8章 新社会制度 : 拡張プラウト主義

○地域社会の中心と適正規模

 直感的な活動が人間の在り方であり、他人と協力し合って生きていかなければならないのも人間となるが、人間は常に誰かとの関わり合いの中で生きている。まずその関わり合いが頻繁に行われる地域社会の構築方法から考える。その方法の1つとして、地域にある学校を市民の活動のために開放すると、地域の活性化につながっているという例がある。
 千葉県習志野市の秋津小学校はコミュニティ・スクールとして、住民が学校内に事務局を設置し、住民のサークル活動に対して小学校を開放している。学校を住民が集まる場所として利用することは、学校設備の充実、市民の交流、地域の活性化、安全性の向上、そして子育てにも良い影響がでている。学校を地域の人間が集まる場所として利用すると年間365日×24時間の運営になり、顔と名前が一致する住民が増え、校舎内にも校庭にも活動する人々が常時いる状態となり、結果として不審者が入りにくくなり、安全性が向上する。また住民が利用することで設備や遊具の製作や改修など、学習教材や授業の充実が得られることになり、大人同士のつながりを生み出すことにもつながっている。このように学校を地域住民の活動場所として開放することで、結果的に地域の活性化につながっている。

 日本では小学校区内の人口が1万人前後であれば小学校の児童数は650人前後になるが、ディープエコノミーの著者ビル・マッキベンは、地域社会の適正規模について次のように述べている。

 1世代前、オーストラリアの先住民族アボリジニからアメリカ先住民族まで、土地に根ざした社会では約500人が1つの集団となって暮らしていた。互いに顔がわかる程度に小さな数であり、健康な遺伝子プールを確保するには十分な大きさである。そして人々が都市に集まりはじめても人の数は少ないままだった。中世の都市では約2万人くらいで、中央に教会を持つ4つの地区に分かれていた。現代の建築士や土地計画者もだいたい同じような規模が理想的だという考えにたどり着いている。それくらいの人口密度だと学校や店を開くために十分な大きさがあり、それでいてすべてが徒歩圏内におさまるほどの小さな地区が作れると指摘する。
 ルイス・マンフォードは古代ギリシャ都市国家のほとんどは平均して1万人ほどの居住者を抱え、人と人との距離が縮まったため、演劇、詩、彫刻、絵画、論理、数学、哲学の分野におけるアイデアやイメージが一斉に湧き起こっただけでなく、かつてないほど集団生活はエネルギーに満ちあふれ、美的表現や論理的評価の能力が高められたと述べている。ミケランジェロのローマには5万5000人、ボッティチェリとレオナルドのフィレンツェは4万人の人口である。アメリカ独立革命の10年後に実施された最初の国勢調査では、ニューヨークの居住者は3万3131人、ボストンが1万8320人だった。そういった小さな地域社会からワシントン、ジェファーソン、アダムズ、マディソン、フランクリンがおおよそ同時期に輩出されたのである。
 人間社会の適正規模を推測する方法は他にもある。人間は140メートルほど離れたところから近づいてくる人のだいたいの輪郭、衣類、性別、年齢、歩き方を見分けることができる。そう考えると、イタリアのサンマルコ広場やギリシャのアクロポリスのように、公共スペースとして成功している場所の最大寸法はほぼそれくらいである。ルネッサンスの建築家は最も高い建物でも、高さは広場の最も長い距離のおよそ3分の1にするべきだと考えた。だいたい15階建てである。

 このように地域社会の適正人口に対する見方は様々あるが、多過ぎることも少な過ぎることもない5万人前後に保ち、その中心に学校など住民が集まる場所を1つ定めておくことで様々な利点が生まれる。しかし現代は産業革命後の発展により都市へ人口が集中し、地方の人口は減り続けバランスが崩れている。都市では中心部の人口減少と周辺地域の人口増加によってドーナツ化現象が起こり、都心と周辺地域の距離は拡大し、学生や社会人の移動距離は増し、日々の移動を激化させることとなった。
 このように現代は、人間社会の適正規模からは程遠いものとなってしまっているが、問題点はどれにあるというものではなく、解決策はこれまで述べてきたように人間としてどう生きるべきかを理解し、新たな仕組みを行うことにある。

○プラウト主義経済

 この新たな仕組みとは、自給自足と生活品の無償享受で自立した生活を送り、束縛されることなく直感的な活動が行え、環境破壊がなく、動植物の安全が守られ、すべてが調和した仕組みであるが、このような社会システムは1959年にインドの哲学者P.R.サーカーによって、プラウト主義経済として提唱されている。これは「Progressive Utilization Theory」の頭文字をとったもので、資本主義や共産主義に代わる新しい経済理論とされている。
 サーカーは人間には「物質」「知識」「精神」があり、その3つのバランスが重要であると説いた。その中で最も強調するのが精神で、社会が複雑化する中で人間が受けるストレスは強まるばかりで、多くの人々がそのような状態にある中、救える手段は無限の存在につながることしかないと述べている。

「全ての人間は幸福を求めている。苦しみを求めているものはいない。人間は食べ物やダンスに飽きることはあっても、幸福な状態に飽きることはない。すなわち人間は幸福を無限に追求しようとする。」

 動物はお腹がいっぱいになれば眠り、お腹が減ればエサを求めるが、自分が食べる以上のエサを得ようとはしない。動物には人間が持つような無限の欲求がない。ところが人間は無限の欲求を持っている。必要以上に穀物を生産し、必要以上に獲物を殺し、必要以上の富を築こうとする。これは人間というものが何らかの形で無限の存在とつながっていることが理由で、よって人間は無限の存在とつながることによって幸せを掴むことができると述べている。物質も知識も有限な存在で、それらをどれほどたくさん持ったとしても無限の幸せを掴むことはできない。無限なものは精神だけで、精神的な喜びを永続して得ることができれば、それを満たすことができる。
 資本主義国家では富豪や多国籍企業によって経済が支配され、一方、共産主義国家では中央政府による計画経済の為に地域的な需要は無視され、現代の世界経済は極めて不安定な状態にある。プラウトは世界連邦を樹立して人類の統合を目指す必要性を説いているが、経済面では地域での自給自足を推進する。サーカーは地方分権の必要性を次のように強調している。

「私たちはこの世界のたとえ1つの生物、さらには1つの分子といえども無視することはできません。それゆえに産業を管理するにあたっては、地方分権を推進することが望ましいと言えます。ある特定の地域の産業を促進することによって、他の地域の貧困や失業を撲滅することはできません。」

 産業が利益目的で運営されると地方分権は地域間の経済摩擦を生み、社会調和の妨げになる。しかし地域の人々が自分達の生活品を製造する目的で産業を運営するならば、拡張主義に陥ることはない。プラウトでは人々に生活品を提供する為に製造されるので、利益を追求することも損失を被ることもない。そして地域産業は人々の需要に応じてそれぞれの役割が分担される。工場は地域の人々によって運営され、自分達の代表者を選出し、代表者がこれを管理することによって搾取のない民主的な労働環境を作り上げる。そして作業効率を高める新しい機械が導入された場合は、労働時間が短縮される。
 プラウトでは科学技術の進歩だけが人間を幸福にするものではないと考え、新しい発明がある度にそのマイナス面をチェックし、除去できる見通しが立たない限り利用しないという考えに立つ。よってマイナス面が完全に除去され採用される新発明は、人類にとって完全な進歩となる。

 さらにサーカーは世界共通の理念が必要だと述べている。
「一見したところ地域的な違いがあるように見えても、人間社会の根本的な文化は皆同じです。その違いは外見的なものであって本質的なものではありません。世界全体が1つの文化を持っています。全人類の文化に共通している要素は常に奨励しなければなりませんが、外見上の違いは無視しなければなりません。」

 地域的な伝統や文化はその地域に住む人々のアイデンティティとして尊重されなければならない。例えば食事や衣服の違いはその地域の人々の環境への順応の結果生まれたものであり、世界主義の発展の妨げにはならない。世界中の人々がこの世界主義の理念に目覚め、調和して生きて行く為に満たされなければならない条件として、サーカーは次のような項目を挙げている。

■共通の哲学

 人間には肉体、精神、霊性という3つの側面がある。プラウトは地球主義を実現し、これを維持してゆくためには、この中でも特に霊性の面において人々が日常の意識を超越することによって、全人類の一体性を直感することが必要であると考え、人類をこの霊的な目覚めへと導く共通の哲学が必要だと主張する。

「霊性とはユートピア的理想ではなく、それがいかに世俗的であろうと毎日の実生活の中で実践し、認識できるものです。霊性とは進化と向上を意味し、迷信や悲観主義とは無縁のものです。すべてを調和させる寛大さのみが受け入れられるべきで、霊性の哲学は人と人との間に不自然に作りあげられた区別を排除し、全人類が兄弟姉妹であると説きます。」

■共通の憲法

 科学技術の進歩によって世界中の文化交流の機会が増え、これからもその傾向は強まる。しかし文化が交わるだけでは人類の連帯は生まれない。人類全体で世界連邦を樹立し、共通の憲法のもとにその連帯を維持して行く必要がある。現在の国連などはいわば各国の利益代表の集合体に過ぎず、そこでは超大国の利害関係が大きく対立するのみで、人類の代表機関とはなりえていない。世界の人々が国境によって分断されている限り国家間の対立は絶えることはなく、人類共存の夢が叶うことはない。サーカーは世界憲法に盛り込むべき内容として、次のことを述べている。

 地球上のすべての動植物の完全な安全が保障されること。精神性の実践、文化遺産、教育、固有の言語表現という4つの基本的な権利の保障。これらの権利の行使が「基本的な人間の価値」と衝突した時には、「基本的な人間の価値」を優先させなくてはならない。「基本的な人間の価値」とは例えば、病気で伏して死を待つばかりの老人と働き盛りの一国のリーダーとでは社会的な貢献度から見た評価に相違はあるが、まったく等しい基本的な人間の価値を持っている。そのような社会的立場がどうであれ、等しく尊重されるべきということである。

■共通の刑法

 現代社会では国ごとの善悪の概念に基づいて刑法が制定されているが、この善悪の概念は地域によって様々である。例えば世界には政府の政策に批判的であるために政治犯として捕らえられている人が多くいる。本当の意味で人類の連帯を実現する為には、こうした千差万別の刑法の代わりに正しい善悪の概念に基づいた世界共通の刑法を制定しなければならない。サーカーは世界共通の善悪の概念を次のように定義している。

「一般民衆の霊的、精神的、物質的成長を促す行為は善業であり、その妨げになるのは悪業です。」

■生活品の供給

 世界中のすべての人々が食料、医療、教育、住居といった人間が生活していくために欠かすことのできないものを享受できるようにすることは、地球主義を実現する上でどうしても必要なこととなる。一部の国では物資が有り余っているのに、人類の過半数がこれらの物資を得られずに苦しんでいる現状を放置したままでは、人類社会の一体化は期待できない。人々が全人類への同胞愛に目覚めて助け合わなければならない。

○共有財産と管理者

 食物の自給自足には土地が必要になるが、資本主義社会では余っている土地がほとんどないほど法的に誰かの所有物となっている。しかしそれは本来誰のものなのかを考える必要がある。サーカーは次のように述べている。

「もし私たちが大宇宙の相続財産の原則を受け入れるならば、外国人とそこの住民の土地という問題は生じえません。すべての天地万物は私たちの世襲の財産です。そして私たちは大宇宙社会のメンバーです。私たちは自分の好きなどこへでも移住し、定着する自由があります。土地の所有権は地主にも誰にもありません。所有権は骨折って働く人民にあるという間違った考えは紛争と混乱をもたらすだけです。」

 サーカーは天地万物の管理運用の権限は、精神性が高く、ふさわしい能力のある人に与えるべきと述べている。すべての人間がこの大宇宙の生み出した富や資源を享受する権利はあるが、すべての人がその富や資源を管理運用する権利をもつわけではない。分かりやすくいえばここに病気を治すすばらしい薬という富があるとする。すべての人が病気になった時、誰もがその薬の恩恵に預かる権利をもっている。しかし誰もがその薬を管理運用する権利をもっているわけではない。その薬を有効かつ本当に苦しんでいる人に適切に処方するモラルと能力をもった人物のみ、薬を管理運用する権利をもっている。政治の領域も含めて社会のすべての領域で、大宇宙の富をすべての人々のため最大限に有効活用できるような力とモラルを持った能力の高い人に、富の管理運用の権利を与えるべきだとサーカーは述べている。

「天地万物はすべての人の共有財産です。しかし権利を持つことと管理運営の権利をもつことは同一ではありません。人類の多数は従う人々であって指導者ではありませんから、管理運営の権利は選ばれた少数の人に与えられるべきです。生活のあらゆる領域、社会的、政治的、その他において知的かつ直観力を持つ労働者たちが、財産を管理運営し、他の人々の権利を保護するべきです。」

 民主主義の概念はこれまで人類が編み出した社会制度の中で、最も優れた制度として多くの人に賞賛されてきた。それにもかかわらず、現在の民主主義は腐敗と搾取に蝕まれている。サーカーは民主主義の原理そのものに反対しているわけではないが、民主主義の現状を見ると政治家の腐敗や民衆の政治に対する無関心など、数々の構造的欠陥が目につく。仮に政治家が民衆を代表しているとしても、民衆の意識が低ければ選ばれた代表者は必ずしも適切な指導者とは言えず、適切な選択肢が民衆に与えられているとも限らない。民主主義が正常に機能する為には、その社会の選挙権を持つ人々の過半数が正しい判断力と政治意識を持ち合わせている必要がある。この前提条件が満たされない限り、人々は正しい指導者を選出することは出来ず、民主主義は衆愚政治に陥る。民衆を啓蒙して民主主義の理想を実現する努力をすべきだとの考えもあるが、これはあまりにも時間が掛かりすぎる。そこでプラウトが提唱するのがサドヴィプラと呼ばれる道徳実践家(モラリスト)による政治である。サーカーはサドヴィプラについて次のように説明している。

「サドヴィプラは正義感が強く、正義に反する行ないに対していつでも戦いを挑む用意が出来ています。道徳の原理に従い、常に献身的な奉仕活動を行ない、悪と戦う用意が出来ている人、それがサドヴィプラです。」

 サドヴィプラとは人類の発展の為に献身的な奉仕が出来るような道徳の道に長けた人のことを指す。そして自分個人の利益よりも人類全体の幸福を優先できるような人だけが、サドヴィプラになる資格を持っている。彼等は軍人、知識人、商人、労働者などのいずれにも属さず、これら特定の階級が他の階級を搾取することがないように監視することが役割である。搾取された人々は自己の意識を高める機会を奪われ、その結果社会の進歩が阻まれるため、サドヴィプラはこのような状況を回避するために全力を尽くす。そして社会周期の転換期には民衆を指導し、社会がなるべく円滑に次の時代へと移行できるようにする。
 この道徳実践家の指導体制による独裁を危惧されるかもしれないが、サドヴィプラは道徳心が旺盛で、自己の利益よりも全体の利益を優先する性質が求められるため、彼等が腐敗することはありえない。現代の多くの政治家に見られる腐敗体質は、サドヴィプラの指導のもと排除されなければならない。


○拡張プラウト主義の社会構造

 サーカーが提唱するプラウト主義経済では世界連邦を樹立することの必要性を強調しているが、ではここまで見てきた人間の本質的な在り方や現代の科学技術も加え、家庭から世界連邦までの拡張プラウト主義の社会構造を具体的に見ていく。常に下位の組織は上位の組織へ権利権限の一部を譲る関係になる。

1、自給自足を行う家庭
2、家庭が集まり構成される自治体  (現在の市町村に相当)
3、自治体が集まり構成される州   (現在の国に相当)
4、最上位に州を調整する世界連邦

 自治体、州、世界連邦には共通して総務、保健、製造、保安、交通、の5つの組織が設置される。各部局は名称の後に下から部、局、省と付け加えられる。自治体、州、世界連邦の各規模に応じて名前どおりの活動を行う。


「自治体」

 自給自足を行う家庭が集まり自治体を構成する。拡張プラウト主義では6万人規模の自治体が多くなる。市民の交流や取り組みが行われる学校のような中心的施設は、多目的施設として自治体に建設される。多目的施設はドーム型に建てられた運営館、製造館、芸術館の3つの施設から構成され、その地下に地下駐車場と地下鉄であるエアロトレインの駅も設置される。自治体周辺に歴史的建造物、寺院、神社仏閣などがある場合は、最寄の自治体が管理する。

■自治体での活動とルール

 自治体の多目的施設は主に自治体運営、製造、芸術活動などに利用され、入学や卒業という概念はなく、気づけば親や友達や近所の人に誘われ利用していることになる。多目的施設は24時間利用可能で、赤ちゃんから老人までの交流の場となる。その中で自分が何か興味のある事に出会えば、知人やインターネットからその情報を得て、自ら計画を立てて取り組む。さらに宿泊施設も設け、他地域からの訪問者に地域で落ち着いた文化交流が行えるよう宿泊場所を提供する。そして自治体のウェブサイトでは部屋の利用状況の確認や告知などができ、内外の情報交換に使われる。

 多目的施設に限らず組織を形成する際は、いつでも参加でき、いつでもやめることができるよう開放的にする。もし組織を硬直化したものにしてしまえばしだいに権威化していき、人間関係が義務化する。義務化すると個人の好奇心や意欲は2次的なものとなる。こうなると直感的な行動が制限されてしまい、緊張、不安、欲求不満を生み出す結果につながり、最後は崩壊する。地域住民すべてが生徒となり、教える側に回ることにもなるが、誰もが次の基礎事項を守り、教えていく必要がある。

・人間は支配者ではなく自然の中に住まわせてもらっている者として謙虚に判断する。
・自治体の許可なく自然の破壊、動物の殺傷を行ってはならない。
・好奇心に従い、天職を見つけ、社会に奉仕する。
・全て自己責任で行い、他者に迷惑をかけない。
 これらは平和と成長を促す普遍的な基礎事項であり、これらが破られる時、不調和、分裂、停滞、後退、悪循環に陥る。こういった基礎事項に加え、1度の失敗が命に関わる事柄の予備知識や性教育も家庭で教育する。家庭や自治体では子供にこの基礎事項を教育する必要があり、教える大人は自らの行動をもって示さなければならない。なぜなら子供は親や地域の人間の行動を見て育つからである。大人がいくら口で正しいことを説明しても、子供は大人の行動そのものを見て真似をしている。親も子供と同様に学んでいる段階であり、謙虚になって子供と共に学んでいく姿勢が必要となる。

■学習教育

 拡張プラウト主義では学校というものは存在せず、子供も大人も自分が学びたいと思ったことを好きな所で学ぶ。芸術館の部屋を使ってや、必要な施設がなければ自ら施設を構築するか設備の整った地域に赴く。自治体では誰もが学ぶ意欲が出た人のために学習教材をまとめておく。例えば読み、書き、計算など、それらを学びたいと子供や大人が求めたときに円滑に取り組めるよう教材をまとめておく。

 学習スピードを高めるポイントは「実践に身を置くこと」と「その中でよく使われる技術や知識、そして好奇心を優先して取り組み、反復していくこと」である。こういったことを基本にしながら、親も子供と共に遊んで日々を過ごしていく。



■子育てから生涯学習の流れ(目安)

0歳〜約5歳
 子供を産んだ後、5歳くらいまでは親が中心となって基本的な教育をしながら多目的施設の芸術館へ連れていく。芸術館が遠ければバスで行くことにもなる。周囲の友人全員に自由な時間があるので、助け合いも行われやすい。

約6歳頃〜
 多目的施設へ自分で通うようになる。そこでは好きなことをしている人達がいて、たくさんのクラスがある。誰もがそこで年齢に関係なく、自分の興味あることをしているクラスに参加するか、もしくは自分で作る。
 そして好奇心に沿って活動していると、やがて天職・適職レベルのものごとに出会う。そうすると勉強が自主的になり、本人に必要な知識・技術を自ら学び取るようになる。周囲には教えてくれる友人や先輩もいる。

天職発見3年目
 意欲的に天職に取り組むことを3年続ければ、技術・知識が非常に高くなり、自分のスタイルを築き、他者が簡単には真似できないレベルになっている。また、この時点では自信も持て、精神的にも一定の満足感を得ていることが多い。よって自分だけでなく他者にも喜んでほしい、幸せになってほしいという感情が芽生え、奉仕することが多くなる。

天職発見3年〜15年
 天職を手にすると、意欲的に、高い集中力で、深く物事を考えることが継続される。その継続で起こることは、人間の本質や物事の道理・真理に気づき始めるということ。長く継続すればするほど、気づきは多くなる。よって思慮(しりょ)深くなり、人格・精神性も向上していく。天職発見3年〜15年の間に、短期・中期・長期の試練や挫折に直面する人物、現在の取り組みに飽きて他の天職を見つける人物、複数の天職を同時に持つ人物まで様々に存在する。そのすべての人が活動を継続する中で他者に奉仕も行い、精神性が高まっていき、やがて人格者となっていく。こういった流れがあり、人生が終わる瞬間まで続いていく。

■いじめを起こさないためのポイント

 現代社会でいじめが起きている場所はどこかと考えてみると多くの場合、学校、職場、家庭が大半を占める。これらに共通することは「一定時間、強制的に気の合わない人と同じ空間にいなければならない」ということである。人間には生理的にどうしても合わない性格の人物が存在するのは事実である。しかし現在の社会では学校を簡単に変えることはできず、次の職が見つかるかもわからないので簡単に職場を変えるわけにはいかず、家を2つ3つ持つ家庭は少ないので家庭内のいじめも簡単に回避することはできない。

 しかし拡張プラウト主義の世界では現在のような1日の大半を気の合わない人と過ごさなければならない学校や職場は存在せず、毎日8時間も一緒にいるようなことは起こらない。家庭での問題も自治体に言えば新しい住居が提供されるので、家庭内のいじめ問題の回避は容易にできる。拡張プラウト主義において大事なことは、親や周囲の人間は子供であれ大人であれ本人がしたくないと言えば無理に続けさせず、好奇心に沿ってたくさんのことに挑戦させることである。嫌なことがあった時にそれを忍耐強く続けるべきなのか、それとも回避すべきなのかは本人の直感に従って決めさせるべきで、そういったことの積み重ねが自己責任と自己解決ができる能力を育ませていく。現在の社会でよく見受けられる光景として、一度始めた習い事を親が簡単には止めさせないということがある。子供がやめたいと言えば「自分が始めたいと言い出したのだから最後まで続けなさい」と言って止めさせない光景である。多くは親の愛情だが、しかし「簡単に諦めるクセがついてしまうかもしれない」という心配がよぎっている事がある。しかし実際人間は好奇心のあるものに巡り会うと、親が「するな」と言っても手に取って始めてしまうものである。また特に子供の場合、一時的に「やりたくない」と言い出しても、本人に好奇心があれば「やっぱりやりたい」と少し時間をあけると戻ってくることが多い。

 拡張プラウト主義では、親や周囲は誰に対しても強制せず束縛せず、寛大な態度で相手の好奇心を優先し見守る。そして自治体は狭い空間に長期間同じ人物といなければならないような場をできるだけ避ける。こういったことによって人間関係で生まれるストレスが大幅になくなり、いじめが起こることはほとんどなくなる。
 そして天職を身につけた人物は自分が満たされるので劣等感を持つ人物も減り、また苦労して自分を高めたので、人の辛さに共感する能力も高まり、いじめをするような人格になりにくくなる。

■不良や暴力団について

 暴力団関係者に対する調査で、大人になり暴力団に入る人物には共通点があり、それは生まれてから20歳までの人格形成期に親の愛情を十分に受けずに育った点があげられている。同じ共通点は10代で非行に走る子供にも通じる。他にも貧困家庭であったり、出身地域や国籍で差別を受けたことがあるという点もあげられている。
 拡張プラウト主義では、この問題も起こらない。貧困に陥る人は存在せず、よってどの親にも生活に余裕があり、子供に愛情を注ぐ時間は十分にある。もし明らかに愛情が不足した家庭が見受けられればその異変は子供に非行という形で現れ、そうなった場合、自治体で子供を保護し、別の親代わりとなる人物が育てる余裕もある。こういったことは、住居や生活物資を誰もが無償で手にすることができるため可能となる。

■路上生活者について

 1868年頃、日本で明治維新が起こった時期に、イギリスでは路上生活者が存在していた。その後、約149年が経った2017年においてもその問題は解決されていない。この間、たくさんの知識人や政治家が社会問題について取り組んできたが、それでも路上生活者の問題は解決されていない。これは貨幣社会という仕組みに問題があり、貨幣社会でうまくやっていけない人は路上生活をするしかなくなる。
 拡張プラウト主義ではこの問題は起こらず、誰もが住居や生活物資、そして教育を無償で手にすることができる。

■性行為、結婚、子作り、性教育

 性行為について重要なことは、両者が純粋に相手に楽しんでもらおうとしているかということである。反対に自分の性欲を満たすための自己中心的な性行為は、相手を貶(おとし)める行為であり、後々何かしらの問題が起こる。

 結婚について、拡張プラウト主義の自治体では婚姻届などは存在せず、結婚するかどうかは両者の合意のみである。結婚をして子供を作るのか、それとも結婚せずに子供を作るのかは2人に任せられる。子供を作ると決意したのであればまず自治体にいる医師の診察を受け、遺伝的適合性をチェックし、常に安全に配慮した形で子作りを行う。

 そして生まれた子供を自分達で育てることが基本となるが、市民誰もが時間的余裕があるので、誰もが自分の子供のように接するようになる。これの重要なことは、子供が幼少期から愛情を受けて育つ環境があるかどうかで、それは親だけではなく周辺の人々からも同様である。

 子供が生まれれば両親の名前と本人の名前を自治体へ報告し登録する。これは市民数を自治体が把握する意味合いがあるが、将来的に近親相姦(きんしんそうかん)に陥らないようにするためでもある。自治体へは報告以外の手続きは必要ない。名前も名字、名前、ミドルネームのようなものが必要なわけでなく、名前だけでも問題はない。また夫婦別姓も認められ、結婚や離婚の際の報告は必要なく、両者の間での合意のみとなる。
 恋人や夫婦など異性との関係は常に自己責任であり、後々問題となるような心配事があるのであれば、事前に話し合って両者が納得していなければならない。目の前の快楽や喜びに流されず大人になり、思慮深くならなくてはならない。

 出産については、女性は12歳前後で生理が始まり妊娠が可能になるが、現在の社会ではその10年後の22歳での出産でも早いと見られる傾向がある。これには経済力などの問題が存在するが、プラウトでは地域でも子供を育てるという考え方になるため、女性に体力があるうちの10代での出産も行う事ができ、その後の医療費の心配はなく、子供を何人作っても教育費がかかることもなく、住居も家族の人数に見合ったものが提供される。彼らを育てることも自分達だけで行わなければならないと考える必要はなく、自治体全体で育て、誰もが自分の子供として接する。街の人付き合いは活発なものとなり、孤独死する老人もいなくなる。生活に関するあらゆることが無償で享受できるので、年金など金銭に関係する心配事はなくなり、誰もが将来に対して安心感を持って過ごせる。つまりプラウトでは経済力の有無に関係なく子を持つことができ、子供のその後の生活の心配もなくなる。

 こういった考え方が基本となり、性教育も家庭内もしくは自治体内でが基本となる。子供は成長する過程でどのように赤ちゃんができるのか親に聞く瞬間があるが、子供に好奇心が出てきたときには親が説明したり、インターネットや本でいつでも説明できる動画を自治体で作っておく。

■芸術活動

 プラウトでは余暇が増えるので誰もが芸術活動に携わるようになり、それにより人間全体の感性が高まる。様々な事柄で独自の道が追求され始めると、表現の幅や質は現在よりも格段に向上する。同じ料理でも盛り付け方や器のデザインに気品があると味も美味しく感じるように、質が良く細部まで気配りされたものが増えれば、それに接する人々も一層の喜びを感じる。拡張プラウト主義ではすべての物が美しく、個性的で、無駄がなく、汚染もない調和された表現で溢れ、そういった物に囲まれて人々は生活をおくる。

 音楽や踊りもより自由で幅広いものへと進化する。アフリカ、ヨーロッパ、アジア、南米など、どの国の民俗音楽にも必ずそれに合わせた踊りがあり、それは何千年も前から続いている。そして現在はジャズ、フラメンコ、サンバ、レゲエ、盆踊り、ディスコ、デジタルのダンスミュージックと、時を経ても踊ることは続けられている。つまり踊ることは人間の普遍的な表現活動の1つであり、余暇が増え、誰もが喜びを感じて過ごす拡張プラウト主義では、ダンスも表現活動のひとつとしてより活発になっていく。

 音楽などでは現在様々なジャンルのものが生まれているが、拡張プラウト主義ではそういったジャンル分けはなくなる。ジャンルというものは創作活動が金銭を得る手段となっている貨幣社会において存在する。視聴者が購入しそうな音楽を作ろうと思えば、過去に実績があり視聴者に馴染みのある音楽が参考となる。その連続がジャンルを生み出す。貨幣社会では誰かが購入しなければ生活も創作活動もおぼつかなくなるが、拡張プラウト主義では自分の表現を気に入る利用者がいなくても創作活動が続けられるので純粋に自分の個性を探求でき、よって個性そのものがひとつのジャンルとなる。つまりこれまでの「こうしなければならない」「売れない」と常識的に考えていた要素がなくなり、ただ自分は何を表現したいのかという要素が大きな割合を占める。それにより誰もが常識に囚われない純粋な直感を得始め、音楽、絵画、踊りなど芸術に関するあらゆることが直感的に表現される。直感的に表現するとは思いつきのようなものともいえるが、つまり一瞬先の予測がつかない表現方法が多くなる。これは現在で言えば現代音楽、抽象絵画、前衛芸術、即興表現、コンテンポラリーダンスなどが近く、精神的な遊びの方向へと向かう。ただこれは大きな方向性であって、現在ある表現や理論的なものも変化し続け、すべては全方向に進化する。


■多目的施設

 こういった活動が行われるドーム型の多目的施設も太陽光発電などによって自家発電し、地震や竜巻など自然災害を想定したものにする。自治体内の最も高い建築物については、高層ビルのように人々に緊張を与える建物は人々の心理にマイナスとなる。よって原則として自治体の取り組みとしてよほど必要でない限り建物は樹木よりも低くして、どこまでも遠くが見渡せる景観を壊さぬよう努める。
 多目的施設は自治体の中心に建設し、住居をその中心から円形に広がるように配置して街を構築していく。多目的施設を中心に据えることで、すべての人々が円形の中央に体を向け、隣にいる人々はみな、同一の対象へと向かう仲間として共感と協調性が意識される。

 多目的施設には図書館、展示室、演芸場、病院、宿泊施設、消防警察、IT電力水道管理室、工場、斎場(火葬炉、動物炉)などを併設する。そして家庭で使う食器を作るための電気窯と電動ろくろの設備を備えた陶芸室も併設し、粘土も地域で採集して市民は食器を自作する。市民は貧困に陥ることがなく満たされた生活を送るので犯罪が起こる可能性はほとんどなく、よって警察の必要性はなくなるが、拡張プラウト主義初期は自治体が警察の有無を地域事情から判断する。
 そして地域情報を管理する6つの組織を設置する。それは自治体、総務部、保健部、製造部、保安部、交通部となる。

 自治体の中心には運営館、芸術館、製造館の3つを建てる。運営館には各組織、IT電力水道管理室、病院、消防警察、宿泊施設、斎場など自治体を運営する施設が集まる。芸術館には活動部屋、演芸場、展示室、図書館など芸術活動を行う施設が集まる。製造館は各工場設備や陶芸室など製造に関する施設が集まる。

 そして運営館、芸術館、製造館へはそれぞれ150m以内で行けるように位置する。これにより多目的施設を利用する市民の交流はより活発になり、これ以上の距離になれば移動距離が増し、精神的な疲労感を感じることになる。また、各家庭から多目的施設までの距離は約2km以内を目安にしておくと、徒歩で通うことに大きな苦労を感じることがなくなり、自治体の活性化に繋がる。

 さらにこの多目的施設の地下に地下駐車場を作る。車やバイクで多目的施設へ訪れる人の為の駐車場としての役割で、地下に作ることで地上の自然破壊を無くす。


■工場

 製造館の工場では基本として次の製品を製造することになる。

【住居関連】
 木組みで麻壁のドームハウスと地下住居、麻の外断熱、木製サッシの複層ガラス、全館空調システム、免震装置、地下室、地下式消火栓

【電力関係】
 太陽光発電、水力発電、蓄電池

【家電】
 ・通信 (携帯電話、パソコン、HDD、無線RAN、液晶テレビ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、マイク、スピーカー)
 ・移動 (電動自転車、電気バイク、電気自動車、ヘルメット)
 ・台所 (IH調理器、給湯器、冷蔵庫、炊飯器、脱穀機、精米機、圧搾機、電動ろくろ)
 ・衣類 (洗濯機、アイロン、ミシン)
 ・美容 (ドライヤー、ヘアアイロン)
 ・掃除 (掃除機)
 ・便所 (バイオトイレ、温水洗浄便座 ※温風乾燥、脱臭機能、乳児用補助便座付き)
 ・その他 (時計、LED電球、スプリンクラー、小型消化ポンプ)

【日用品】
 ・洗浄 (マイクロバブル、ランドリーリング、石鹸、シャンプー、リンス、洗顔料、洗剤、柔軟剤、塩、歯磨き粉、重曹、明礬"みょうばん")
 ・洗濯 (洗濯用ネット、物干しハンガー、洗濯バサミ、物干しスタンド)
 ・台所 (たわし、スポンジ、箸、皿、コップ、スプーン、フォーク、鍋、やかん、フライパン、包丁、まな板、流し台など)
 ・風呂 (ボディブラシ、洗面器、風呂ぶた、風呂マット、鏡)
 ・便所  (トイレブラシ、スリッパ)
 ・掃除 (ほうき、ちりとり、モップ、雑巾、ホース)
 ・織物 (生地、ハンカチ、タオル、バスタオル)
 ・家具 (机、椅子、本棚、収納箱など)
 ・寝具 (ベッド、布団、枕、シーツなど)
 ・衣類 (衣服、靴、眼鏡、靴べら、姿見、裁縫道具、天然樟脳)
 ・顔 (歯ブラシ、カミソリ、髭剃り、小ばさみ、リップクリーム、義歯用品)
 ・化粧 (口紅、ファンデーション、アイシャドウ、マスカラ、メイク落とし、化粧水、乳液、ヘアワックス、手鏡、櫛)
  ・工具 (スパナ、ドライバー、金づち、やすり、電動ドリル、はんだごて、ノコギリ、ニッパー、ケーブルカッター、ネジ、釘)
 ・文房具 (シャーペン、色芯、ボールペン、はさみ、カッター、定規、分度器、消しゴム、絵の具、のり)
 ・紙製品 (和紙、画用紙)
 ・医療品 (ハーブ、絆創膏、マスク、包帯、テープ、血圧計、体温計)
 ・生理用品 (コンドーム、ナプキン、タンポン、軽失禁用品、布オムツ)
【自治体規模】
 運営館、芸術館、製造館、地下鉄(エアロトレイン)、コンピューターネットワーク、医療・福祉器具、救急車、消防車、ダンプカーやショベルカーなど建設機械、植物燃料、糸、生地、塩など食物関係、航空機、船舶、空港、港湾。

 各製品には最先端技術が使われ、無公害で、再利用される。これらを製造するため製造館には次の設備が必要になる。

 バイオ燃料工場、紡績工場、織布工場、ヘンプ繊維加工工場、ヘンププラスチック加工工場、コンクリート・アスファルト工場、ゴム・タイヤ加工工場、ガラス工場、鉄工場、家電工場、自動車工場、単車・電動自転車工場、石鹸工場、医薬品工場、飛行機工場、船舶工場、エアロトレイン工場、電気窯、電気炉、高炉、陶芸室、材木集積場

 衣服もコンピューターによる全自動編み機が登場している。下記の画像は株式会社島精機製作所のMACH2Xで、スタッフが持っている服は30分で完成する。

 ソフトウェア上でデザインを決め、USBでデータを編み機に入力する。
 
 こういった設備がある工場から生まれる排水はすべて無害であることが義務となり、川へは流さず、家庭排水と同様に地面から地中へと浸透させていく。工場設計の基本ルールは次の通り。

工場と製造品のルール
・自然環境の破壊や汚染がないこと。
・地元地域の資源だけですべての生活必需品を作り出す設計。
・プラスチック部分はヘンプを使用する。
・再利用できる素材の使用と、それを前提に単一素材化できる設計。
・世界標準規格を使用して(なることを前提として)設計する。
・3Dプリンタを使用し、ボタン一つで製品が完成する設計。また手作業による資源から原材料、原材料から製品を作り出すことが可能な工場設備。
・生活必需品の基本デザインはシンプルでスタイリッシュなものにしておき、市民が完成品に対して色付けなど装飾しやすい状態にしておく。
・技術革新があり部分的に新たな設備と交換する際に、簡単にそれが行える設計。
・工場設備から工場設備が作り出せる設計にし、工場設備自体を輸送できる設計にする。これは他地域の自治体構築や災害時の復興支援が迅速に行えるように。
 こういった工場から作り出される製造品には「性能」と「デザイン」という2つの側面がある。性能面に関しては、すべての人間のアイデアを結集して1つの高性能なものを作り出す。デザインはシンプルなものにしておき、あとで個人が自分の好みに改造できるようにしておく。これによって現在の社会のように同じような製品を何百種類も作る必要はなくなる。

 こういったルールに従い、製造館では製品の修理や廃家電を原料に戻して再利用することも行われる。製品は単一素材化しやすい設計が前提となるので、分解して鉄の部分は電気炉で溶かされる。そして自治体で鉄鉱石など新たに天然資源を採掘する必要があると判断した場合に限り高炉が使用される。
 工場では製造を機械化してボタン一つで作り出すか、職人や住民が設備を利用して製品を1つずつ作り出すかの2つに分かれる。よって3Dプリンタの使用が、この場合最も適している。3Dプリンタは、パソコンの画面上に描いた3DイメージやCT・MRI等のスキャナーで撮影した3次元のデータをそのまま立体的に造形できるマシン。よって将来的に様々なデザイナーが設計したデータはオンライン上で共有でき、市民誰もが好きなデザインを選ぶことが可能となる。上記に記した生活品のほとんどをすでに3Dプリンタで作ることができ、3Dプリンタの原料にヘンププラスチックなど使用できるようになれば、資源の枯渇に困らず、常に再利用できる。

 アメリカのローカルモーターズが、44時間で電気自動車を3Dプリントすることにも成功している。またマウンテンバイクのフレーム自体を3Dプリントで作ることや、パーツを3Dプリンターで作った電動のバイクも製造可能となっている。この電動バイクは1回の充電で約150Km移動可能となっている。またプラスチックだけでなくガラスや金属用の3Dプリンタも数多く存在している。

 ■製造品の資源

 物を生産する際はすべて再利用可能ということが前提になるが、あらゆる製品に使用されている石油からのプラスチックは日常生活を便利にしている反面、化石資源の石油を消費している問題や野外に捨てられた物は分解されずそのままの形で残り、野生生物に害を及ぼすなどの問題を起こしている。こういった問題を解決する方法として、大麻の茎からプラスチックを作る方法がある。大麻は英語でヘンプと呼ばれ、ヘンププラスチックは土の中で自然分解され、燃やしても自然に還る天然素材となっている。これは衣食住の全般にわたり様々な恩恵をもたらす。

 例えばヘンプ断熱材は天然の苦み質を含み、また蛋白質を含まないため虫やネズミの害を受けず、しかも防腐、防かび、防虫性があるのが特徴で、麻繊維がほとんど吸水性をもたないので結露が起こっても吸湿しにくく速く乾く。また吸音効果も高く、高級車の防音・断熱材としても採用されている。ヘンプそのものは捨てるところのない植物で、種子は食用となりタンパク質や脂肪が豊富となっている。茎の芯は建材や内装材、プラスチックの原料などに利用できる。また茎からとれる丈夫な繊維で糸や布、劣化しにくい紙を作れ、木材の代替資源となる。また茎は竹のように多孔質でしっかり呼吸するため、臭いや湿気を吸着する。また断熱性があり、冬は暖かく夏は涼しい環境を作り出すことができるので建築資材に適している。日本の城の城壁や町屋の白壁などの漆喰壁は、昔から石灰、フノリ(海藻の糊)、麻スサ(麻の繊維くず)を原料とし、それらを練り合わせて何回も塗ることで、日本の気候風土に耐えられる壁を作ってきた。さらに茎の皮は優れた繊維になり、自動車用内装材、ひも、ロープ、住宅用断熱材、布、衣料品などに利用できる。またヘンプの穂と葉には優れた薬効成分があり、鎮痛、ぜんそく、睡眠障害、緑内障、神経性難病、がん治療の副作用、うつ病、眼病や皮膚炎の治療などに効果がある。

 大麻は約100日で3〜4mに成長し、栽培には手間がかからず、連作が可能でどんな環境でも育つ植物であり、利用価値が高く、衣類、建材、食品、化粧品、紙、燃料、薬品、プラスチックなど、人間の生活において必要な製品のほとんどに利用することができる。

 大麻は麻薬や大麻取締法という響きなどからマイナスイメージを持たれているが、大麻そのものは日本の伝統文化の中で一般的に栽培され長く利用されてきた文化的な植物で、それが戦後GHQによって強制的に禁じられ現在に至っている。しかし拡張プラウト主義では個人に対するストレスや緊張がなくなり、反対に誰もが好きなことに取り組んでいるので、無限に精神的な喜びを得て過ごしている。よって吸引などに対して自制心が働き、飲酒なども含め自分で自分をコントロールできない状態にすることは人格の高まりとともに敬遠される。拡張プラウト主義では大麻の本質的な利用価値に注目し使用していくことで、循環型社会の構築に大きな役割を担う資源となる。

 このようにしてあらゆる製品に使用されるプラスチック部分はヘンププラスチックが使用されることになるが、麻はどこでも栽培が容易なので、すべての部材は出来る限りヘンププラスチックを優先して使用する。そしてヘンププラスチックでは必要を満たせない部材は鉱物などから作り出す。鉱物の優先順位は鉄、銅、鉛、亜鉛、アルミニウムなど比較的埋蔵量が多く、広範囲で採取可能なベースメタルを優先して使用する。そして金、銀、クロム、ニッケル、アンチモン、チタン、タングステン、リチウム、コルタンなど、埋蔵量の少ないレアメタルの使用は検討する必要がある。ただ近年、日本では微生物を使ってレアメタルのパラジウムだけを抽出することに成功した例があり、こういった技術がさらに発展していけばレアメタルの再利用が基本となっていく。

 鉱山の坑道は必要最低限の数と大きさにするために、出来るだけ複数の自治体で1つの鉱山を共有する。使用されなくなった坑道は埋め戻す。自治体の製造部と総務部が中心となり鉱物資源の埋蔵量を調べ、近隣自治体と話し合い数百年先までの使用計画を立てる。製品は再利用が基本なので採集した原料は何度も使われ、市民に必需品が行き渡った時点から原料採集の必要性は最小限に抑えられ、資源が枯渇することはなくなる。そして科学技術が進むにつれて、すべての材料は単一素材よりも優れた複合材料へと移行していく。

■PROUT Villageと地域開発

 PROUT Village(自治体)の建設位置は、地震、津波、地すべりなど自然災害が起きることを想定して、危険度が高い場所は避ける。海沿いと川沿いは津波で浸水する。数百年前の地震の教訓として石碑や文献が津波のやってくる位置を示していることがあるので、それも参考に決定する。

 PROUT Villageの総務部は自治体人口の把握、伝統文化の継承などを管理する。結婚の年齢制限はなくなり、同性結婚も自由になる。引越しの際は総務部などへ住居の引継ぎを行う。必要な届出類としてはコンピューターで伝えるだけにし、細かな書類は省く。
 市民は住居を買うのではなく自治体の総務部から無償提供され、居住者はそれを何世代にもわたり借り受け、住人がいなくなれば再び自治体が預かる。住居は少なくとも6人家族が住める大きさのものを統一して建設する。そのために直径13mのドームハウスとなる。

 拡張プラウト主義の住居の配置は現代のような直線的な配列はやめ、円を基本としたフラワーオブライフという模様で住居を配置していく。このフラワーオブライフはトーラスの平面図であり、宇宙の誕生から永続する自然はすべてこの形でデザインされている。
 トーラスは内側から螺旋状に上昇し、外側から下降して、再び内側から螺旋状に上昇する。このトーラスを真上から見た時、渦が黄金比の割合で黄金螺旋を描く。黄金比は最も美しい比とされ、自然の中や、人間の各部位、人間が作る芸術、製品の中にも取り入れられている。
 
 宇宙はトーラスを基本形に創造されているが、そのトーラスを平面で表すと、フラワーオブライフという模様になる。


 人間の意識は常に空間によって影響され、例えば四角の机のように人と人とが向かい合い、直線的な関係にある時、相手と自分という意識が形成されやすい。すべての人々が円形の中央に体を向けるとき、隣に座る人々はみな、同一の対象へと向かう共感する人として意識され、共同する意識が生まれやすい。
 こういった理由もあり、住居は円を基本として配置し、また太陽光がどの住居にも届くように、次の図のように配置していく。

 このPROUT Villageと呼ぶ自治体が、一つの街の単位である。まず住居が円形で作られ、次に6戸の住居が円形に配置され、その円が7個集まり新たな円を作りというように、すべては円形に配列されている。その中央に多目的施設である運営館、芸術館、製造館が配置されている。
 多目的施設がある直径444mの円は中央広場であり、野球のスタジアムが4つ入る大きさで、スポーツ、祭りなど広さが必要な用途に使用する。芸術館がある円には体育館も併設される。こうして生活のすべては、直径4km(半径2km)の円内で全てが完結し、自転車で移動できる距離となる。
 2015年の段階で日本の世帯人数は平均2.5人ほどだが、それは都市部に単身世帯が増えていることが原因でもある。次の数字は江戸時代から現代までの世帯人数の推移。

江戸時代 1600年代 6〜7人
江戸時代 1750年代 4人
大正・明治時代 1868年〜1926年 世帯平均人数5.02人
昭和時代 1950年代 世帯平均人数5人、具体的には夫婦に子供3人
昭和時代 1970年代 世帯平均人数3.69人
平成時代 2010年代 世帯平均人数が2.51人 子供がいない夫婦も多くなった

 こういった平均人数の中で、5〜6人家族が拡張プラウト主義では平均的になると予測し、一つの住居は少なくとも6人が住める広さに統一しておく。そして自然災害のための地下部分はシェルターの役割も持つ。
 上記の図のような配置の街にすると、全家庭が5人家族の場合、7万560人が一つのPROUT Villageに住めることになり、全家庭が3人家族の場合、4万2336人が住むことになる。

PROUT Villageが直径4kmの円の理由-----------------------------------------------------------------

・街の端(はし)から中央の多目的施設まで2kmだが、歩いて片道30分の距離となる。一般的にこの距離であれば気分良く散歩ができる。しかし片道45分〜1時間の場合、行きは歩いたとしても帰りも同じ距離となれば歩く人が減る。PROUT Village内の活性化のためには、気分良く歩いていける距離の街にしておく必要がある。

・歩いていける距離であれば自転車でも通える範囲となる。PROUT Village内での自動車の行き来を減らすために、自転車と徒歩でいける範囲にする。また中学生くらいの第二次成長期をむかえる前の子供にとっては、3km以上を自転車で通うとなると遠さを感じる。また現代社会の場合、親も自動車事故などを心配して遠い距離を自転車で通わせることをためらう。PROUT Villageでは毎日街の中央の多目的施設に通うと仮定して、小さい子供も自転車で移動できる2〜3kmに住居を配置するよう配慮している。またそのため、PROUT Village内の自動車の交通量も減らせるよう半径2kmにしている。つまり直径4kmという大きさは、大人も子供も徒歩や自転車で気軽に通える限界の距離となるので、街の一つの目安と考えることができる。

・直径4kmの円で住居を配置した場合、全家庭が10人ずつ住めば最大で約14万人が住むことができる。それは現実的には起こりにくいが、PROUT Villageには平均的に6万人前後になると予測している。理由は日本は少子化により人口が2055年には9193万人になるとされ、つまり2000年代初期から比べると、約3000万人は人口が減る。これは各PROUT Villageの人口が1万人ずつ減る人数となる。もし日本の人口1億2700万人をPROUT Villageの数で割ると7万人が住民数となるが、人口減少で6万人が平均的になると推測できる。最大14万人住める街に6万人が住んでいるという状態にしておけば、近隣で災害が起こった場合、被災者を受け入れる住居が余っているということでもある。

・PROUT Villageをフラワーオブライフという円形にしている理由は、そのデザインが人間、動物、植物、地球、宇宙、銀河など、宇宙にある全てに共通する黄金比とトーラスという普遍的な美しいデザインだからである。そして円形ということで、住居の配置が中央の同一対象へと向かう共感する人として意識され、共同する意識が生まれやすいためでもある。つまり直径4kmでこのフラワーオブライフの自治体を作る。フラワーオブライフ以外のデザインも今後の研究によって生み出されていくことが予想されるが、現時点ではこのデザインが普遍的なものとしてスタートに適している。

日本のPROUT Villageの数-------------------------------------------------------------------------------

 日本の国土面積37万7900㎢のうち33.6%の12万6974㎢が居住可能面積とされている。その中に2942個のPROUT Villageの建設が可能である。その中で4151万7504個の住居が建設できるが、2016年時点での日本の世帯数は5185万世帯であり、一人暮らしが1680万世帯となっている。よって各PROUT Villageには1100個ずつ、計5人が住む一人暮らし専用住居も建設する。そうすると合計3841万個の住居数で足りる。
 現在日本は少子化が進んでおり、2020年には1億2410万人、2030年には1億1662万人、2055年には9193万人と人口が減少することが予測されている。つまり住居数は年々少なくなっていく。


PROUT Villageの建設位置-------------------------------------------------------------------------------

 日本は地震がよく起こる国で、併せて津波の危険性もある。日本の津波の歴史を200年という時間枠で振り返ると、どこかの地域で大きな津波に襲われ、それによる死者が出ている。つまりPROUT Villageを海沿いに建設ということは、200年のうちに何個かは津波に飲み込まれるということになる。2011年の東日本大震災では津波が内陸10kmまで押しよせた。こういったことから、日本の場合、海沿いから10km内陸というのは、多くの場合山がある。よって日本は居住地を山間部に作るべき国ということが見えてくる。

複雑地形の住居配置ルール--------------------------------------------------------------------------------

 4kmの円(フラワー オブ ライフ)を配置できればそうするが、山間部では地形が複雑になっている。その場合でもまず中心に多目的施設を建設し、可能な限り円形に住居を配置していく。もし1戸しか建てれないような細い場所であれば、一直線に住居が並ぶこともある。その場合も、住居間は最低6m開ける。

斜面崩壊・山崩れについて--------------------------------------------------------------------------------

 PROUT Villageは山間部に位置することが多くなることから、山崩れを考慮したドームハウスの建設位置を考えなければならない。山崩れ、崖崩れ、土砂崩れは斜面崩壊ともいう。これらは大雨や地震によって発生しやすくなる。

 大雨による斜面崩壊が発生しやすい箇所として,次のようなところが挙げられる。まず地形条件からは,斜面の傾斜が急なところ(傾斜角30度以上)、斜面の途中で傾斜が突然急になるところがある斜面、谷型(凹型)の斜面、上方に広い緩傾斜地がある斜面、などである。最後の2つは多量の水が集まりやすい地形条件である。
 土砂災害防止法による土砂災害警戒区域は急傾斜地の高さの2倍(最大50mまで)と定められている。急傾斜地とは傾斜角30°以上で、高さが5m以上の斜面をいう。

 
 現状は、いつどこで崩れるかを予測するのは困難だが、崩れた場合その崩土(ほうど)がどこまで到達するかは、かなりはっきりしている。普通の崖崩れの場合、崖際から土砂の先端までの距離は崖の高さと同じ距離の範囲内にほぼ収まっている。したがって住居建設の時には、できるかぎり崖斜面から離して建てる。離す距離は安全を見込んで崖の高さ以上とする。
 中小規模の山崩れ・がけ崩れでは、崩土の到達距離は斜面の高さと同じ距離の範囲内にほぼ収まっている。ただし地面に傾斜があるとより遠くまで達する。土砂の横への広がりはあまりない。


PROUT Villageの農地-------------------------------------------------------------------------------------

 PROUT Village内で食物の栽培を行うが、周辺にもたくさんの土地が余るので、そこで農業と麻の栽培を行う。5人家族に必要な農地は36m四方が目安となる。
 さらに食物をより安定的に、そして量を多く得るために運営館には水耕栽培の施設を建設する。

PROUT Villageの公共工事-------------------------------------------------------------------------------

 PROUT Villageでは物質的にも満たされることにより貧困がなくなり、それによって犯罪もなくなるので鍵をかける必要性はないが、初期においての鍵の設置は居住者の判断に任せる。そして引越しの際は家財道具を置いていき、次の居住者はそれを利用する。このようにして誰でも好きな所に好きな人と住むことができる。よって子供は自由に好きなところで住めるので、親より子供がしっかりしている場合、親に愛想をつかした子供が家を飛び出し他の場所で自立して生活しているようなことが起こりえる。

 家を建てる場合は製造部の建築家、宮大工、林業技士、配管工などが話し合い、円形の配置を基本として地域のどこにドームハウスを建て、どこの木を伐って建てるかなど、千年単位で利用できるよう話し合う。住居は中央に配置された多目的施設から円形に広がるように配置する。
 木の伐採に関しては近隣の自治体とも話し合って森林伐採区や保護区を決める。住居の建設の際は建物の領域を示すような柵や塀は作らず開放的な設計にし、現代のように隣の家の音が聞こえるような住居の間隔は避け、集合住宅など単調なデザインの住居も控える。
 また朝にはドームハウスの屋根から太陽光が注ぐよう設計する。個人で内装を変えることや増築することは可能となるが、建築家の建てた住居の強度に支障をきたさないことが条件となる。

 こういった住居のデザインは自治体ごとにある程度統一し、住居の大きさも自治体ごとに一定の基準を持って建てていく。これは自治体の総務部が管理する。これはつまり、その自治体に住む住民誰もが、よく似たデザインの、よく似た大きさの家に住む事になるということ。ただこれは誰もが同じものを享受するという単純な平等思想ではなく、誰もが千年使い続けることができる高い質の住居を無償享受するということなので、現代社会の住居よりも住み心地の良い住居に住むことになる。

 自治体内の道路は車などが走るためだけの必要最低限にし、信号、道路標識、柵、塀、ガードレールは作らず、地上ではアスファルトも使用せず、土や芝生などで整備して自然を優先し、山にトンネルを作ることは禁止される。ただ隣の自治体までは災害時の救助などに使用する大型車が通れるくらいの土の道路は確保しておく。

 自治体の道、山道、建物の位置は人間よりも自然の都合を優先する必要があるので、林業技師が中心となってそれらの位置設計を進め、大樹は伐らずに残す。地上の道路は土や芝生にしておくことで誰もが注意しながら車を運転することになり、スピードが出せないことから事故を減らすことにもつながる。自治体の道路作りの基本として、交差点などの死角を作らないことは頭に入れておかなければならない。よって現在の社会のように、四つ角に建物があるような町づくりは始めから避けていく。
 そして車が通らない野原などには道を作らず、人が自由にコースを決めて歩けるようにし、社会にはゴミがなくなるのでどこでも裸足で歩けるようになる。夜になれば住居と道路の電灯が光ることになるので、電灯はすべて照明芸術として設計し、夜の景観向上に努める。ただ景観向上に影響力を持たない場所の電灯は、人感センサーなどを使用して通行がある場合にだけ点灯するようにし、それ以外の時間は闇にして星が見えるようにする。河川も現在のようなコンクリートで固められた堤防の建設は避け、自然のままの景観を維持する。よって豪雨によって川が氾濫する恐れのある場所には建物や農地を作らないことが基本となる。 こういった制約を守ることで地上には必要最低限の建造物と土の道路だけとなり、後は自然で溢れかえることになるので、家の近所で野生動物が草を食べる光景を見ることができるようになる。そして道路を歩く動物に気をつける必要があり、また自治体の道路は曲線が多いので、車も必然的にスピードを控えるようになる。

 各家庭のインターネットや電話はアクセスポイントから接続するが、通信ケーブル、電線、上水道はすべて地中に埋設して、家庭と運営館のIT電力水道管理室を結ぶ。そしてこれら地中の配線は土の道路の下に作る。これにより工事の際に植物を掘り返すことがなくなる。そしてIT電力水道管理室から地下鉄へつなげることによって世界全体とつながる。

 家庭と多目的施設が通信ケーブルや電線で結ばれることにより、緊急時にIT電力水道管理室から家庭へ電力を供給することができ、また自治体からの警報通告を各家庭に直接知らせることもでき、豪雨や暴風時に警報通告が聞こえないなどのトラブルを失くすことができる。よって各家庭のリビングの壁に緊急用電話とスピーカーを埋め込んでおき、自治体の総務部、保安部、保健部などへボタン1つですぐ電話をかけられるようにしておく。緊急の災害時には自治体の警報通告がそのスピーカーから流れてくる。さらに各家庭の各部屋には火災探知機を設置し、それを自治体の保安部とつなげておく。

 そして生活品はすべてワイヤレス給電になる。現在では60wの電力を50cm離れた電子機器に給電することが可能になっている。

■車のドライバーと各種操縦士

 拡張プラウト主義では車の運転は18歳、バイクの運転は16歳と、現在の方式と同じ形式で進める。その際の運転技術指導は自治体が担当する。運転免許やナンバープレートも、現在の方式と同じように進める。

■消防

 拡張プラウト主義では住居が密集することはないので、火災時に住居から住居へ火が燃え移る可能性は少ないが、周辺の樹木へは燃え移る可能性がある。火災が起きれば自治体の消防車が出動し、規模が大きければ近隣の自治体からも応援が駆けつけるが、初期消火活動として住民自らが各家庭に常備されてある小型消化ポンプを使用して消火活動を行う。これにより周辺の木々へ火が燃え移ることが早期に予想された場合に、それらの木々に先に放水して被害を最小限に抑える。

 このために各住居近くの上水道に消火栓を整備する。消火栓は棒が突き出た地上式消火栓ではなく、マンホール型の地下式消火栓で整備する。この地下式消火栓を上水道が住居へと向かって分岐している地点に設置する。そしてこの消火栓と同じ位置に小型消火ポンプとホースが入った格納箱を埋め込んでおき、住居人がすぐに消火活動を行えるようにする。ホースの長さは消火栓から家の裏まで回り込める長さが必要となるので、20m以上が目安となる。そして消防車が到着すれば保安部の消防隊員の指示に従う。

■災害時の救助と復興について

 地震、火山噴火、地すべり、暴風、台風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、津波などの自然災害と人間は常に隣り合わせで生きているが、このどれが起きようとも基本的な対応策は同じである。自然災害の影響が及ぶ範囲は限定的であり、災害の影響が及んでいない周辺自治体が避難場所として被災者を受け入れる。
 災害が起こりまず困ることは被災者の住む場所と食料だが、周辺地域の自治体や市民が避難場所として宿泊施設や自宅を提供し、併せて食べるものも提供する。次にその自治体の総務部がその避難者のリストをまとめオンライン上で周辺自治体と共有し、安否の確認がとれるよう手配する。被災地への救助•救援活動は周辺自治体の保安部が中心となって行うが、事によってはヘリコプターなどが必要になることもあるので最寄りの空港がある場合はそこから、空港がなければ事前にそういった設備を準備しておく。基本的にこの手順で被災者の救助を行う。

 次に復興については破壊される前の状態を作り出せば良いだけであり、そのために周辺地域の技術者が中心となって復興を行う。倒壊した住居の木材を回収し、使えるものは再利用し、足りない木材は自治体が管理する木々を使用する。住居の原材料は地元の資源を使用している事が基本となるので、あとは職人が周辺から手伝いにくれば復興は迅速に行われる。現代社会では復興する際の大きな問題として復興するための資金面の問題があり、復興後も経済的に成り立つのかが問題となって復興が遅くなる。しかし貨幣がない拡張プラウト主義ではそういった問題は起こらず、地元の資源と職人と住民がいれば復興はすぐに行われる。
 そして街が完成すれば再び市民は戻っていく。ただ地震、噴火、洪水などの自然災害の歴史を何百年単位で見ていくと、同じような場所で同じような災害が起こっていることがある。つまり復興する場合もやがて同じ規模の災害が起こると予測されるのであれば同じ場所に街を作らない必要性が出てくる。地域の歴史を慎重に検討し、自分達の子孫の世代のことも考えた上で街作りを行わなければならない。

■消防警察について

 火事が起きた時の対応、災害が起きた時の救助、街の治安を守るなどの業務を自治体の保安部が一括して行う。拡張プラウト主義の時代には現代とは異なりこういった事件が頻発することは少ないが、あらゆる事態のシミュレーションを行っておき準備をしておく。

■医療

 拡張プラウト主義では菜食への移行と生活習慣の改善によって自治体住民の健康状態は良くなり病に伏せる人は少なくなるが、ほとんどの病状は住民自らが薬用植物などを使って治すことになる。そして芸術館にある病院では歯科、眼科、内科、外科、耳鼻科、皮膚科、泌尿器科、精神科、産婦人科、脳神経外科、伝統医療などの治療が無料で受けられる。芸術館に設置する理由は、市民が最も活動している場所となっているからで、その分ケガも増える。
 治療には基本として薬用植物や伝統医療を用い、植物や備品も自治体でまかなう。さらに高度先端医療設備も整え、集中治療室、無菌病室など高度な医療の提供、開発、研修が行えるようにする。
 自治体周辺で車、飛行機、船などの事故や自然災害が起こった場合は、最寄の自治体の保安部や保健部が中心となって救済活動や事故車の処理を行う。事故車などは製造館で原料へ戻される。出産については自宅出産か病院での出産となるが、現在では数が減っている助産師も需要が増す。
 市民が医師になりたいと希望すれば、この自治体の病院で医学も学ぶ。

 そして拡張プラウト主義では、医師のミスで患者が死亡したとしても医師が責任を追及されることはなく、誰も責任を負うことはない。手術が必要な怪我を負うこと、体調を崩すことなどはすべて本人自らが引き起こした問題であり、自己責任が基本となる拡張プラウト主義では誰にもその責任を押し付けることはできない。自分の健康について自分で責任を持つことが自立した人間の基本であり、これが前提にあることで助ける側も最善を尽くすことができる。

 また温泉が湧き出る地域では現在のような観光資源として地下から大量に汲み上げるような扱いは基本的に禁止となり、あくまで節度を持った利用と医療目的の使用にとどめる。よって大量に汲み上げて垂れ流し状態ではなく、必要分を必要な時に使用するということであるが、節度と言っても人によって感覚は異なるので各自治体が独自に判断する。

 さらに食物の栽培方法や種子の管理など食に関する知識も保健部が管理する。医食同源という言葉にもあるように、食事が健康状態に影響を与えるためである。

■16歳以下のスマホ・携帯電話の使用制限について

 スマホ・携帯から出る高周波の電磁波については、WHO(世界保健機関)が、2011年「発がん性の可能性あり」と発表した。また2001年には、送電線や家電製品から出る超低周波についても同様に「発がん性の可能性あり」と発表している。つまり家電製品も携帯電話も、どちらも健康に影響を与えるリスクはあるが、携帯電話が他の家電製品と決定的に違うのは、頭に密着して使う点である。携帯電話は中継基地局との間で電波のやり取りをして通話するが、通話時に携帯電話から出る電磁波の50%以上は、頭の中に吸収されてしまう。さらに深刻な問題は、携帯電話依存症の子供たちが急激に増え、嫌がらせも増えていることである。
 次の図は、一定時間内に吸収する電磁波の熱量を表すSAR値(比吸収率)で、成人男性、10歳児、5歳児の脳や目のSAR値を比較したものである(米国ユタ大学 オム・ガンジー博士の研究調査より)。SAR値が高くなるほど健康被害が大きくなる。これによると、5歳児の脳は成人の4倍以上の電磁波を吸収してしまい、5歳児の目は大人の約12倍もの電磁波の熱を吸収してしまうということである。

 各国では携帯電話の規制・勧告・要請などは次のようになっている。

▪ 16歳以下の子どもは携帯電話を使うべきではない(ロシア、国立非電離放射線防護委員会)
▪ 8歳未満の子どもには携帯電話を使わせないように(イギリス、国立放射線防護委員会)
▪ 12歳未満の子ども用携帯電話の全ての広告を禁止(フランス政府)
▪ 10歳未満の子どもを販売対象にしない(オーストラリア、バージン・モバイル社)
▪ 8歳以下の子どもたちには固定電話を(カナダ、トロント市公衆衛生局)
▪ 16歳以下の子どもには携帯電話を使用させないように(アイルランド医師環境協会)
▪ 16歳未満の子どもの携帯電話使用・販売は禁止(インド、カルナタカ州)
▪ クリスマスプレゼントに携帯電話はやめよう(オーストリア、ウィーン医師会)
▪ 7歳以下の子どもへの携帯電話の販売は、店頭でもインターネットでも禁止(ベルギー政府)
▪ 小中学校への持ち込みは原則禁止(日本、文部科学省)

 ただ健康への被害は、科学的にはっきりと証明されたわけではないのが現状である。拡張プラウト主義では健康への安全を証明することが第一になり、16歳未満の携帯電話の使用は控えるよう促す可能性がある。16歳というのは第二次成長期がおおよそ終わる時期であり、子供から大人の身体に変化している期間が過ぎた後ということである。

■福祉

 自治体では障害者福祉にも取り組む。多目的施設では車椅子の移動を前提に床面を平坦にし、ゆるやかなスロープや車椅子の幅を考慮した広い通路やドアを基本に設計にする。各案内板には視覚障害者の為の点字を表記し、音声を自動で字幕化して画面に表示する音声認識技術も用いる。電動車椅子などの福祉用具も全て自治体の職人によって製造され提供される。身体障害者の補助犬の手配も自治体で行い、手話の教育なども行われる。

 そして障害者がいる家族に対しては快適な生活ができるように、住居の内装もそれ仕様に設計される。ただ、一般的には建物内の物理的な障害を取り除くバリアフリーが良いとされる傾向にあるが、それによって障害者や高齢者をより軟弱にしているという結果も出ている。社会の至る所に、そして自然の中に障害物は常に存在するものなので、あえて障害物を残したほうが、長期的に見ると障害者や高齢者が自分で行動できる範囲が広がるという結果につながっている。このバリアフリーの程度は、最終的にはどこにどの程度の障害物を残すかというバランスの問題となるので、これは各自治体が、またはその家族が、住居や多目的施設の障害物の量を決めていく必要がある。

 日本には2014年の時点で460万人の認知症の高齢者が確認され、さらにその予備軍に400万人いるとされている。現在では施設に預けられる以外には、金銭面の問題や受け入れ先の有無などで在宅介護を余儀なくされる家庭も多い。
 拡張プラウト主義ではこの問題について、まず認知症と診断された市民が一緒に住む専用の住居を自治体内に設ける。そこには数十メートルなどの一定の範囲に草木で作った柵のような境界を設け、その敷地内なら自由に行動できるようにする。よって敷地内には池などの危険となるものはない状態にしておく。認知症患者は徘徊することが多々あり、在宅介護の場合、家族は文字通り24時間神経をとがらせて患者を意識しなければならないので、心身共に消耗する。しかし1人の人間として、また家族として24時間家に閉じ込めておくことはできることではない。そういったこともあり認知症患者も1人で自由に行動できるよう、一定の範囲内の行動ができる場所を設ける。その専用住居からの外出は家族や友人が一緒であれば当然自由で、出入りもいつでも可能である。ただ冬場の夜間の外出は凍死の可能性もあることから、冬場は玄関の鍵を閉めておく必要がある。日中は家族と共に自宅で過ごし、夜間は専用住居に預けておくということも可能である。
 またトイレ以外の場所で排泄を行うこともあるので、その専用住居内の床は拭き掃除が簡単な床にする。そして同じく危険となる包丁などの道具は置いてはおかない。この専用住居は遠い場所にある施設ではなく同じ自治体の施設なので、住む家が近所の別の家に移ったという距離感であり、家族はいつでも会える状態である。この専用住居は自治体の保険部が管理し、家族や市民が患者の世話を行っていく。

 また日本では一般的に馴染みがないものだが、福祉には身体障害者の性の介護も含まれる。こういったサービスを行う団体はオランダで近年生まれたが、日本でも徐々に広がっている。どんな重い障害者でも性的欲求があり、それを解消すべくセックスボランティアが住まいへ伺い介助を行う。こういったことも福祉の一環として位置づけられる。

■動物の扱いと植物について

 福祉関係の補助犬など、動物の助けを必要とする人が動物と生活を共にすることはあっても、それ以外の動物の所持については考える必要がある。動物に首輪をつけることや狭い籠に住まわすことは、動物本来の躍動的な動きが制限されるので当然動物のストレスとなる。安易な動物の所持は控え、動物の動きを制限しない付き合い方ができる場合のみ飼う。そして陸、海、空のどんな動物であっても無意味に殺すことは止め、部屋に入ってきた虫は外へ逃がす。

 また現代社会ではスーツや普段着など世界の人々が同じような服装をすることが多くなっているが、プラウトでは社会的身分が無くなることや文化交流が盛んに行われることによって、民族衣装や自分を表現した個性的な服装や化粧が増える。衣服は動物愛護の思想に立脚し、ウール、シルク、カシミア、革製品などではなく、綿や麻などの植物繊維が主となる。スポーツ用品や楽器に使用される革や毛も使用は避けられ、その代わりにナイロン弦など化学繊維や合成皮革が使用される。また自然死した動物を利用して革製品を作ることも、1人がそれを行えば2人目が現れ、やがて人数が増えれば自制心も薄れることから控える。

 また自分が飼っていたペットが死んだ場合は、自治体の総務部が管理する斎場の動物炉で火葬を行う。

 こういった話でよくある意見として、動物を殺さないことは理解できるが、では植物も同じ生き物であり殺すことになっているのではという指摘がある。それに対する答えとして「自然界の分類」と「文明の進化の段階」という2つの観点から考える。まず自然界に存在するものを次のように4つに分類する。

●鉱物:物質
●植物:物質・生命
●動物:物質・生命・感情
●人間:物質・生命・感情・自我

 この分類で、感情を持って苦しみを表現する人間と動物までの存在を殺すことはやめる。ただ将来的に人間は植物や鉱物も採取しなくなる。しかしそれを実現するためには、科学技術の発展が必要となる。その境目として、植物から必要な栄養のみを抽出できる技術が生み出されれば、植物や花を刈る必要はなくなる。さらにユーティリティフォグのように、ナノレベルのコンピューターが人間の思い描くものに変形するような科学技術に達せれば鉱物を採取する必要もなくなる。つまり現時点での文明の科学技術力では難しいが、数百年後には科学技術の発展が植物や鉱物の利用も最小限にとどめることになる。

■水道水

 拡張プラウト主義では河川へ汚水の流入がなくなり水質が改善される。河川の取水塔から取水された水は運営館のIT電力水道管理室で水質管理され、家庭へ送られる。下水道や下水処理場は必要なく、排水は農地に還元される。

 そして水道水には野菜などのビタミンを壊す塩素は入れない。また水道管は鉛などが混じらず錆びないものを使用する必要があるので、家庭の水道管の案としてはウポノール配管などがある。炭素と水素だけで構成された人体に無害で健康的な新素材架橋ポリエチレンパイプで作られており、耐久性は50年以上とされている。ウポノール配管システムは錆びや腐食の心配がなく、万が一の交換工事の際にも、壁や天井をはがさずにパイプの交換が可能となっている。

 綺麗な水を取水するため、地元の水源環境は厳しく管理し、出来る限り水が沸き出すポイントから取水する。それによりミネラルが豊富な生水をそのまま飲めるようになる。
 河川が近くにない自治体には、最も近い自治体からパイプを伝って水を供給することが第一優先となり、それが不可能であれば自治体ごと水が供給される場所へ移転する。

 島などで水源が確保できない場合は、水源がある地域から海底水道でつなげて供給する。ただ海底水道が建設できないような場所にある島の場合は地下ダムを検討する。地下ダムとは地中に水を通さない壁をつくって、地下水の流れをせきとめ地下水をためる施設であり、すでに日本を含め様々な国で使用されている。

■栽培環境の整備

 道端に生えている植物の多くは繁殖力の強いものが多いが、自治体に食物栽培に適さない荒地があれば、まずその繁殖力の強い植物を植えて栽培環境を整える。こういった植物が根付くとそこに生息する昆虫やそれらを餌にするクモやムカデ、そしてネズミ等の小型哺乳類や小型の鳥といった小動物が現れ始め、それらが生死を繰り返すことにより土壌が肥沃化していく。現在は草刈りが必要などで雑草と呼ばれ迷惑がられているが、拡張プラウト主義ではこういった植物の力を借りて自然環境を整え、どこもが自然で溢れるようにする。

 繁殖力の強い植物は数多く存在するが、例えば麻がある。さらに地面に沿って茎が長く伸びていくクローバー、林や藪の草木にからみついて成長するカラスウリ、成長が早いニワウルシ、熟した豆を食用にできるヤハズエンドウ、地面を這って伸びるヘビイチゴ、高さ10〜60cm程になるキレハイヌガラシ、黄色い小さな花をつけるイヌガラシなどがある。

 またハーブとして料理、菓子、酒などの材料になるミントも繁殖力が強い。例えば爽快な香りや清涼感があるニホンハッカ、耐寒性が強く防虫効果があるペニーロイヤルミント、生命力が非常に強いペパーミント、ハーブとして用いられた歴史が古いスペアミントなど、この他にも数多くの種類が存在する。どんな地域でも耕作に適していない土地があればまずこういった繁殖力の強い植物を生い茂らせ、栽培環境を整えてから作物の栽培を行っていく。

■無報酬労働と作業範囲

 自治体で取り組む事業など人手がいる労働は市民の交代制で行い、すべて無報酬で行う。それにより1人1週間に数時間の労働で必要を満たす。よって現在の社会のような失業者は存在せず、働く時間がなくなるということは余暇が増え、好きなことに取り組む時間が増えることを意味する。また定年という概念もなくなり、何歳になっても自分がしたいことに取り組むだけとなる。最終的には自治体の仕事はほとんど機械が行うようになる。

 一日2〜3時間の労働であれば時間はすぐ過ぎるので問題ないが、それ以上になってきた場合に注意すべきこととして、個人が行う作業範囲はできるだけ広げ、最低限誰もが職人として1つのことを完成させることができる作業範囲を設定する。それが意欲とモラルの向上、そして労働力と労働時間の削減へとつながる。これは現代の流れ作業の結果を見てもわかるが、作業員1人の仕事は数点の部品の組み付けだけで職人的な技量は求められず、全くの素人でも数時間の研修を行えば事足りるような単純労働では、労働意欲の低下と離職率の高さはすさまじくなる。全ての組み立てを1人で行い、ある程度作業に慣れ、それぞれが工夫を重ね始めると、作業者の独創性によって生産性があがるという結果がでている。よって代表者は常に職人を育成することを前提に作業範囲を設定する。

 拡張プラウト主義では金銭がなくても生活が可能になり、自給自足によって生活を成り立たせながら誰もが天職、適職についているので、その職に取り組んでいるだけで充分な満足感を得ている。よって作業者は見返りを求めず奉仕し、あくまで利用者の自発的なお返しがある場合のみ何かを受け取る。人間は報酬によってではなく、好奇心によって活動しなければならない。このような社会がある程度続き、各人間性が向上すれば、誰もがただ与えるのみによって社会は成り立つ。

■所有物

 物を所有する場合は、必ず本人が最後まで管理する事が責任となる。最後とは原料に戻すまでを指す。常に新しい物を所有または製造する際に、最後の処理までイメージしてから持つ事が重要であり、子供にもそのように教育する。
■葬儀と墓

 基本的に人間は生まれて死んでいく生き物だが、死んだ後の儀式や死に対する考え方は宗教や文化によって様々となっている。死生観はその人がどういった場所に生まれ、どのような人生を送ったかで形作られていくものである。個人の死生観を他者が無理に変える必要はなく、拡張プラウト主義ではそれぞれに合った方法で葬儀が行われる。これは現代と同様だが、火葬が必要な場合は、自治体の総務部が管理する斎場(さいじょう)の火葬炉を使用する。墓という概念も宗教や文化によって様々だが、まず自治体が基本的に墓地を管理する。家族が望めば墓の場所は話し合って決める。

 ただ拡張プラウト主義では散骨を推奨する。散骨とは故人の遺体を火葬したあと焼骨を粉末状にし、海、空、山でそのまま撒くことを言うが、重要なことは墓などの物質的な物ではなく気持ちが重要であり、死者に対する感謝の念や想いがあれば、それはいつでもどこからでも伝わっている。よって仏教で行われる四十九日など各宗教には様々な儀式が存在するが、儀式ではなくあくまで純粋な想いで念ずることが重要。ただこういったことに関する考え方は常に個人の自由であり、強制されることはない。

■育児

 拡張プラウト主義での乳児は母乳で育てることが基本となる。しかし母乳が出ない母親やHIVなど体液を通して感染する病気を持つ母親の場合は、自治体の乳母(うば)が母親の代わりに母乳を与える。拡張プラウト主義では誰もが自由な時間を過ごしているので、近所付き合いの中で乳母となる女性を見つけ出すことは容易になる。

 そして現在は紙オムツの使用が多いが、これは大量のゴミを生み出し、資源も大量に消費することから紙オムツの使用はなくなる。拡張プラウト主義では基本的にトイレットペーパーやティッシュペーパーが製造されないので、温水洗浄便座に乳児用補助便座を設置してそこへ座らせ、温水洗浄と温風乾燥を行う。オムツを使用する場合は布オムツを使用する。布オムツは化学繊維の物を使用するとかゆみを伴うこともあるので、麻など肌触りの良い自然素材を使用する。こういった布製下着は、高齢者の軽失禁用にも使用される。
 拡張プラウト主義では夫婦共に自由な時間があるので常に赤ん坊の側にいることができ、育児に十分な時間を注ぐことができる。

「州」

 拡張プラウト主義では現在の小さな国が州に、大きな国は分割されて州に再編される。そして州都を選定し、自治体の首長が集まって州議会が開かれる。州からは州知事が1名選出され、世界連邦に州の代表者として参加する。

 州は自治体と同じく総務局、保健局、製造局、保安局、交通局が設置され、州規模の管理を行う。また州は軍隊を持つことはできない。

■地下鉄

 地下電車に関しては新幹線でもリニアモーターカーでもなく、現在開発段階にあるエアロトレインを使用する。これは数十cm機体を浮かせて、時速400km以上で走る乗り物。磁力を使ったリニアモーターカーを思い浮かべるが、そうではなく、空力を使って浮き上がらせるのがエアロトレイン。
 速度については、空気の薄い高空を飛ばないのでエネルギー効率を考慮し、時速は平均400㎞、最高500㎞。翼がないのでトラックの幅が単線で7m、複線で14m程度。トラックは線路がなく軽くできるので、ルートの設定が容易な高架式が適している。上下2段にすると幅7mで済む。
 乗り心地は、空気力で浮上しているので振動がない。横方向の加速度を機体の傾斜で打ち消す制御によりカーブでも揺れをほとんど感じない。
 経済性の観点については、機体が軽く、効率の高い電気モーターによりエネルギー効率が高くできる。高架式にすると、交差点や踏切がなく自動運転が採用できコストが低減できる。

・州内の長距離を結ぶ長距離列車。 現在の新幹線にあたる。
・州同士を結ぶ州間列車。     現在のユーロスターなどにあたる。

 州内の中長距離列車の運行計画は州の交通局が、州間列車の運行計画は世界連邦の交通省が管理する。州内の地下鉄が完成すれば、次に州間の地下鉄を建設する。各州の長距離列車と州間列車を結ぶことで世界中に最も早い列車網が整備され、長距離の移動が円滑になる。

 地下トンネルの建設について、イギリスとフランスの間を走るユーロスターの英仏海底トンネルは、全長約50kmの貫通までに4年の歳月を費やしている。
 地上と地下の駅とは、階段、エスカレーター、エレベーターで結ぶ。エアロトレインでは自転車、車椅子、患者を運ぶストレッチャーなどが運ばれることもあるので、エレベーターはこれらが入る大きさが必要となる。こうして多目的施設の地下にはエアロトレインの駅と地下駐車場が設備され、それらの出入り口は多目的施設内か周辺に設置される。

■電力設備

 このように、エアロトレイン、電線、通信ケーブル、アクセスポイントが一体となった地下鉄を構築し、太陽光発電などで地下内の電力を一括してまかなう。この電力源の1つとして、各家庭の屋根型太陽光発電の余剰電力を利用する。各家庭の余剰電力は地中の電線を伝って自治体のIT電力水道管理室へ集められ、そこでも利用されなかった電力が地下駐車場を通って地下鉄へ供給される。つまり余剰電力を集めることによって自治体そのものが大きな発電源となる。

 この余剰電力の合計を理解するために、まず自治体であるPROUT Villageには1万4112戸の住居がある。ドームハウスすべての屋根が太陽光発電になり、少なく見積もって一家庭10kwの電力が毎時得られるとし、そこから5kwの余剰電力が生まれるとすれば、自治体からは単純計算で毎時7万560kwの余剰電力が日照時間に得られることになる。この数字は1万kw以下の小水力発電ダムの規模を上回る。これを日本の全人口分のPROUT Village4151万7504世帯に当てはめて計算すると、2億758万7520kwの余剰電力が生まれることになる。日本の原子力発電所約50基は約4800万kw、水力発電は約4500万kw、火力発電は1億4500万kwの発電設備容量で、その合計2億3800万kwを余剰電力だけで上回る。

 そしてこの家庭の余剰電力は、現在技術開発が進められている超伝導ケーブルによって地下鉄へ供給され、エアロトレインの電力や電気自動車の充電に利用される。超伝導ケーブルは抵抗がほとんど無いため損失を小さくでき、発熱もないため電流密度を向上させ、ケーブルをコンパクト化することができる。世界中の電力設備は地下鉄内の超伝導ケーブルで結ばれ、最終的には太陽が照り付けている地域の余剰電力は、その間夜の地域へ供給される。そして自治体のIT電力水道管理室が地下鉄の電力調整を行う。

 またこの電力設備によって全世界が1つの電線で繋がっているので、今後太陽光発電に勝るエネルギー源が開発された場合にも、発電源を複数個作れば全体に行き渡らせることが可能となる。

 国や地域によっては雨季があったり曇り空や雪が多い地域があるので、太陽光発電から安定した電力を得ることが難しくなる場合は地熱発電も検討する。


■航空と船舶

 拡張プラウト主義では、交通手段としてエアロトレインを第一優先に街作りを行う。よって航空機、大型船、長距離移動のための車は極力使用しなくても良い状況を目指す。その理由は、エアロトレインはコンピューターによる自動制御が可能で、人為的な操作ミスによる事故の可能性が低く、そのため死亡事故が起こりにくくなる。また化石資源を使う必要もないため。

 もし港を作る場合、拡張プラウト主義では漁業船などがなくなり、人々の行き来に必要な輸送船や貨物船、そして桟橋があるだけでよいので、港は自然によってすでに条件が整えられている天然の良港にのみ作る。

■天然資源

 自治体の製造館で地下鉄、住居、生活品などのすべての製品を製造するが、製造の為に必要となる原料の鉄鉱石、銅、明礬石、珪砂(けいしゃ)や石灰岩などの鉱物は地域の鉱山から採掘する。そしてプラスチックは麻から作る。ゴムの原料となる樹液のラテックスは、パラゴムノキ、インドゴムノキなどから採集する。バイオ燃料はカメリナ、ジャトロファ、藻、セイヨウアブラナなどから、糸や布は麻や綿などから、樟脳はクスノキから、木材は区域を指定して育てる。

■指紋認証と個人情報の記録

 出生後の健康情報、医療情報、親の遺伝情報などの個人情報は、自治体の取り組みとして記録を残していく。その本人が何かの際に使用することでもあるが、人類の歴史を残すという意味においても、また何世代も後の子孫が過去を振り返る時にも使用される。
 また自治体によっては個人が3Dプリンタで生活品を作る時に指紋認証でログインし、その月に限度を超える製造を行っていないかや、レンタカーなどを借りる際は指紋認証を使って、これまできっちりと返却しているかどうかを自治体が確認できるようにする。

■更生施設

 自治体の市民は貧困や抑圧されるものがないので犯罪に手を染める可能性は限りなくゼロに近づくが、拡張プラウト主義初期では、誤って道を踏み外した人物のための更生施設を州内の数ヶ所の自治体に建設することを検討し、州と自治体の保安局が中心となって管理する。更生施設内でも普段の生活を行うことになるが、この施設から外へでることを禁止にするのかどうかなどの運営方針は州や自治体で判断する。
 この施設へ送り込まれる加害者のほとんどは、まず自治体内で過ちを犯し、自治体の保安部が拘束し、自治体では手に負えないと判断した場合に限り、最寄の更生施設へ送られる。

「世界連邦」

 連邦制は世界連邦と州が明確に権限を分かち合う体制をいう。アメリカにおいての連邦制は、州単位では扱いきれない国防問題や外交問題、国際貿易についての政治権限を中央にまかせ、それ以外のことについては各州にまかせるという大枠を明文化している。世界連邦は連邦首都を選定し、世界憲法を制定し、立法、司法、行政についての業務を行う。 世界連邦も自治体と同じく、総務、保健、製造、保安、交通の組織が存在し、州より大きな規模で管理調整を行う。

 立法、司法、行政に関しては、三権分立などで権力を分散させることが多いが、ここで理解するべきことは、世界連邦に参加する州知事というのは、自治体から選ばれてきた人格者であるということ。つまり人格者の集まりが世界連邦であり、そこで権力の乱用が行われることはない。また多くの問題を自治体で解決することが前提となるので、世界連邦で解決する問題は限られたものになる。この州知事の中から大統領を一人選出する。次は世界連邦が行う業務の内容。

■立法

 立法は人々の権利義務について法を定める。立法での法案は連邦議会の州知事達の全会一致の賛成により効力を有する。また各州の州議会で話がまとまり、全州知事全員の請求がある時は、修正の為の憲法会議を招集する。そして大統領やその他の連邦公務員に対する弾劾裁判も同じく、連邦議会の全会一致の賛成により弾劾対象者を免職する。

■司法

 司法では国際紛争などを解決する連邦裁判所をおく。

■行政

 行政では世界各地を巡り、地域の人々と接し、各地の状況を把握して親しい関係を築くものである。地域社会そのものは自立した循環社会が構築されているので、新しい政策を実行していくような必要性は少なく、全体を統率する重しのような存在になる。

■世界連邦平和維持軍

 そして拡張プラウト主義では世界各国にある軍事力は廃止され、世界連邦のもとにあくまで平和維持を目的とした世界連邦平和維持軍に再編される可能性はある。平和維持軍は核兵器などは持たず最低限の装備となる。ただそれも、世界中で武器を持つ勢力がいなくなるまでである。


■推薦選挙

 拡張プラウト主義における重要なことは現代とは異なり、社会を無理に発展させる必要はないということである。市民は自治体での生活でほとんどが完結し、現在のように忙しく働かなくても生活は成り立つので、社会の発展はすべての人が恩恵を受けられ、自然環境を破壊しない場合のみとなる。その選択をできる人物が必要であり、それにより平和で安定した社会を築くことが出来る。こういった人物が自治体や州の代表者になる必要があるが、現在の選挙制度ではこういった人物が表に出てくることは少ない。
 知名度や言葉上の公約が先行している現在の選挙制度には大きな問題点がある。それは有権者は限られた情報の中から誰かを選ばなければならない点で、多くの人はテレビ、新聞、街頭演説などの限られた情報からでしかその人物を判断することができない。仮に立候補者の活動的な姿や笑顔ばかりがテレビに映れば、有権者への印象はよくなるが、それは政治活動中の姿でしかない。つまり有権者は投票する人物が本当はどういった人物なのかが理解できないまま投票することになっている。

 こういったことを解決する選出方法として、自治体内で推薦選挙を行う。拡張プラウト主義では、5万人前後の自治体が多くなる。人格者を自治体のリーダーとして選出する為には、まず自治体内から自分の推薦する人物を選ぶ。そして自治体内で推薦者の多かった上位何人かが自治体の役員になり、最も推薦者の多かった人物が首長となる。
 知人として顔と性格を把握できる人数は千人程とし、役員の人数は自治体の人口から千人で割って、約1万人の自治体なら10人の役員が、5万人の自治体なら50人が選ばれる。割る値は自治体によって調節する。これにより私生活で接した印象から推薦する人物を選ぶことができる。こうして自治体が構成される。この時点で選ばれた役員は、人格、能力、健康に優れた人物ということになる。

 こうして選ばれた自治体の首長は、州内の首長達が集まる州議会に参加する。州議会に集まる首長の中からは世界連邦へ参加する州知事1人を推薦で選ぶ。
 首長や役員の引退、死亡などにより欠員が出た場合は同じ推薦選挙で人員補充する。知事や役員の能力不足が判明した場合は、役員の全会一致の場合のみその人物を免職とする。
 このように選ばれた首長や役員などに任期は設けられず、善業を行い続ける限りその職を保つ。こうして常に誰もが推薦する人格と能力のある人物が選ばれ、長期にわたって調和した決定を下していくことができる。

 この選出方法は世界連邦においても当てはまり、それぞれのリーダーは州知事の中から選ばれる。

 自治体内において、知事の推薦する権利は生まれたての赤ん坊を含め、すべての市民に与えられる。ただ条件は、自ら考え、自らの意思で推薦を行うということで、つまり子供が自ら決心した時には、何歳であろうと自分の選んだ人物を推薦することができる。このように拡張プラウト主義では、自治体で日常生活をともにする知人の中から人格者を選んで推薦する。

 これらを踏まえ自治体の選挙の流れとしてはまず、役員の選出が必要になれば自治体が選挙期間を公表する。その期間内に自治体市民はパソコンなどを使って、自治体のウェブサイト内に設置された推薦選挙のページで推薦する人物を書き込む。このウェブサイトは常に公開された状態にしておく。そして選挙期間内であれば、1度推薦した人物をやめて別の人物に投票することもできる。こうして公平で隠し事のできない推薦選挙を行う。

 プラウトにおける理想的なリーダー像の参考例を上げるとするとならば次のようになる。日本には男性は外へ出て仕事をし、女性は家庭を守るという伝統的な夫婦像があるが、この家庭を守るタイプの女性が州知事、首長、各組織のリーダーにつくことが望ましい。拡張プラウト主義では現代社会のように常に政策と革新を実行していく必要はなく、自然と人間の秩序を破壊せず、そのルールを頑(かたくな)に守る責任感と正義感、そして全体の調和を考えるバランス感覚を持った人物のほうが適している。そういった意味で家庭を守るタイプの女性が拡張プラウト主義ではリーダーとして適している。これは言い換えるなら拡張プラウト主義の社会は、女性の立場が現代社会よりも強まることを意味し、男性優位の競争的な社会ではなく、女性的な優しい社会となる。また性格的に狂信的傾向がない人物を選ばなければならない。人格は素晴らしいが仕事はできないという人物も避けなければならず、反対に仕事の能力はすごいが人格に問題がある人物も避ける。選ばれた人物はすべてにおいてバランスがとれた能力の高い人物が理想的である。


●世界連邦

 ●立法  連邦議会(一院制)、世界憲法、平和維持軍

 ●司法  連邦裁判所
 ●行政  総務省、保健省、製造省、保安省、交通省

 これら諸制度の下、世界連邦は各州がより良く暮らしていけるよう統治していく。何より大事なことは、人格者を自治体から輩出することであり、市民の推薦選挙が何よりも重要となる。そこに間違いがなければ権力者が生まれることはない。そして権力者ではなく統治者が必要になる。どんな集団組織においても、複数人がまとまって行動する時には1つの決定を下す必要がある。その決定を下す人物が統治者であり、統治者は権力者ではないので無理強いはできないが、周囲の人間が統治者の決定を尊重し、率先して守っていくことで全体がまとまる。この統治者が人格者であれば、常に全体のバランスを配慮した決定を行う。



○世界連邦〜自治体の各省の業務内容


総務省---------------------------------------------------------------------------------------------------------

【世界連邦】
・立法、司法、行政における業務。

【州】
・州内の諸問題の解決。

【自治体】
・人口や男女比などの資料作成。
・自治体情報の作成と公開をウェブで行う。(人口、収穫物の収量、専門技術の一覧など)
・自治体市民の個人情報の管理(生年月日、血液型、出生地、家族構成、出産、転居、医療履歴)。この個人情報は保健部と共有し、保健部が医療履歴を更新する。
・住居と居住者情報の管理と、新入居者への住居の割振りとサポート。
・技術者の人員管理。
・伝統文化や文化財の管理。
・図書室の管理。
・エスペラントの普及。

保健省---------------------------------------------------------------------------------------------------------

【世界連邦】
・各州ごとの高度医療施設の把握と情報発信。

【州】
・高度医療施設がある自治体の把握と情報発信。

【自治体】
・食物の栽培。
・ハーブを栽培し、薬を製造。
・収穫物の収量をまとめる。
・病院設備や福祉に必要な設備の仕様をまとめ、製造部で作ってもらう。
・食育と医療に関する教材をウェブ用に作成。
・福祉関係の業務。
・育児教育と教育教材の作成と公開。
・総務部の個人情報と連携し、個人の医療履歴の管理。
・需要が少なくなる高度医療設備を、周辺自治体と話し合ってどの地域に作るのか判断する。

製造省---------------------------------------------------------------------------------------------------------

【世界連邦】
・世界中に埋蔵する産出量の少ないレアメタルの埋蔵量の調査と資源分配の管理。
・教育教材、研究結果、設計図などをまとめて表示するウェブサイトの構築。
・動画共有サイトの構築。
・ワールドウェブマップの構築。

【自治体】
・地域の地図、鉱物資源の分布、樹木の量、植物資源、年間降水量、気候、気温、技術者 リストなどの資料の作成。
・工場設備の構築。
・運営館、芸術館、製造館、住居の建設。
・生活必需品の製造。
・工場設備の使用マニュアルをウェブ用に作成。

保安省---------------------------------------------------------------------------------------------------------

【世界連邦】
・世界的な災害が起きた場合は世界連邦の保安省が中心となり、救助などを進める。

【州】
・複数の自治体が被害にあった大規模災害が起きた場合、州の保安局が各地のヘリコプ  ターなどの大型設備を統率して派遣する。

【自治体】
・消防車やヘリコプターなど災害時の必要設備をまとめ製造する。
・災害対策マニュアルをまとめ、ウェブで公開する。
・自治体の消防訓練。火事が起きた時の地下式消火栓の使用方法の指導や、説明動画の作成など。
・周辺自治体と話し合い、ヘリコプターなど災害救助用の大型設備をどこに設置するか決める。

交通省---------------------------------------------------------------------------------------------------------

【世界連邦】
・世界規模での電力調整。世界連邦の首都にその機能を置く。
・人工衛星など宇宙に関係することの管理。

【州】
・州の間での電力調整。州都にその機能を置く。
・人工衛星など宇宙に関係することの管理。
・飛行場の管理。
・港の管理。

【自治体】
・地下鉄とIT電力水道管理室の構築に必要な設備をまとめ、構築する。
・運営館にIT電力水道管理室の構築。
・河川からIT電力水道管理室へ上水道を構築。
・IT電力水道管理室から家庭へ上水道、通信ケーブル、電線を結ぶ。
・エアロトレインの構築と構築マニュアルの作成。
・エアロトレインの運行計画と運転マニュアルの作成。
・人工衛星など宇宙に関係することの管理。
・飛行場の管理。
・港の管理。

○エスペラント

 世界が1つになる拡張プラウト主義においては、各母国語とともに世界的な共通言語が必要になる。共通言語として有名なものにエスペラントと呼ばれる言語がある。エスペラントは1887年、当時ロシア領だったポーランドのユダヤ人眼科医ザメンホフが提案したもので、これは中立公平で学びやすい国際共通語とされ、それぞれの言語や文化の違いを越えて、人々がコミュニケーションできるようにするための橋渡しを目的としている。現在多くの分野で英語が事実上の国際語として使われているが、英語は特定の民族、国家の言葉であり、英語を外国語として勉強する人間にとっては不都合になり公平ではない。そういった意味でエスペラントは特定の民族、国家、地域と対応しておらず、習得した大部分の人が、この言語を自分の意思によって選択して学習し、その結果習得した人であるという点で公平になる。
 世界ではヨーロッパが活動の最も盛んな地域でアジア、アメリカ、オセアニア、そしてアフリカなど世界各地に100万人程度のエスペランティストが存在すると推定され、日本には1万人程で、中上級者は千人程とされている。日本では宮沢賢治が作中の実在の地名をエスペラント風にしたものを用いていた。また彼の原作になる「銀河鉄道の夜」ではシーンのタイトル、劇中に出てくる商店の看板等にもエスペラントが用いられている。また岩手県花巻市のJR東日本の釜石線は、各駅にエスペラントによる愛称が付けられている。
 エスペラントは基本的にローマ字読みで、【a、i、u、e、o】の5つが母音で、それ以外は子音となる。アクセントは、最後から2番目の母音を強く、やや長く発音する。ただしその母音の後に複数の子音が続くときは短く発音する。

・bonan tagon【ボーナン ターゴン】 こんにちわ
・saluton【サルートン】 やあ
・dankon【ダンコン】 ありがとう
・kunlaboro【クンラボーロ】 協力
・akordo【アコルド】 調和
・suno【スーノ】 太陽
・luno【ルーノ】 月
・kaj【カィ】 〜と、&

 拡張プラウト主義ではエスペラント話者の協力を得て、1日中エスペラントが聞けるラジオや、人気のある映画や本などをエスペラントに翻訳したもの、そしてネット上で使用できる翻訳サイトや辞書などの内容を充実していく。

○ワールドウェブマップ

 世界連邦を構成する各州と各自治体のつながりは、世界地図をインターフェースに持つウェブサイトによって可視化され、世界の人々はそのウェブサイトを利用することで各地の情報が一目で解るようになる。よって各自治体は情報交換の場としてウェブサイトを製作する。自治体や州の情報、地下路線図、道路図、航空情報、船舶情報、各時刻表、ルート検索、カーナビゲーションシステム、時差計算、天気、写真、各種統計、グラフなどは、この世界地図で可視化され、使用言語は各母国語とエスペラントになる。イメージとしては現在のグーグルマップにこういった機能がついたものとなる。
 ワールドウェブマップの個人情報の入力画面は世界共通フォーマットにし、個人情報は自治体の総務部と保健部しか見られないようにしておく。入力項目は、生年月日、血液型、出生地、家族構成、出産、転居、医療履歴など。個人情報の更新を行えば、その上の階層である自治体、州、世界連邦の数値も自動で更新されていく。

ワールドウェブマップに表示する項目

・世界連邦(世界の情報)
全人口、男女比など、地域の地図、鉱物資源の分布、樹木の量、植物資源、年間降水量、気候、気温、天気、技術者リスト、発電電力図、航空スケジュール、船舶スケジュール、地下鉄分布図と運行表

・州(州の情報)
人口、男女比、公用語、州知事名、設立年月日、時間帯、地域の地図、鉱物資源の分布、樹木の量、植物資源、年間降水量、気候、気温、天気、技術者リスト、発電電力図、航空スケジュール、船舶スケジュール、地下鉄分布図と運行表

・自治体(自治体の情報)
人口、男女比、公用語、首長と役員名、設立年月日、時間帯、地域の地図、鉱物資源の分布、樹木の量、植物資源、年間降水量、気候、気温、天気、技術者リスト、発電電力図、国際電話番号



○動画共有サイト

 現在では一般市民が目の前で起こった出来事をカメラで撮影し、それをニュースとして動画共有サイトにアップすることは一般的になっているが、プラウトでもそういった動きは続く。現在はテレビなどの報道の仕方ひとつで視聴者の感情を煽ることは容易で、背景に流れる音楽を変えるだけでもニュースの印象は変わり、視聴者は良くも悪くも疑いの心を持たず内容を受け入れる傾向にある。こういった映像の性質や影響力は戦争などで国民感情を煽る目的でも使用され、大多数は戦争を望んでいない状況でも1人の好戦的な発言が流されると、国民全員が戦争を望んでいるかのような印象を受けることもある。

 テレビの内容は自分に興味があるかないかに関係なく次々と流れ続け、興味がない内容の場合、真実を熟考しながら見ることはなく、ただ擦り込みのように印象が脳に刻まれる。ネット上の動画も同じようなことは起こりえるが、テレビと大きく違うのはほとんどの場合興味のある映像を自ら選んで見ることが多く、興味のない映像は見ないということにある。自ら望んで映像を選択するので真実を知りたいという好奇心が強く、よって考えながら見る割合が増え、様々な意見を取り入れようとする。

 こういったテレビとインターネットの2つの傾向を考慮し、少しでも真実に近づけるように、そして視聴者が自ら考えながら情報収集できるようにするには、市民参加型のオンライン動画共有サイトとして運営することが1つの方法となる。つまり報道機関を権力化せず、様々な撮影者の視点で出来事を見ることができるようにする。そして自分の中でその断片をつなぎ合わせ、出来事の全体像を形作っていく。
 拡張プラウト主義では市民が持つカメラの性能が向上することや余暇が増えることもあり、こういった市民の投稿は一層増え、サイトの利用頻度は高まる。


○世界憲法

 下記の世界憲法の前文は、サーカーのプラウトの哲学と、1945年8月6日の原子爆弾投下に衝撃を受けたシカゴ大学総長のロバート・ハッチンスが、次の世界大戦が人類滅亡につながる事を憂慮して戦争根絶の為に世界連邦の必要性を感じ、そのため結成した世界憲法審議委員会によってまとめられたシカゴ草案のものを組み合わせたもの。これは参考に作ったものだが、拡張プラウト主義の世界連邦も世界憲法をまとめることになる。

 世界憲法(例)

-- 前文 ------------------------------------------------------------------------------------

 全地球上の人民は霊的、精神的、物質的に向上することが共同目標であり、この目標を迫求するためには、普遍的な平和の実現が必要条件である。民族や国家の戦争と不正は国際的無政府状態において生まれるものであり、よって世界連邦による人類統一の時代が始まらなければならないという点で意見の一致をみた。各国政府は各主権を正義に基づく世界連邦に委譲し、ここに制定する憲法をもって世界連邦の基本法を定める。

 人々の霊的、精神的、物質的成長を促す行為を善業とし、それによって現在に生きる人々や後に生まれ来る人々の向上に尽くすことを共通の大義とし、永久不変のものとする。


○拡張プラウト主義の生活模様

 拡張プラウト主義では毎日が休日のようになり、人々の1日は好きな時間に起きることから始まる。そして目覚めれば好奇心に従って自分のしたい事をし、行きたい所へ行き、遊びたい人と遊ぶ。その中で誰もが天職を発見する。これを可能にするのは食物、電力、生活品などを自分達で作り、無償で分け合っているからで、天職に取り組み、同じ興味を持つ仲間が周囲にいれば、誰もが充実感を感じながら生活を送ることができる。その中で精神性が高まるほど性格が純粋になっていく。人間は苦しむために存在しているのではなく、創造的に遊びながら奉仕し、そこから得られる喜びを経験するために存在している。そして誰もが自分を楽しませ、自分が満たされ始めると他人に奉仕を始める。そして周囲にもそういった人間が増え、喜びを与え合う社会になり、誰もがそういった生活に感謝する。人々のモラルは高まり続け、他人の為に何かをする度に自分も幸せを感じ、知人から初対面の人にまで誰に対しても愛情ある態度で接するようになる。そして他人に迷惑をかけないよう自分を律する。このようにして世界中の人の精神性が向上して暴力性がなくなれば、拡張プラウト主義初期においては存在する警察、裁判所、世界連邦平和維持軍は必要なくなる。

 しかし現在の社会制度での人間は、金銭、物質、地位、名誉への執着や所有欲、そして常識によって、朝から晩まで永遠に働かなければならない世界に生きている。自分たちを苦しめる仕組みが当たり前として生きているが、ここまで見てきたように、人間が幸せを感じながら生きていくためにはそういったものは必要なく、過不足のない生活品を自分達で作り出すことで、1日中好きなことをして過ごすことができる。現代社会のあらゆる根本は損得で、金銭を得なければ生活を維持できず、結果が重視される社会となっているが、貨幣が無くても成り立つ社会においては、純粋に人の喜ぶものや社会の役に立つことが根本となる。