フランス王国の軍人女性ジャンヌ・ダルク

■1431年

 フランス王国の軍人女性ジャンヌ・ダルクの火刑が執行された。ジャンヌは現在のフランス東部に、農夫の娘として生まれ、神の啓示を受けたとしてフランス軍に従軍し、イングランドとの百年戦争で重要な戦いに参戦して勝利を収め、後のフランス王シャルル7世の戴冠(たいかん)に貢献した。このジャンヌ・ダルクには、高度な科学技術である子宮外生殖によって生まれたベガ星からの魂が転生していた。
 当時、地球では権力者によって人命が奪われ続けており、それらが地球の文明化を妨げていた。そして15世紀の中世ヨーロッパで繰り広げられていたその争いに、ベガ星からの転生者はそれに終止符を打とうとしていた。そのベガ星人は地球の年齢で10歳になったとき、ジャンヌ・ダルクという地球人の中に存在していた。まず最初に、ジャンヌ・ダルクの父親の陽性化に着手することから始めた。
 ベガ星人がなぜ「宿主」として農家の娘を選んだかといえば、多くの場合、地球人の進化と文明化のためには、高貴な生まれの者よりも、低い立場にある者の中から誕生することが必要であり、有効な手段になるからである。そうすることで、人間の美徳は、低い身分であれ高貴な立場であれ同じだということを示すことができるのである。両者の違いは、単なるお金であり、お金が搾取する者とされる者に振り分けてしまうのである。
 ジャンヌ・ダルクの母親は、文盲で貧しいユダヤ人だった。しかし彼女は、他のどんな貴族の女性よりも、ベガ星人が宿りやすい資質を豊かに備えていた。しかしジャンヌの父親は、逆に陰性だった。ジャンヌは、父親にこれから起きるさまざまな予言を話して聞かせたが、彼はそれを聞くと恐れをなしてしまった。そしてある日、彼は妻を庭に呼び出して言った。「わしらの娘には悪魔が憑いている。だから森に連れて行って置き去りにし、あとはオオカミと熊に娘のことをまかせようと思う」 
 それを聞いた母親は驚いて泣き始め、夫の前にひざまづき、彼の足にしがみついて懇願した。しかし父親は彼女を蹴飛ばすと家の中に入った。その時10歳のジャンヌは弟と遊んでいた。父は彼女を連れ出し、まるで柱でも担ぐような格好でジャンヌを肩に乗せると森に向かって歩き始めた。その途中、馬に鉄具を付けている最中の友人に出会った。するとジャンヌの父親は彼女を草むらに放り出し、馬の鉄具を付ける友人を手伝った。作業が終わると父親は、娘を祈祷師のところに連れていきたいので、馬を貸してくれるように頼み込んだ。娘は病気で魔法にかけられていると言ったのだ。そして友人は哀れに思い、馬を貸すことにした。
 父親は彼女を抱きかかえて馬に乗ると全速力で駆け出し、暗くなるまで疾走した。日が暮れた頃、山のほぼ中腹まで来ると、父親は娘を馬から降ろし、彼はそのまま馬で走り去ってしまった。しかしジャンヌにはベガ星人が宿っていたので何も問題はなかった。ジャンヌはオオカミに囲まれると、オオカミたちにプラスイオンを照射した。そしてその中でも一番強いオオカミの背中に乗ると、真っ直ぐ家に帰った。ジャンヌの父親は、ジャンヌが家に戻って来ているのを見ると、驚いて卒倒しそうになった。彼は妻に、何をしたかを何も話さなかったが、この出来事で、自分の娘は普通ではないと納得したのだった。
 1週間後、ジャンヌの父親は、建材用の板を切り出すために森へと向かった。彼はこの地方の農民の代弁者となることが決まり、フランス王シャルル7世の特別な援助を受けて小屋を建てることになった。しかし作業の最中に不幸にも、彼は自分が切り出した材木が崩れてその下敷きになってしまった。それは10頭の牛を使って材木を移動させない限り、彼を助け出すことは出来ない状況だった。その時、ジャンヌは山羊の群れを導いていたが、父に危険が迫っているという予感がした。そこでジャンヌは父のいる場所に向かって走り、そこに着くと大量のプラスイオンを集めて材木を起こし、父を助け出した。そしてそれ以降、ジャンヌの父親は娘の忠実な友人となった。こうしてジャンヌは、フランス皇太子に近づくための手助けをしてくれるように、父を説き伏せることができた。そして、父のおかげでジャンヌの謁見は実現することになった。
 ジャンヌが11歳になった時、父は友人の軍人のところにジャンヌを連れて行った。そして父と軍人は連れ立って、ジャンヌをフランス皇太子の元へ案内してくれることになった。ジャンヌにとって皇太子の説得は一番難しく、かつ一番重要なことだった。皇太子はジャンヌの目を見つめ、毅然とした態度で言った。
「我はお前が誰で、何を求めているかは知らぬが、お前は話し方を心得ておる。お前はフランスを愛しておる。この事実だけで、お前の忠誠心を信じることができよう。しかしながら、軍隊をお前の指揮下に置くというのは、きわどい行為だ。そんなことは不可能だ。文盲で何の知識もないお前のような年若い娘が、軍隊を指揮できると思うのか? 我のもっとも優秀な戦士でさえ、訓練されたイギリスの射手によって倒されてしまった。それにしても・・・・、お前はいったい何者なのだ?」
「では殿下、私はどのような証明をすればよろしいのでしょうか?」
「お前の叡智と攻撃計画を示せ。それに、なぜそこまで勝利を確信できるのかが知りたい。何でもよいから私に奇跡を見せてみろ。ここで、今すぐにだ」
 ジャンヌは彼に攻撃計画を説明したが、気に入ってはもらえなかった。そこでジャンヌは彼に尋ねた。
「今からここで皇太子ご本人に関する「奇跡」をご披露するが、あなたは冷静さを保っていられますか?』
と。そして彼は大丈夫だと答え、側近の士官と参事たちに退室するようにと命じた。ジャンヌたちは執務室で二人きりになった。そこでジャンヌは集中してプラスイオンを集め、壁にタイム・スクリーンを出現させて言った。
「殿下、この部屋で今からお目にかけるものを、誰にも明かさないとお約束してくださいますか?」
「約束しよう、少女よ」、と皇太子は決然とした態度で答えた。
「ではご覧下さい」とジャンヌは言った。
彼はスクリーンを見つめ、フランス兵が敵の城塞に押し入る様子を目の当たりにした。画面ではジャンヌが彼に説明した計画どおり、パニック状態になったイギリス兵は退却して行った。突如、場面は変わり、次に彼の戴冠式の様子が映し出された。頭上に王冠を戴き、宮殿の人々に囲まれて座っている自分の姿に気づいたとき、皇太子は嬉しそうに微笑んだ。そしてついに彼は、ジャンヌの手を取り、囁くように言った。
「乙女よ、我の軍隊を好きにするがよい」
これはほんの数分の出来事だったが、皇太子が勝利を確信し、戦士たちがジャンヌに従うように命令してもらうためには充分だったのだ。
 そしてジャンヌはやがて来る「火あぶり」の刑を免れる必要はもうなかった。なぜならジャンヌという陽性の人間の人格は、自らのミッションをもう全うしたからであった。修道士たちがジャンヌ・ダルクに火あぶりの刑を宣告したのは、彼女の持つ大きな力のためであり、自分たちの人々への説法の影響力が、そのためになくなることを怖れたためだった。そして彼らが、ジャンヌの足元のうず高く積まれた薪に火を放った時、ジャンヌはベガ星の科学技術により<分解>したのである。そして炎から離れ、<再融合>したので、そのベガ星人はまだ生き続けている。その後も数年間、戦争は続いたが、最期には平和条約締結の日が訪れた。その礎(いしずえ)となったのが、「ジャンヌ」の陽性な介入だった。
 ジャンヌを直接のモデルとして描いた肖像画は現存しておらず、これらの写真はジャンヌの死後に想像で描かれた作品である。