せた。「マルドゥクは罰せられなければなりませんが、死には根拠がありません。生きたまま追放しましょう。地球の覇権(はけん)は、ニヌルタ(アラム・ムル)に一任しましょう」と言った。この言葉に、エンリルは喜んだ。こうしてすべての覇権はエンリルの手中に入った。エンキは打ち沈んだが、アフリカには荒廃が広がっており、ドゥムジの喪に服しているので、その意見に賛成した。エンリルは言った。「平和を取り戻し、マルドゥクを生かしたいのなら、拘束力のある協定を結ばなければならない。天と地球を結ぶすべての施設は、私の手だけに委ねられること。“2つの峡谷の土地(エジプト)”は、お前の息子に与えること。マルドゥクに従ったイギギは、“着陸場所”を諦めて立ち去ること。そして、“戻れない土地”へ、ジウスドラの子孫が住んでいないところへ、マルドゥクは追放されること」エンキは頭を垂れて納得した。エクル(エジプトのピラミッド)の内部を知るのはニンギシュジッダ(トト)だけだったので、彼がその土地の支配者となった。


 マルドゥク救出のため、ニンギシュジッダが呼ばれた。生きたまま埋葬された者を救うという難題を、彼は与えられた。何とか、上部に開口部を切り出すことにより、救出できることが判った。
「私が指示する場所に石を切り出し、そこから上に曲がりくねった通路を通って救出シャフトを作るのです。隠れた空洞を伝ってエクル(ピラミッド)の真ん中に出られます。石の中の、渦巻状の空洞を突き破るのです。内部への入り口は爆破して開けます。大回廊まで進み、3本の閂(かんぬき)を引き揚げ、最上部の部屋、彼の死の監獄に到達します」とニンギシュジッダは言った。

 彼の指示通り、アヌンナキは最上部の部屋に辿り着き、気絶していたマルドゥクを何とか救出した。外ではサルパニトとナブ、エンキが待っていた。マルドゥクが目を覚まし、エンキが解放の条件を伝えると、マルドゥクは激怒した。
「生得権(せいとくけん)が剥奪されるぐらいなら、死んだ方がましだ!」
 サルパニトが彼の腕をナブに押しやり、「私たちは、あなたの未来の一部なのよ」と穏やかに言った。「私は宿命に屈した」と、マルドゥクは聞き取れないような声で言った。彼はサルパニトとナブを連れ、角のある獣たちが追い立てられた場所へ旅立った。