惑星アレモX3の全面核戦争後に生きる人々

■1900年頃

惑星アレモX3の全面核戦争後に生きる人々-----------------------------------------------------------

 ポリネシア人の祖先であり、第二次レムリア文明の時にやってきたアレモX3星で全面核戦争が起こる。地球の2倍の大きさの惑星アレモX3は、核戦争で壊滅状態になった。ティアウーパ星の宇宙船で案内された地球人のミシェル・デマルケにとって、その宇宙船のパネル上に映し出された風景を一言で表せば”荒涼”であった。このアレモX3の1年は295日、1日の長さは27時間で、摂氏28度、日中の平均気温は38度である。

 ティアウーバ星の宇宙船からは球体が探査のために送られ、いくつかの球体は長いチューブを地表へ向けてゆっくり降下させ、川の上に滞空していた球体はそのチューブを水中に降ろして映像を送ってきた。
 ミシェル・デマルケの注意は、巨大なビルの入り口の暗い場所に引き寄せられた。何かが動いたのが目に入ったのだ。それは体長約2メートル、高さ80センチもある恐ろしいゴキブリがスクリーン上にはっきりと姿を現していた。球体から下へ伸びたチューブは、その時まだ地表からは1メートルほど離れていた。突然、巨大なゴキブリがチューブに襲いかかった。チューブは直ちに収縮を始めたが、その時ビルの下からぞろぞろとゴキブリの大群が這い出して来たために、チューブの動きは止まった。そしてその時、球体から発射された強烈な青い光線がゴキブリの群れを一掃し、一瞬のうちに灰と化してしまった。黒い煙の雲が視界をさえぎり、ビルの入り口は見えなくなった。

 他のスクリーンには、丘の上を滞空していた別の球体が再びチューブを降ろすのが見えた。どうやらティアウーバ星人の飛行士たちはその惑星の土壌や水、空気のサンプルを採取しているようだった。パネルに映し出されていた街や丘の映像は消え、スクリーンは白くなった。彼らはそこを去り、同じ高度を保ちながら惑星上空を飛んで行った。突然叫び声が聞こえ、彼らはすぐに高度を落とした。パネルが作動し、湖岸をアップで映し出した。そして渚の上空50メートルほどで滞空している球体の1つから映像が送られてきた。それは人間の一団を捉えた鮮明な映像で、ミシェル・デマルケの目には地球人と同じ人間に見えた。
 また、別のスクリーンに映し出されたのは、年齢不詳のモンゴロイドの女性であり、顔は歪んでいて彼女は全裸だった。また他の画面には別の集団が現れた。しかし明らかに彼らのほとんどは、どこかがおかしく感じられた。それはねじ曲がって、大きな耳をした生物という感じだった。彼らはかなり動揺しており、球体を見上げて盛んに身振りをしていた。そこにあった建物の構造はかまぼこ型の丸太防災と似ており、高さはわずか1メートルしかなく、太い換気の管のような煙突がついていた。その”ブロックハウス”はすべて同じ向きに作られており、人々は脇の開口部から出て来た。
 湖岸の建物のそばには500人ほどの人々が立っており、彼らは子供から大人まですべてが全裸だった。ミシェル・デマルケはやはり、彼らの多くがひどく怪我をしていたりどこかがおかしいのを目にした。彼らは皆、球体に向かっていっせいに手振り身振りをしていたが、誰も近寄ろうとはしなかった。その中でも特に屈強な男たちは、鉈(なた)かサーベルのようなものを持ち、何かを見張っているようだった。
 その時、大きな叫び声が響いた。人々は押し合い喚(わめ)きながら大急ぎで建物の中へ移動し、一方、サーベルやツルハシで武装した男たちは隊列を作り、想像を絶する信じがたい”もの”に向かって立ちふさがっていた。そこへ牛ほどもある巨大なアリの集団が、岩陰から砂浜へ突進してきた。そのスピードは早駆けの馬よりも速かった。武装した男たちは、逃げ回る人々とアリの速さを比較するように後ろを一瞥(いちべつ)したが、その時にはすでにもう、アリはあまりにも近づき過ぎていた。
 勇敢に立ち向かう男たちに対し、アリは襲いかかった。アリのクチバシは、人間の腕ほどもあった。その生き物は最初、1人の男にサーベルで攻撃させる隙(すき)を見せたが、一振りで彼を吹き飛ばしてしまった。その太いクチバシは彼の腰を挟み、男の体を真っ二つに切断した。別の2匹のアリがそれを援護していた。他のアリたちは逃げ惑う戦士たちを追いかけ、彼らを捕まえようとしていた。その時、球体から強力な青い電気ビームが照射され、アリたちはビームに撃たれて倒れた。アリたちは退治され、地上に散らばった動物の焼け焦げた死骸から煙が立ち上った。アリたちの巨大な足は最後のあがきで痙攣していた。

 他のスクリーンにはまた別の映像が映し出されていた。球体はさらに退散するアリたちを追いかけており、600匹はいたと思われる生き残りの大群に死の光線を用いて攻撃を行ない、瞬時に、そして組織的に巨大昆虫たちを全滅させた。1匹も生き残ったものはいなかった。
 球体は最初の湖岸の上空へ戻ると、巨大昆虫の死骸を鋤(す)く特殊な道具を降下させた。この仕事は本来予定されていたものではなかったが、ティアウーバ星人はこれらの生物のサンプル、特に肺を分析のために採取していた。彼らはある種の放射線がこのような変種を生み出したと考えていた。
 スクリーンには、建物から飛び出した男たちが現れ、球体に向かって激しく身振りする様子が映し出された。彼らは両腕を広げて地面に平伏し、それを何度も何度も繰り返していた。彼らは宇宙船から出ていったその球体に向かって感謝の気持ちを体で表していた。彼らからすれば、その球体は自分たちを絶滅から救ってくれた神だと思っている可能性があった。

 彼らはこの惑星でかつて高度な文明を発達させたが、大きな政治的対立が生じた結果、150年前についに、核による全面核戦争の原子力で自らを滅ぼしてしまった。それは全面核戦争が起きたということですか?」
 ティアウーバ星人は時おりこの星にやって来ては、さまざまな地域にまだ放射能が残存しているかどうかを、サンプルを採って調査している。また時々、彼らに援助の手を差し伸べることもある。アレモX3の人々はティアウーバ星人を神と考える可能性があるが、それは地球人の祖先の中にティアウーバ星人を神と考えた人々がいたことと同じようなものである。

 球体は宇宙船に向かって上昇中であり、そのためにミシェル・デマルケはこの大陸の全体を眺めることができた。彼はこの惑星のあちこちに、緑色と茶色の斑点があることに気づいた。球体は宇宙船内に収容され、彼らは出発した。宇宙船は猛烈なスピードで惑星上を飛行した。しばらくするとスクリーンには広大な海洋が映し出され、彼らはある海岸の上に滞空した。そこでは今度は4つの球体が宇宙船から出て行き、島に向かって下降して行った。
 海岸には厚い石板のようなものが横たわっており、その周りには先ほど見た人々と同じく裸の男たちが集まっていた。彼らは球体の存在にはまったく気づいていないように見えたので、球体は今回は少し上空に止まっているからだろうとミシェル・デマルケは考えた。スクリーン上には男たちが石板の1つを海に運んでいるのが見え、それはまるでコルクのように海水に浮かんだ。男たちはその上に乗ると慣れた手つきでオールを操りながら岸を離れ、釣り糸を垂らした。すると驚いたことに、すぐにかなり大きい魚が釣り上げられた。
 球体は砂浜にあり、男たちから10メートルの高さで砂のサンプルを採取していた。彼らには球体が見えなかったが、その理由は、外は夜であったことと、ミシェル・デマルケにははっきり外が見えたのは、地球にある赤外線カメラのように特別なカメラだからということだった。その時、スクリーン上に明らかに女性と思われる”おぞましい”顔が映し出された。左目があるべきところには大きな深い傷跡があり、口は顔の右側へ寄っており、顎の中央には小さな穴が開いていた。唇は溶けて引きつれており、頭のてっぺんにだけわずかな髪の毛が哀れに垂れ下がっていた。彼女の胸も見えたが、もし片側が傷で化膿していなければ、それはきっと可愛らしかったに違いないとミシェル・デマルケは思った。彼女は19歳だが、放射能のためにそのような容姿になったのである。
 また、完全な容姿をした他の人々が画面に映し出され、その中には20代に見えるスポーツ選手のような体格をした男たちがいた。現在のところ、この惑星には38歳以上の人はいない。このハンサムでスポーツ選手のような青年の性器の部分は、完全に萎縮していた。ここではほんの少数の男性だけにしか生殖能力はないのである。
 しかし現実にはたくさんの子供たちがいる。つまりできるだけ早く子供をつくり、種を維持しようとするのはすべての人種に共通の生存本能であり、そのために生殖能力のある男性が”種馬”となっているのである。そしてこの男性もその1人なのであった。
 次に球体のカメラは、30歳くらいのそうした男性の1人を映し出した。また、食べ物を調理している焚き火の周りを行き交うたくさんの子供たちを見た。焚き火の周りに腰掛けた男女たちは、調理した食べ物を取っては子供たちと分け合っていた。2つの小屋の間から吠え立てる3匹の黄色い犬に追われて、小さな黒豚が現れたがすぐに小屋の陰へ消えていった。ミシェル・デマルケは本当に地球ではない別の惑星を見ているのかどうか疑わしく思った。それほどここの人々は地球人にそっくりだったのである。