アヌの来訪

アヌの来訪---------------------------------------------------------------------------------------------------

 アヌの到着を待ち受ける間、アヌンナキはエディンに住まいを再建し始めた。エンキの最初の都エリドゥはおびただしい泥に覆われていたが、その上に新しいエリドゥが計画された。その中心の高くしたプラットホームの上に、エンキとニンキの住まい“凱旋する主の家”が建てられた。エンキはその聖域に“メ”の公式を保管した。新しいニブル・キも、かつてのニブル・キの上に建てられた。神聖な区域が壁で仕切られ、エンリルとニンリルの7階建ての住まい(ジグラット)が建てられた。エンリルは“運命の石板”をそこに置き、武器、土地を走査する“持ち上げられた目(レーダー)”やすべてを突き抜ける“持ち上げられたビーム(レーザー)”で保護した。中庭には、高速で進む“空の鳥”を置いていた。そして、アヌを迎えるための住まいがエディンの中で選ばれた。ウヌグ・キ(ウルク)、“快適な場所”と名付けられた。そこに木陰が造られ、純白の建物、7階建ての“アヌの家”が建てられた。


 アヌの二輪戦車が来訪すると、アヌンナキの“空の船”が誘導した。司令官ウツがまず出迎え、その後に指導者たちが続いた。彼らは再会を祝福しあった。そして、お互いを見て、年の取り具合を推し量った。両親はシャルとしては年上のはずなのに、子供たちの方が年上に見えた。2人の息子は老けて、髭面だった。かつて美人だったニンフルサグは、腰が曲がり皺(しわ)だらけだった。お互い涙が溢れたが、喜びと共に、悲しみの涙でもあった。

 ニビルと地球のアヌンナキの間で、ニビルと地球の公転周期の違いから、浦島太郎のような現象が実際に起きてしまったのである。浦島太郎は竜宮城で宴を満喫し、帰って来て玉手箱を空けたら、本来の年齢まで老けてしまった。つまり、竜宮城の時間サイクルが長いことを暗示している。これは、ニビルでは地球よりも寿命サイクルが長いことが原型となっていたのである。竜宮城とは海の神の世界。海の神の原型はエンキで、エンキがいた元々の世界はニビルである。こうして例え話として、浦島太郎の話が創られた。

 アヌは“アヌの家”へ招待され、体を流して貰って休憩し、香水をつけて服を着せてもらった。アンツは女性のアヌンナキに付き添われ、“黄金のベッドの家”へ行った。そして、アヌと同様の歓迎を受けた。宴席では、玉座の傍らにエンキ、エンリル、ニンフルサグが立った。そして、全裸の地球人たちが接客係としてワインや上等の油を給仕した。他の者たちは、中庭の隅でエンキとエンリルから贈られた牛と羊を炙(あぶ)っていた。

 宴の開始は天の印だった。エンリルの指示で、天に造詣の深いズムルという神官が“アヌの家”の階段を昇り、惑星の出現を告げた。最初の段でキシャル(木星)が東の空に現れ、ラーム(火星)が2段目で姿を見せた。3段目でムンム(水星)が、4段目でアンシャル(土星)が昇った。5段目でラハム(金星)が見え、6段目から月が知らされた。
 それから、ズムルの合図で讃歌“アヌの惑星が昇る”が歌われ、一番上の段から赤く後光の差したニビルが見えてきた。アヌンナキは音楽に合わせて踊り歌った。その合図で大篝火(おおかがりび)が灯され、あちこちの場所で煌いた。夜がふける前に、エディン全体が篝火(かがりび)で灯された。牛肉、羊、魚、家禽(かきん)の料理に続き、ワインとビールが添えられた。アヌンナキ全員がアヌとアンツから感謝の言葉を受け、宴が終わるとアヌとアンツは宿泊場所に戻った。

 この宴席では、人類は全裸でご奉仕した。これが後に、ローマ帝国などでの堕落の饗宴(きょうえん)となる。アヌとアンツの宿泊場所は別々だった。また、ジグラットは天体観測の場でもある。「神々」を迎えるのに篝火(かがりび)を焚く神道の御神事は、このニビル王来訪を祝しての宴が原型である。最も重要な御神事は、夜、篝火(かがりび)を焚いて行われるのである。現在日本では、全国各地で大篝火(おおかがりび)を用いた火祭りが催されている。