マハーバーラタ

マハーバーラタ----------------------------------------------------------------------------------------------

 バーラタ王の子孫で、クル族のシャーンタヌという王は、ガンジス川の女神ガンガーに恋をし、求婚した。ガンガーは、自分がどんなことをしてもそれを止めたり、訳を聞いたりしなければ、という条件で承諾した。ガンガーはシャーンタヌとの間に次々に7人の子を生んだが、生み落とすや否や皆、殺してしまった。シャーンタヌは約束に縛られて、ガンガーのなすがままだったが、8番目の子が生まれた時には耐え切れず、殺害を食い止めた。王の約束違反により、ガンガーはシャーンタヌの下を去った。この8番目の子がデーヴァヴラタ、後のビーシュマである。(クリシュナの話そのものである。ビーシュマはヴィシュヌと同じである。)
 ガンガーが去って数年後、シャーンタヌ王は漁師の娘サティヤヴァティーに一目惚れして求婚したが、サティヤヴァティーの父親に、私の娘の子が王位を継承できるなら、と条件をつけられ、苦悩した。成長したデーヴァヴラタは文武両道に秀で、理想的な王位継承者と期待していたからである。父の悩みを知ったデーヴァヴラタは、自らの王位継承権を放棄し、王国の将来に禍根を残さぬため、生涯の不婚を誓う。この困難な誓いの後、彼はビーシュマ(恐るべき者)という名で呼ばれるようになる。こうして、シャーンタヌはサティヤヴァティーを妻とし、2人の間には2人の王子が生まれた。
 間もなく、シャーンタヌ王は死去した。ビーシュマの、父と王国への献身も空しく、シャーンタヌのこの2人の王子も、共に後継ぎを残すことなく夭折(ようせつ)した。サティヤヴァティーはビーシュマに誓いを放棄し、王となり、王国に後継ぎを与えるよう懇願するが、ビーシュマはこれを受け入れなかった。そこで、サティヤヴァティーがシャーンタヌと結婚する前に、聖仙パラーパーヤナとの間にできた子ヴァイパーヤナを宮廷に招き、夭逝(ようせつ)した王子の未亡人と結婚させた。これにより、ドリタラーシュトラ、パーンドゥの2人の王子が誕生した。
 兄のドリタラーシュトラは盲目だったため、王位は継承しなかったが、100人の王子と1人の王女に恵まれた。王位を継承したパーンドゥは5人の王子(ユディシュティラ、ビーマ、アルジュナ、ナクラ、サハデーヴァ)を得たが、夭逝(ようせつ)した。その子たちはいずれも若すぎたので、ドリタラーシュトラが王として即位し、パーンドゥの5人の息子たちを引き取った。5人の王子たちは、いずれも100人の王子よりも優れており、誰もが認めるところであった。そのため、100人の王子は5人と反目し、対立し合うようになった。ついに、100人の王子の陰謀により、5人の王子は追放されてしまった。
 追放された5人の王子はバラモン僧に姿を変え、流浪の旅に出た。やがてパンチャーラ国に着いたところ、王女ドラウパディーの婿選びが行われていた。そこで、彼らも候補として挑戦し、三男アルジュナが結婚することとなった。と同時に、パンチャーラ国の習慣で、他の4人もまた、ドラウパディーの夫となった。こうして栄誉を勝ち取った5人の王子は、故郷へ戻った。ドリタラーシュトラ王は国を二分して、一方を彼らに与えた。
 しかし、100人の王子たちは面白くない。またしても彼らは陰謀をめぐらし、5人の王子を失脚させ、国外へ追放した。13年間、誰にも正体を知られなければ帰国しても良い、という約束をして。5人の王子とドラウパディーはマツヤ国のヴィラータ王の宮廷で家来や召使いとして働き、追放の13年をどうにか乗り切った。ヴィラータ王には彼らの正体を明かし、帰国した。そして、100人の王子の長男ドゥルヨーダナに領土の返還を要求したが、彼はこれを拒否したので、両陣営の対決は避けられないものとなった。5人の王子には十分な物資や兵士が無かったので、アルジュナがドヴァーラカー国のクリシュナ王の下へ、戦争の援助をしてくれるよう頼みに行った。しかし、そこには100人の王子の長男ドゥルヨーダナの姿もあった。彼もまた、援軍を要請しに来ていたのである。そこで、クリシュナは提案した。クリシュナ本人とその配下の軍、どちらかを援軍として差し出すから、好きな方を選ぶが良い、と。ドゥルヨーダナは軍、アルジュナはクリシュナを選んだ。
 そして決戦の日、ハースティナプラ近郊クルクシェートラの地(クル平原)に、両陣営の大群が集結した。(ハルマゲドンの原型。)まさに大戦が始まろうとする時、5人の王子最高の戦士アルジュナは、突如戦意を喪失した。敵方に、恩ある人々の姿を見かけたからである。5人の王子と100人の王子共通の大伯父ビーシュマ、同じく両者共通の武術の師ドローナなどである。この2人は、心はむしろ5人の王子側にありながら、誓いに縛られて100人の王子側に立って戦わなければならなくなっていた。アルジュナの御者を務めていたクリシュナは、アルジュナに戦士の義務などを説き、戦意を回復させた。
 いよいよ戦いは始まり、死闘が続いた。轟音が鳴り響き、大地が震え、血みどろの戦いが18日間続いた。あまりにもの壮絶さに、クル族が全滅してしまうと危惧したビーシュマは、自らの死を持って戦いを止めさせようとした。彼は、両陣営の大叔父である。しかし、100人の王子の長男ドゥルヨーダナは聞き入れず、戦いは激しさを増していった。そして、ついに最終兵器を持ち出してきた。英雄アスワタマンは空飛ぶ戦車ヴィマナに乗って、空から敵に攻撃した。兵士は散り散りになり、最終兵器アグネアを打ち込んだ。その威力は凄まじく、炸裂した瞬間、灼熱の炎によって、一瞬にして全軍が消滅してしまった。これにより、100人の王子は全滅し、5人の王子とクリシュナが勝利して、戦いは終わった。

 ドリタラーシュトラと妻は森で隠居生活を始め、5人の王子の母も2人に従ったが、山火事に巻き込まれてこの世を去った。5人の王子は「神々」が住まうヒマラヤへ旅立ち、この世の役目を終えて、天界へ回帰した。