イルニンニからイナンナ(アヌの愛人)となった経緯

イルニンニからイナンナ(アヌの愛人)となった経緯-----------------------------------------------

 シュメールのウルクには、大神アヌが公式に地球に降臨する際に使用する神殿があった。「神々」以外で最初にウルクの支配者となったのは、太陽神ウツと人間の間の子メシュキアガシェルである。その後、メシュキアガシェルの子エンメルカルがウルクの支配者となった。

 神殿では、大神アヌと正妻アンツは別々の寝室を使っていた。アヌは降臨の儀式が終わると、ギパールと呼ばれる彼だけの館に入った。そこには、選ばれた処女エンツが待っているのが習わしだった。エンツは王の娘であり、王たちは自分の娘をエンツにさせようと務めた。エンツが王のために長寿と健康を「神」に直接祈ることができたからである。エンツとは“神の貴婦人”であり、エンツを通じて王たちは自分たちの守護神に直接近づくことができた。

 ところが、ある時、このギパールでアヌを待っていたのは、人間の娘ではなく、アヌの曾孫イルニンニ(イナンナ)だった。イルニンニ(イナンナ)は最も若い「神」だったので、遠い地アラタ(インダス地方)を与えられていた。しかしイルニンニ(イナンナ)は、エンメルカルの大伯母なので、割り当てられていた遠い地アラタよりもウルクに住むべきだ、と思っていた。そのために策を講じ(他の「神々」に仲介を頼み)、降臨したアヌに近づいて自分の思いを主張し、計画は見事成功した。イルニンニ(イナンナ)はその美貌でアヌに迫り、アヌの愛人となったのである。これ以後、イルニンニ(イナンナ)はイン・アンナ=イナンナ(アヌの愛人)と改名された。イナンナの更なる別名がアンニツムで、アヌの最愛の人、という意味である。それ故、イナンナは女性であるにもかかわらず、王位継承順位数は双子のウツの20に継ぐ15であり、叔父(おじ)であるイシュクルの10よりも上である。
 この“事件”以降、アヌはイナンナにこの神殿を使うことを許し、ギパールの役割は“ギグヌ(夜の愉しみの家)”へと変貌していった。なお、イシュクル(アダド)はエンリルの最愛の末息子であり、権力と嵐の特権を授けられた神である。愛人のことを“ドド”と言うが、イシュクルはイナンナとはとりわけ仲が良く、イナンナの愛人で叔父でもあったので、“アダド”と呼ばれた。