8章 新社会制度 : 拡張プラウト主義

○地域社会の中心と適正規模

 直感的な活動が人間の在り方であり、他人と協力し合って生きていかなければならないのも人間となるが、人間は常に誰かとの関わり合いの中で生きている。まずその関わり合いが頻繁に行われる地域社会の構築方法から考える。その方法の1つとして、地域にある学校を市民の活動のために開放すると、地域の活性化につながっているという例がある。
 千葉県習志野市の秋津小学校では、住民が学校内に事務局を設置し、住民のサークル活動に対して小学校を開放している。学校を住民が集まる場所として利用することは、学校設備の充実、市民の交流、地域の活性化、安全性の向上、そして子育てにも良い影響がでている。学校を地域の人間が集まる場所として利用すると年間365日×24時間の運営になり、顔と名前が一致する住民が増え、校舎内にも校庭にも活動する人々が常時いる状態となり、結果として不審者が入りにくくなり、安全性が向上する。また住民が利用することで設備や遊具の製作や改修など、学習教材や授業の充実が得られることになり、大人同士のつながりを生み出すことにもつながっている。このように学校を地域住民の活動場所として開放することで、結果的に地域の活性化につながっている。

 日本では小学校区内の人口が1万人前後であれば小学校の児童数は650人前後になるが、ディープエコノミーの著者ビル・マッキベンは、地域社会の適正規模について次のように述べている。

 1世代前、オーストラリアの先住民族アボリジニからアメリカ先住民族まで、土地に根ざした社会では約500人が1つの集団となって暮らしていた。互いに顔がわかる程度に小さな数であり、健康な遺伝子プールを確保するには十分な大きさである。そして人々が都市に集まりはじめても人の数は少ないままだった。中世の都市では約2万人くらいで、中央に教会を持つ4つの地区に分かれていた。現代の建築士や土地計画者もだいたい同じような規模が理想的だという考えにたどり着いている。それくらいの人口密度だと学校や店を開くために十分な大きさがあり、それでいてすべてが徒歩圏内におさまるほどの小さな地区が作れると指摘する。
 ルイス・マンフォードは古代ギリシャ都市国家のほとんどは平均して1万人ほどの居住者を抱え、人と人との距離が縮まったため、演劇、詩、彫刻、絵画、論理、数学、哲学の分野におけるアイデアやイメージが一斉に湧き起こっただけでなく、かつてないほど集団生活はエネルギーに満ちあふれ、美的表現や論理的評価の能力が高められたと述べている。ミケランジェロのローマには5万5000人、ボッティチェリとレオナルドのフィレンツェは4万人の人口である。アメリカ独立革命の10年後に実施された最初の国勢調査では、ニューヨークの居住者は3万3131人、ボストンが1万8320人だった。そういった小さな地域社会からワシントン、ジェファーソン、アダムズ、マディソン、フランクリンがおおよそ同時期に輩出されたのである。
 人間社会の適正規模を推測する方法は他にもある。人間は140メートルほど離れたところから近づいてくる人のだいたいの輪郭、衣類、性別、年齢、歩き方を見分けることができる。そう考えると、イタリアのサンマルコ広場やギリシャのアクロポリスのように、公共スペースとして成功している場所の最大寸法はほぼそれくらいである。ルネッサンスの建築家は最も高い建物でも、高さは広場の最も長い距離のおよそ3分の1にするべきだと考えた。だいたい15階建てである。

 このように地域社会を多過ぎることも少な過ぎることもない3〜6万人程度に保ち、その中心に学校など住民が集まる場所を1つ定めておくことで様々な利点が生まれる。しかし現代は産業革命後の発展により都市へ人口が集中し、地方の人口は減り続けバランスが崩れている。都市では中心部の人口減少と周辺地域の人口増加によってドーナツ化現象が起こり、都心と周辺地域の距離は拡大し、学生や社会人の移動距離は増し、日々の移動を激化させることとなった。
 このように現代は、人間社会の適正規模からは程遠いものとなってしまっているが、問題点はどれにあるというものではなく、解決策はこれまで述べてきたように人間としてどう生きるべきかを理解し、新たな仕組みを行うことにある。

○プラウト主義経済

 この新たな仕組みとは、自給自足と生活品の無償享受で自立した生活を送り、束縛されることなく直感的な活動が行え、環境破壊がなく、動植物の安全が守られ、すべてが調和した仕組みであるが、このような社会システムは1959年にインドの哲学者P.R.サーカーによって、プラウト主義経済として提唱されている。これは「Progressive Utilization Theory」の頭文字をとったもので、資本主義や共産主義に代わる新しい経済理論とされている。

 サーカーは人間には「物質」「知識」「精神」があり、その3つのバランスが重要であると説いた。その中で最も強調するのが精神で、社会が複雑化する中で人間が受けるストレスは強まるばかりで、多くの人々がそのような状態にある中、救える手段は無限の存在につながることしかないと述べている。

「全ての人間は幸福を求めている。苦しみを求めているものはいない。人間は食べ物やダンスに飽きることはあっても、幸福な状態に飽きることはない。すなわち人間は幸福を無限に追求しようとする。」

 動物はお腹がいっぱいになれば眠り、お腹が減ればエサを求めるが、自分が食べる以上のエサを得ようとはしない。動物には人間が持つような無限の欲求がない。ところが人間は無限の欲求を持っている。必要以上に穀物を生産し、必要以上に獲物を殺し、必要以上の富を築こうとする。これは人間というものが何らかの形で無限の存在とつながっていることが理由で、よって人間は無限の存在とつながることによって幸せを掴むことができると述べている。物質も知識も有限な存在で、それらをどれほどたくさん持ったとしても無限の幸せを掴むことはできない。無限なものは精神だけで、精神的な喜びを永続して得ることができれば、それを満たすことができる。それを可能とするのは天職への取り組みと、それを通じて行われる奉仕となる。
 資本主義国家では富豪や多国籍企業によって経済が支配され、一方、共産主義国家では中央政府による計画経済の為に地域的な需要は無視され、現代の世界経済は極めて不安定な状態にある。プラウトは世界連邦を樹立して人類の統合を目指すが、経済面では地域での自給自足を推進する。サーカーは地方分権の必要性を次のように強調している。

「私たちはこの世界のたとえ1つの生物、さらには1つの分子といえども無視することはできません。それゆえに産業を管理するにあたっては、地方分権を推進することが望ましいと言えます。ある特定の地域の産業を促進することによって、他の地域の貧困や失業を撲滅することはできません。」

 産業が利益目的で運営されると地方分権は地域間の経済摩擦を生み、社会調和の妨げになる。しかし地域の人々が自分達の生活品を製造する目的で産業を運営するならば、拡張主義に陥ることはない。プラウトでは人々に生活品を提供する為に製造されるので、利益を追求することも損失を被ることもない。そして地域産業は人々の需要に応じてそれぞれの役割が分担される。工場は地域の人々によって運営され、自分達の代表者を選出し、代表者がこれを管理することによって搾取のない民主的な労働環境を作り上げる。そして作業効率を高める新しい機械が導入された場合は、労働時間が短縮される。
 プラウトでは科学技術の進歩だけが人間を幸福にするものではないと考え、新しい発明がある度にそのマイナス面をチェックし、除去できる見通しが立たない限り利用しないという考えに立つ。よってマイナス面が完全に除去され採用される新発明は、人類にとって完全な進歩となる。
 このように地域の工場で地域に必要な生活品すべてを製造していくことになるが、その為に産業別の人口構成が一定の枠内におさまっている必要がある。その人口構成をサーカーは次のように提起している。

 ①地域の30〜40%の人々が、直接農業に従事すべきです。
 ②20%が農業前工業に従事すべきです。(斧、鍬など農業に必要なものを作る工業)
 ③20%が農業後工業に従事すべきです。(製粉工場、織布工業、ハーブ薬草工場など)
 ④10%が一般的な交易と商業に従事すべきです。
 ⑤10%が知的あるいはホワイトカラーの仕事に従事すべきです。
 ⑥非農業工業に従事する人々の割合は全体の人口の20〜30%の間に維持すべきです。(鉄鋼業や採石業など)

 農業従事者の割合が少なければ農業は軽視され、反対にその割合が大きいと農業以外の分野に重い負担がかかる。ある国の非農業工業に従事する人口の割合が20%以下の場合、その国は工業が未発達で人々の生活水準は高くならず、反対に過剰な工業化は人々の個人的、社会的、国民的な健康に影響を及ぼすばかりか、次第に心の悪化をもたらすなど、産業バランスの崩れが様々な問題を引き起こすとサーカーは指摘している。そしてこういったバランスの取れた地域から構成される社会を世界的に形成する為に、世界共通の理念が必要だと述べている。

「一見したところ地域的な違いがあるように見えても、人間社会の根本的な文化は皆同じです。その違いは外見的なものであって本質的なものではありません。世界全体が1つの文化を持っています。全人類の文化に共通している要素は常に奨励しなければなりませんが、外見上の違いは無視しなければなりません。」

 地域的な伝統や文化はその地域に住む人々のアイデンティティとして尊重されなければならない。例えば食事や衣服の違いはその地域の人々の環境への順応の結果生まれたものであり、世界主義の発展の妨げにはならない。世界中の人々がこの世界主義の理念に目覚め、調和して生きて行く為に満たされなければならない条件として、サーカーは次のような項目を挙げている。

■共通の哲学

 人間には肉体、精神、霊性という3つの側面がある。プラウトは地球主義を実現し、これを維持してゆくためには、この中でも特に霊性の面において人々が日常の意識を超越することによって、全人類の一体性を直感することが必要であると考え、人類をこの霊的な目覚めへと導く共通の哲学が必要だと主張する。

「霊性とはユートピア的理想ではなく、それがいかに世俗的であろうと毎日の実生活の中で実践し、認識できるものです。霊性とは進化と向上を意味し、迷信や悲観主義とは無縁のものです。すべてを調和させる寛大さのみが受け入れられるべきで、霊性の哲学は人と人との間に不自然に作りあげられた区別を排除し、全人類が兄弟姉妹であると説きます。」

■共通の憲法

 科学技術の進歩によって世界中の文化交流の機会が増え、これからもその傾向は強まる。しかし文化が交わるだけでは人類の連帯は生まれない。人類全体で世界連邦を樹立し、共通の憲法のもとにその連帯を維持して行く必要がある。現在の国連などはいわば各国の利益代表の集合体に過ぎず、そこでは超大国の利害関係が大きく対立するのみで、人類の代表機関とはなりえていない。世界の人々が国境によって分断されている限り国家間の対立は絶えることはなく、人類共存の夢が叶うことはない。サーカーは世界憲法に盛り込むべき内容として、次のことを述べている。

 地球上のすべての動植物の完全な安全が保障されること。精神性の実践、文化遺産、教育、固有の言語表現という4つの基本的な権利の保障。これらの権利の行使が「基本的な人間の価値」と衝突した時には、「基本的な人間の価値」を優先させなくてはならない。「基本的な人間の価値」とは例えば、病気で伏して死を待つばかりの老人と働き盛りの一国のリーダーとでは社会的な貢献度から見た評価に相違はあるが、まったく等しい基本的な人間の価値を持っている。そのような社会的立場がどうであれ、等しく尊重されるべきということである。

■共通の刑法

 現代社会では国ごとの善悪の概念に基づいて刑法が制定されているが、この善悪の概念は地域によって様々である。例えば世界には政府の政策に批判的であるために政治犯として捕らえられている人が多くいる。本当の意味で人類の連帯を実現する為には、こうした千差万別の刑法の代わりに正しい善悪の概念に基づいた世界共通の刑法を制定しなければならない。サーカーは世界共通の善悪の概念を次のように定義している。

「一般民衆の霊的、精神的、物質的成長を促す行為は善業であり、その妨げになるのは悪業です。」

■生活品の供給

 世界中のすべての人々が食料、医療、教育、住居といった人間が生活していくために欠かすことのできないものを享受できるようにすることは、地球主義を実現する上でどうしても必要なこととなる。一部の国では物資が有り余っているのに、人類の過半数がこれらの物資を得られずに苦しんでいる現状を放置したままでは、人類社会の一体化は期待できない。人々が全人類への同胞愛に目覚めて助け合わなければならない。

○共有財産と管理者

 食物の自給自足には土地が必要になるが、資本主義社会では余っている土地がほとんどないほど法的に誰かの所有物となっている。しかしそれは本来誰のものなのかを考える必要がある。サーカーは次のように述べている。

「もし私たちが大宇宙の相続財産の原則を受け入れるならば、外国人とそこの住民の土地という問題は生じえません。すべての天地万物は私たちの世襲の財産です。そして私たちは大宇宙社会のメンバーです。私たちは自分の好きなどこへでも移住し、定着する自由があります。土地の所有権は地主にも誰にもありません。所有権は骨折って働く人民にあるという間違った考えは紛争と混乱をもたらすだけです。」

 サーカーは天地万物の管理運用の権限は、精神性が高く、ふさわしい能力のある人に与えるべきと述べている。すべての人間がこの大宇宙の生み出した富や資源を享受する権利はあるが、すべての人がその富や資源を管理運用する権利をもつわけではない。分かりやすくいえばここに病気を治すすばらしい薬という富があるとする。すべての人が病気になった時、誰もがその薬の恩恵に預かる権利をもっている。しかし誰もがその薬を管理運用する権利をもっているわけではない。その薬を有効かつ本当に苦しんでいる人に適切に処方するモラルと能力をもった人物のみ、薬を管理運用する権利をもっている。政治の領域も含めて社会のすべての領域で、大宇宙の富をすべての人々のため最大限に有効活用できるような力とモラルを持った能力の高い人に、富の管理運用の権利を与えるべきだとサーカーは述べている。

「天地万物はすべての人の共有財産です。しかし権利を持つことと管理運営の権利をもつことは同一ではありません。人類の多数は従う人々であって指導者ではありませんから、管理運営の権利は選ばれた少数の人に与えられるべきです。生活のあらゆる領域、社会的、政治的、その他において知的かつ直観力を持つ労働者たちが、財産を管理運営し、他の人々の権利を保護するべきです。」

 民主主義の概念はこれまで人類が編み出した社会制度の中で、最も優れた制度として多くの人に賞賛されてきた。それにもかかわらず、現在の民主主義は腐敗と搾取に蝕まれている。サーカーは民主主義の原理そのものに反対しているわけではないが、民主主義の現状を見ると政治家の腐敗や民衆の政治に対する無関心など、数々の構造的欠陥が目につく。仮に政治家が民衆を代表しているとしても、民衆の意識が低ければ選ばれた代表者は必ずしも適切な指導者とは言えず、適切な選択肢が民衆に与えられているとも限らない。民主主義が正常に機能する為には、その社会の選挙権を持つ人々の過半数が正しい判断力と政治意識を持ち合わせている必要がある。この前提条件が満たされない限り、人々は正しい指導者を選出することは出来ず、民主主義は衆愚政治に陥る。民衆を啓蒙して民主主義の理想を実現する努力をすべきだとの考えもあるが、これはあまりにも時間が掛かりすぎる。そこでプラウトが提唱するのがサドヴィプラと呼ばれる道徳実践家(モラリスト)による政治である。サーカーはサドヴィプラについて次のように説明している。

「サドヴィプラは正義感が強く、正義に反する行ないに対していつでも戦いを挑む用意が出来ています。道徳の原理に従い、常に献身的な奉仕活動を行ない、悪と戦う用意が出来ている人、それがサドヴィプラです。」

 サドヴィプラとは人類の発展の為に献身的な奉仕が出来るような道徳の道に長けた人のことを指す。そして自分個人の利益よりも人類全体の幸福を優先できるような人だけが、サドヴィプラになる資格を持っている。彼等は軍人、知識人、商人、労働者などのいずれにも属さず、これら特定の階級が他の階級を搾取することがないように監視することが役割である。搾取された人々は自己の意識を高める機会を奪われ、その結果社会の進歩が阻まれるため、サドヴィプラはこのような状況を回避するために全力を尽くす。そして社会周期の転換期には民衆を指導し、社会がなるべく円滑に次の時代へと移行できるようにする。
 この道徳実践家の指導体制による独裁を危惧されるかもしれないが、サドヴィプラは道徳心が旺盛で、自己の利益よりも全体の利益を優先する性質が求められるため、彼等が腐敗することはありえない。現代の多くの政治家に見られる腐敗体質は、サドヴィプラの指導のもと排除されなければならない。
 これらサドヴィプラは監査委員会を設立し、特定の階級が他の階級を搾取することのないように社会を指導する。この委員会は立法権、司法権、行政権を直接保有することはないものの、憲法によって最高監視委員会としての実権が保証される。委員会の採決は常に委員全員によって行なわれ、特定の委員が特権を持つことはない。

○拡張プラウト主義の社会構造

 サーカーが提唱するプラウト主義経済では世界連邦を樹立することの必要性を強調しているが、ではここまで見てきた人間の本質的な在り方や現代の科学技術も加え、家庭から世界連邦までの拡張プラウト主義の社会構造を具体的に見ていく。常に下位の組織は上位の組織へ権利権限の一部を譲る関係になる。

1、自給自足を行う家庭
2、家庭が集まり構成される自治体  (現在の市町村に相当)
3、自治体が集まり構成される州   (現在の国に相当)
4、最上位に州を調整する世界連邦

 自治体、州、世界連邦には共通して総務、保健、製造、保安、地下、宇宙、航空、船舶の8つの組織が設置される。そして自治体と州にはそれらに加え自治が、世界連邦には大統領省と慈善省が設置される。各部局は名称の後に下から部、局、省と付け加えられる。自治体、州、世界連邦の各規模に応じて名前どおりの活動を行う。

【自治体】自治部、総務部、保健部、製造部、保安部、地下部、宇宙部、航空部、船舶部
【州】自治局、総務局、保健局、製造局、保安局、地下局、宇宙局、航空局、船舶局
【世界連邦】大統領省、連邦議会、慈善省、総務省、保健省、製造省、保安省、地下省、宇宙省、航空省、船舶省

「家庭」

 日々の暮らしには世界共通で次のような生活用品が必要となる。当然どれもが自然破壊がなく、最高品質で、再利用が可能なものであることが基本となる。自動車は必要な数を所有できるが、住居内に駐車スペースを作るため、所有台数が増えるほど住居スペースが減っていくことになる。

【食物と農業】
 約33m四方の土地で自然農(5人家族)

【住居関連】
 木組みで麻壁のドームハウスと地下住居、麻の外断熱、木製サッシの複層ガラス、全館空調システム、免震装置、地下室、地下式消火栓

【電力関係】
 太陽光発電、水力発電、蓄電池

【家電】
 ・通信 (携帯電話、パソコン、HDD、無線RAN、液晶テレビ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、マイク、スピーカー)
 ・移動 (電動自転車、電気バイク、電気自動車、ヘルメット)
 ・台所 (IH調理器、給湯器、冷蔵庫、炊飯器、脱穀機、精米機、圧搾機、電動ろくろ)
 ・衣類 (洗濯機、アイロン、ミシン)
 ・美容 (ドライヤー、ヘアアイロン)
 ・掃除 (掃除機)
 ・便所 (バイオトイレ、温水洗浄便座 ※温風乾燥、脱臭機能、乳児用補助便座付き)
 ・その他(時計、LED電球、スプリンクラー、小型消化ポンプ)

【日用品】
 ・洗浄 (マイクロバブル、ランドリーリング、石鹸、シャンプー、リンス、洗顔料、洗剤、柔軟剤(大豆由来など)、塩、歯磨き粉、重曹、明礬)
 ・洗濯 (洗濯用ネット、物干しハンガー、洗濯バサミ、物干しスタンド)・台所 (たわし、スポンジ、箸、皿、コップ、スプーン、フォーク、鍋、やかん、フライパン、包丁、まな板、流し台など)
 ・風呂 (ボディブラシ、洗面器、風呂ぶた、風呂マット、簀の子、鏡)
 ・便所 (トイレブラシ、スリッパ)
 ・掃除 (ほうき、ちりとり、モップ、雑巾、ホース)
 ・織物 (生地、ハンカチ、タオル、バスタオル)
 ・家具 (机、椅子、本棚、収納箱など)
 ・寝具 (ベッド、布団、枕、シーツなど)
 ・衣類 (衣服、靴、眼鏡、靴べら、姿見、裁縫道具、天然樟脳)
 ・顔  (歯ブラシ、剃刀、髭剃り、小ばさみ、リップクリーム、義歯用品)
 ・化粧 (口紅、ファンデーション、アイシャドウ、マスカラ、メイク落とし、化粧水、乳液、ヘアワックス、手鏡、櫛)
  ・工具 (スパナ、ドライバー、金づち、やすり、電動ドリル、はんだごて、鋸、ニッパー、ケーブルカッター、ネジ、釘)
 ・文房具(シャーペン、色芯、ボールペン、はさみ、カッター、定規、分度器、消しゴム、絵の具、のり)
 ・紙製品(和紙、画用紙)
 ・医療品(ハーブ、絆創膏、マスク、包帯、テープ、血圧計、体温計)
 ・生理用品(コンドーム、ナプキン、タンポン、軽失禁用品、布オムツ)

「自治体」

 自給自足を行う家庭が集まり自治体を構成する。拡張プラウト主義では3万人から5万人規模の自治体が多くなる。市民の交流や取り組みが行われる学校のような中心的施設は、多目的施設として自治体に建設される。多目的施設はドーム型に建てられた運営館、製造館、芸術館の3つの施設から構成され、その地下にも地下室が設けられ、地下駐車場と電車の駅も設置される。自治体周辺に歴史的建造物、寺院、神社仏閣などがある場合は、最寄の自治体が管理する。

■自治体での活動とルール

 自治体の多目的施設は主に自治体運営、製造、芸術活動などに利用され、入学や卒業という概念はなく、気づけば親や友達や近所の人に誘われ利用していることになる。多目的施設は24時間利用可能で、赤ちゃんから老人までの交流の場となる。その中で自分が何か興味のある事に出会えば、知人やインターネットからその情報を得て、自ら計画を立てて取り組む。また自分が作り出したものを他の人が利用できるよう展示室も設けられる。さらに宿泊施設も設け、他地域からの訪問者に地域で落ち着いた文化交流が行えるよう宿泊場所を提供する。そして自治体のウェブサイトでは部屋の利用状況の確認や告知などができ、内外の情報交換に使われる。

 多目的施設に限らず組織を形成する際は、いつでも参加でき、いつでもやめることができるよう開放的にする。もし組織を硬直化したものにしてしまえばしだいに権威化していき、人間関係が義務化する。義務化すると個人の好奇心や意欲は2次的なものとなる。こうなると直感的な行動が制限されてしまい、緊張、不安、欲求不満を生み出す結果につながり、最後は崩壊する。地域住民すべてが生徒となり、教える側に回ることにもなるが、誰もが次の基礎事項を守り、教えていく必要がある。

・人間は支配者ではなく自然の中に住まわせてもらっている存在として何事も判断する。
・自治体の許可なく自然の破壊、動物の殺傷を行ってはならない。
・好奇心に従い、天職を見つけ、社会に奉仕する。
・全て自己責任で行い、他者に迷惑をかけない。

 これらは平和と成長を促す普遍的な基礎事項であり、これらが破られる時、不調和、分裂、停滞、後退、悪循環に陥る。こういった基礎事項に加え、1度の失敗が命に関わる事柄の予備知識や性教育も家庭で教育する。家庭や自治体では子供にこの基礎事項を教育する必要があり、教える大人は自らの行動をもって示さなければならない。なぜなら子供は親や地域の人間の行動を見て育つからである。大人がいくら口で正しいことを説明しても、子供は大人の行動そのものを見て真似をしている。親も子供と同様に学んでいる段階であり、謙虚になって子供と共に学んでいく姿勢が必要となる。

 これまで世界には様々な才能を発揮し社会の発展に貢献してきた人物が大勢いるが、人間は誰でも自分だけの才能と人生の目的を持って生まれてきている。幼い時から秀でた才能を発揮する子どもや表舞台で大勢の人に喜びを与える人、社会に役立つ技術を発明する人、目立たず奉仕する人など様々で、そういった人物は自分だけの特別な才能を発揮して社会に貢献している。特別な才能とはつまり天職のことで、天職に取り組んでいるからこそ自分の能力が最大限に発揮され、人並み以上の貢献が可能となっている。そういった人物は人生で何らかの転機があって天職に出会うことになった。それは生まれて間もなく周囲の人から影響を受けて出会うこともあれば、青年、中年、老年になって出会うこともある。運という面もあるが、どういった形にしろ自分が大きく成長でき、人に喜ばれるのは天職に出会ったときとなる。その天職とは誰もが持っているもので、ただそれに出会うか出会わないかが人生の大きな差となる。つまり天職を自ら探し出せば誰でも人生を充実したものにすることができる。生まれてくる子供には何らかの才能があり、子供には自分の天職を探し出し、それを通して自分と社会に奉仕する務めがあることを教え、この人生において何を成す為に生まれてきたのかを探し出すよう仕向ける。このようにして人生で成すべきことが明確になれば、すべての出来事を前向きに捉えることができるようになり、より前向きに人生を送ることができる。

 天職を手にした人物の行動は、初心者の段階から通常とは異なる。スポーツなど運動に関することであれば、初心者の段階から周囲の人の目を引く程、動きに洗練されたものがある。知的な活動においても周囲の人間より、知識の吸収率が高く、成長のスピードが早い。芸術関係においても初期の作品から、何か目を惹くことが多い。そして天職は本人のやりたいことでもある。
 こういった視点を基本に他者の活動を見れば、その人物が天職を手にしたのかどうか見つけやすくなる。

■学習教育と子供会

 プラウトでは学校というものは存在せず、子供も大人も自分が学びたいと思ったことを好きな所で学ぶ。必要な施設がなければ自ら施設を構築するか設備の整った地域に赴く。自治体では誰もが学ぶ意欲が出た人のために学習教材をまとめておく。例えば読み、書き、計算など、それらを学びたいと子供や大人が求めたときに円滑に取り組めるよう教材をまとめておく。それらを図書館やウェブサイトを利用してまとめておくのかなどは各個人が判断し、それらを活用するのか自らの方法で行うのかも個人の判断となる。親や周囲の人間は個人の意思を尊重して学びは強制せず、不必要に他人と比べることや競争、順位付けなどは控え、不干渉に徹する。干渉するほど自立から遠ざかり、競争させれば劣等感や嫉妬心を植えつけることになり、やがて周囲にも悪影響を及ぼすことを理解する。学びや成長は本人の好奇心が原動力にならなければならない。
 学習スピードを高めるポイントは「実践に身を置くこと」と「その中でよく使われる技術や知識、そして好奇心を優先して取り組み、反復していくこと」である。こういったことを基本にしながら、親も子供と共に遊んで日々を過ごしていく。

 これらをより効果的に行っていくために各自治体の芸術館では、サドベリーバレー校のような先生がいる子供会を運営する。この組織は自治体教育の入り口の役目であり、親は子供をそこへ預けてもよく、子供会の先生は子供と色々なことをして遊びながら彼らの好奇心や得意分野を見つけ、子供の得意分野にあった専門クラスへ紹介する役目も担う。そうすることにより多目的施設の芸術館では様々なクラスが開かれ、街の活動が活発化する。

■子育てから生涯学習の流れ(目安)

0歳〜約5歳
 子供を産んだ後、5歳くらいまでは親が中心となって基本的な教育をしながら多目的施設の芸術館の子供会へ連れていく。芸術館が遠ければバスで行くことにもなる。周囲の友人全員に自由な時間があるので、助け合いも行われやすい。

約6歳頃〜
 多目的施設へ自分で通うようになる。そこには子供会があったり、好きなことをしている人達がいてたくさんのクラスがある。誰もがそこで年齢に関係なく、自分の興味あることをしているクラスに参加するか、もしくは自分で作る。
 そして好奇心に沿って活動していると、やがて天職・適職レベルのものごとに出会う。そうすると勉強が自主的になり、本人に必要な知識・技術を自ら学び取るようになる。周囲には教えてくれる友人や先輩もいる。

天職発見3年目
 意欲的に天職に取り組むことを3年続ければ、技術・知識が非常に高くなり、自分のスタイルを築き、他者が簡単には真似できないレベルになっている。3年間も自分の好きなことを夢中になって追求してきたことにより、この時点で精神的にも一定の満足感を得ていることが多い。よって自分だけでなく他者にも喜んでほしい、幸せになってほしいという感情が芽生え、奉仕することが多くなる。

天職発見3年〜15年
 天職を手にすると、意欲的に、高い集中力で、深く物事を考えることが継続される。その継続で起こることは、人間の本質や物事の道理・真理に気づき始めるということである。長く継続すればするほど、気づきは多くなる。よって思慮(しりょ)深くなり、人格・精神性も向上していく。
 また人によっては、この時期に挫折を経験することもある。それは非常に辛い時間で、生きていくことが困難なほど気持ちが暗くなる人も多い。その時間に耐えながら地道に勉強を続けていくと、気づけば人間的に大きく成長している。この期間が3年ほど続いたという人から15年ほど続いたという人まで様々。

 精神性が高くなると、人は他者の幸せのために活動したいと考える。現代ではプロレベルに達した人物が、そこまで成長させてもらったことやお世話になった人々に「恩返しをしたい」と言って何かしらの活動をすることがあるが、このセリフは天職を追求してきた人物の特徴的な一言である。
 天職発見直後から人の幸せのために活動している精神性の高い人物もいるが、共通していることは、精神性が高いと「他者の幸せが自分の幸せ」と考えることである。

 天職発見3年〜15年の間に、短期・中期・長期の試練や挫折に直面する人物、天職に飽きて他の天職を見つける人物、複数の天職を同時に持つ人物まで様々に存在する。そのすべての人が活動を継続する中で他者に奉仕も行い、精神性が高まっていき、やがて人格者となって完全に近い存在になっていく。これが教育の基本的な流れであり、人生が終わる瞬間まで続いていく。

■退屈と創造力

 大人も子供も退屈という感覚は耐えがたく、退屈を感じれば何かを始めて気を紛らわせようとする。ところがこの退屈が人間の創造力向上にとって重要なものであり、子供の教育としても大人の創造的な活動においても重要となる。ある心理士の考察では、子供に対して親がゲーム機器などをあまり与えないほうが遊びの天才になっていることが多いという観察結果がある。親が何でも買い与えると子供は自分で退屈をしのぐ創意工夫をしなくなり、それによって主体性や創造性を奪ってしまう結果につながっているというもので、こういったことは現代の大人にも当てはまることがある。現在の貨幣社会に生きていると、何かを始めようとした時や新しいものを生み出そうとした時に、外部から何か新しい道具を購入して生み出そうとすることが多く見られる。この行動自体は状況にもより一概に悪いとは言えないが、購入するという行為はあまり頭を使わず創造力を働かせずに行う行動なので、結局物事の考えに深みが生まれない。拡張プラウト主義で奨めるのは、退屈という時間はアイデアが浮かぶ一つ前の段階であり、まずその耐えがたい退屈に浸り、次に心に湧き上がってくる直感に従うということである。現在の社会では退屈して何もしないでいると利益につながらないと考えられることが多いが、この退屈という時間が自身を内面から向上させるものであり、深く新しいアイデアを得られる時間であることが多い。よって自分自身も周囲の人間も退屈そうにしている人間を見れば、何か大きな成長を遂げようとしている蛹(さなぎ)の時間を過ごしているものだと思って、干渉せずに接することが重要である。

■子供の教育と接し方

 現在では子供を怒鳴ったり殴ったりすることによってしつけが行われることもあるが、怒ることは恐怖と混乱を与えるだけで問題の根本的解決にならず、子供にも理論的に説明し理解を促す必要がある。物事を学ぶには、失敗した経験と正しい知識を比較することによって自分の中で答えが確立されるからである。「怒られないようにしなければならない」と子供が考えるようになると正しい価値基準を失い、積極性も失い、正直さも失う。そして大人になれば自分の子供に対して親からされたことを同じように行い、悪循環に陥る。子供が2〜3歳頃になり自我が芽生え始めれば、1人の自立した人間として生きるよう徐々に仕向けていき、過干渉は控える。

 人間は生まれつき「性格が優しい」「物静か」「活発」「好奇心旺盛」などの個性を持っているが、誰もが自分の個性は無自覚の状態で生まれてくる。自分がどういった人物かわからないまま日々を過ごしていき、様々な体験や失敗を通じて自分を認識し始める。例えば活発に走り回る子供が石に躓いてこければ、次からは石に気をつけて走る。うるさいほど元気な子供が図書館の静けさを体験すると、自分には外で遊んでいるほうが向いていると自己認識する。優しい性格の子供が他人に嫌がらせをすると自分の中に違和感を感じ、これは自分には合わない行動だと感じて次からは行わないようになる。このようにして様々な失敗や体験を重ねることで、自分はどういった人物なのか、どのように生きていくのが良いのかを学び、自己が形成されていく。よって子供が失敗したときに周囲の人間は「今1つのことを学んでいる」と考え、怒らず干渉しないようにする。もし子供が走り回ってこけた場合、その痛みを経験することで気をつけて走るようになり、自分で立ち上がることで自己解決の方法と自己責任の意味を知る。つまり親が抱き起こすのではなく、自分で起き上がるまで見ているという姿勢が必要になる。

 このようにして親は寛大になり、子供が望むことには自己責任で挑戦させる。そして失敗や挫折をして助けを求めてきた場合はいつでも迎え入れる。失敗しても良いという安心感を与えることは、子供に限らず大人の場合にも意味がある。物事に挑戦する際に失敗しても良いという安心感がある人間は、萎縮することなく挑戦できるので良い結果が出やすく、長期的に見れば大きく成長する。誰でも自ら取り組もうと決めたことは成功させようと最善を尽くすもので、取り組み方のコツを掴むまで何度も挑戦できる環境を与える。1度コツを掴むと失敗することのほうが難しくなる。このようにして育った子供は幼くして特技に溢れ、自ら考える力を持ち、様々な体験しているので他人の感情も理解でき、自信にも溢れるため精神的に強く、内面が強くなるので人に優しくなり、誰かをいじめることも、見下すことも、言い訳をすることもなくなる。


■いじめを起こさないためのポイント

 現代社会でいじめが起きている場所はどこかと考えてみると多くの場合、学校、職場、家庭が大半を占める。これらに共通することは「一定時間、強制的に気の合わない人と同じ空間にいなければならない」ということである。人間には生理的にどうしても合わない性格の人物が存在するのは事実である。しかし現在の社会では学校を簡単に変えることはできず、次の職が見つかるかもわからないので簡単に職場を変えるわけにはいかず、家を2つ3つ持つ家庭は少ないので家庭内のいじめも簡単に回避することはできない。

 しかし拡張プラウト主義の世界では現在のような1日の大半を気の合わない人と過ごさなければならない学校や職場は存在せず、毎日8時間も一緒にいるようなことは起こらない。家庭での問題も自治体に言えば新しい住居が提供されるので、家庭内のいじめ問題の回避は容易にできる。拡張プラウト主義において大事なことは、親や周囲の人間は子供であれ大人であれ本人がしたくないと言えば無理に続けさせず、好奇心に沿ってたくさんのことに挑戦させることである。嫌なことがあった時にそれを忍耐強く続けるべきなのか、それとも回避すべきなのかは本人の直感に従って決めさせるべきで、そういったことの積み重ねが自己責任と自己解決ができる能力を育ませていく。現在の社会でよく見受けられる光景として、一度始めた習い事を親が簡単には止めさせないということがある。子供がやめたいと言えば「自分が始めたいと言い出したのだから最後まで続けなさい」と言って止めさせない光景である。多くは親の愛情であるが反面「簡単に諦めるクセがついてしまうかもしれない」という心配がよぎっている事がある。しかし実際人間は好奇心のあるものに巡り会うと、親が「するな」と言っても手に取って始めてしまうものである。また特に子供の場合、一時的に「やりたくない」と言い出しても、本人に好奇心があれば「やっぱりやりたい」と少し時間をあけると戻ってくることが多い。

 拡張プラウト主義では、親や周囲は誰に対しても強制せず束縛せず、寛大な態度で相手の好奇心を優先し見守る。そして自治体は狭い空間に長期間同じ人物といなければならないような場をできるだけ避ける。こういったことによって人間関係で生まれるストレスが大幅になくなり、いじめが起こることはほとんどなくなる。
 そして天職を身につけた人物は自分が満たされるので劣等感を持つ人物も減り、また苦労して自分を高めたので、人の辛さに共感する能力も高まり、いじめをするような人格になりにくくなる。

■性行為、結婚、子作り、性教育

 性行為について重要なことは、両者が純粋に相手に楽しんでもらおうとしているかということである。反対に自分の性欲を満たすための自己中心的な性行為は、相手を貶(おとし)める行為であり、後々何かしらの問題が起こる。

 結婚について、拡張プラウト主義の自治体では婚姻届などは存在せず、結婚するかどうかは両者の合意のみである。結婚をして子供を作るのか、それとも結婚せずに子供を作るのかは2人に任せられる。子供を作ると決意したのであればまず自治体にいる医師の診察を受け、遺伝的適合性をチェックし、常に安全に配慮した形で子作りを行う。

 そして生まれた子供を自分達で育てることが基本となるが、やがては自治体の市民全体で子育てするようにもなる。よって自治体には子育ての専門家が配置されることにもなるが、そこに任せるのかは自由である。重要なことは、子供が幼少期から愛情を受けて育つ環境があるかどうかで、それは親だけではなく周辺の人々からも必要である。

 子供が生まれれば両親の名前と本人の名前を自治体へ報告し登録する。これは市民数を自治体が把握する意味合いがあるが、将来的に近親相姦に陥らないようにするためでもある。自治体へは報告以外の手続きは必要ない。名前も名字、名前、ミドルネームのようなものが必要なわけでなく、名前だけでも問題はない。また夫婦別姓も認められ、結婚や離婚の際の報告は必要なく、両者の間での合意のみとなる。
 恋人や夫婦など異性との関係は常に自己責任であり、後々問題となるような心配事があるのであれば、事前に話し合って両者が納得していなければならない。目の前の快楽や喜びに流されず大人になり、思慮深くならなくてはならない。

 出産については、女性は12歳前後で生理が始まり妊娠が可能になるが、現在の社会ではその10年後の22歳での出産でも早いと見られる傾向がある。これには経済力などの問題が存在するが、プラウトでは地域でも子供を育てるという考え方になるため、女性に体力があるうちの10代での出産も行う事ができ、その後の医療費の心配はなく、子供を何人作ろうが教育費がかかることもなく、住居も家族の人数に見合ったものが提供される。彼らを育てることも自分達だけで行わなければならないと考える必要はなく、自治体全体で育て、誰もが自分の子供として接する。街の人付き合いは活発なものとなり、孤独死する老人もいなくなる。生活に関するあらゆることが無償で享受できるので、年金など金銭に関係する心配事はなくなり、誰もが将来に対して安心感を持って過ごせる。つまりプラウトでは経済力の有無に関係なく子を持つことができ、子供のその後の生活の心配もなくなる。

 こういった考え方が基本となり、性教育も家庭内もしくは自治体内でが基本となる。子供は成長する過程でどのように赤ちゃんができるのか親に聞く瞬間があるが、子供に探究心が出てきたときには親が説明したり、インターネットや本でいつでも説明できる動画を自治体で作っておく。

■芸術活動

 プラウトでは余暇が増えるので誰もが芸術活動に携わるようになり、それにより人間全体の感性が高まる。様々な事柄で独自の道が追求され始めると、表現の幅や質は現在よりも格段に向上する。同じ料理でも盛り付け方や器のデザインに気品があると味も美味しく感じるように、質が良く細部まで気配りされたものが増えれば、それに接する人々も一層の喜びを感じる。拡張プラウト主義ではすべての物が美しく、個性的で、無駄がなく、汚染もない調和された表現で溢れ、そういった物に囲まれて人々は生活をおくる。

 音楽や踊りもより自由で幅広いものへと進化する。アフリカ、ヨーロッパ、アジア、南米など、どの国の民俗音楽にも必ずそれに合わせた踊りがあり、それは何千年も前から続いている。そして現在はジャズ、フラメンコ、サンバ、レゲエ、盆踊り、ディスコ、デジタルのダンスミュージックと、時を経ても踊ることは続けられている。つまり踊ることは人間の普遍的な表現活動の1つであり、余暇が増え、誰もが喜びを感じて過ごすプラウトでは、ダンスも表現活動のひとつとしてより活発になっていく。

 音楽などでは現在様々なジャンルのものが生まれているが、拡張プラウト主義ではそういったジャンル分けはなくなる。ジャンルというものは創作活動が金銭を得る手段となっている貨幣社会においてのみ存在する。視聴者が購入しそうな音楽を作ろうと思えば、過去に実績があり視聴者に馴染みのある音楽が参考となる。その連続がジャンルを生み出す。貨幣社会では誰かが購入しなければ生活も創作活動もおぼつかなくなるが、拡張プラウト主義では自分の表現を気に入る利用者がいなくても創作活動が続けられるので純粋に自分の個性を探求でき、よって個性そのものがひとつのジャンルとなる。つまりこれまでの「こうしなければならない」「売れない」と常識的に考えていた要素がなくなり、ただ自分は何を表現したいのかという要素が大きな割合を占める。それにより誰もが常識に囚われない純粋な直感を得始め、音楽、絵画、踊りなど芸術に関するあらゆることが直感的に表現される。直感的に表現するとは思いつきのようなものともいえるが、つまり一瞬先の予測がつかない表現方法が多くなる。これは現在で言えば現代音楽、抽象絵画、前衛芸術、即興表現、コンテンポラリーダンスなどが近く、精神的な遊びの方向へと向かう。ただこれは大きな方向性であって、現在ある表現や理論的なものも変化し続け、すべては全方向に進化する。

 また化粧も女性だけのものではなくなる。現在でも世界の様々な民族衣装や化粧、日本舞踊における化粧、音楽などのアーティストのメイク、スポーツの応援団のメイクなど、様々な芸術や遊びの場では男性が化粧を行うこともあるが、拡張プラウト主義では誰もが芸術家のようになって日々を過ごしているので、個性の表現方法として男性の化粧も一般化していく。またこういったことは衣服にも当てはまり、現在では奇抜な服装をすれば周囲から浮いてしまうことが多いが、プラウトでは個性的な服装が多くなり、現在の常識的価値観は大きく変化する。

■多目的施設

 こういった活動が行われるドーム型の多目的施設も太陽光発電などによって自家発電し、地震や竜巻など自然災害を想定したものにする。自治体内の最も高い建築物については、高層ビルのように人々に緊張を与える建物は人々の心理にマイナスである。よって原則として自治体の取り組みとしてよほど必要でない限り建物は3階建てまでとし、樹木よりも低くして、どこまでも遠くが見渡せる景観を壊さぬよう努める。
 多目的施設は自治体の中心に建設し、住居をその中心から円形に広がるように配置して街を構築していく。多目的施設を中心に据えることで、すべての人々が円形の中央に体を向け、隣にいる人々はみな、同一の対象へと向かう仲間として共感と協調性が意識される。

 多目的施設には図書館、展示室、演芸場、病院、宿泊施設、消防警察、IT電力水道管理室、工場、斎場(火葬炉、動物炉)などを併設する。そして家庭で使う食器を作るための電気窯と電動ろくろの設備を備えた陶芸室も併設し、粘土も地域で採集して市民は食器を自作する。市民は満たされた生活を送るので警察の必要性はなくなるが、拡張プラウト主義初期は自治体が警察の有無を地域事情から判断する。
 そして地域情報を管理する9つの部を設置する。9つの部は、自治部、総務部、保健部、製造部、保安部、地下部、宇宙部、航空部、船舶部となる。宇宙部、航空部、船舶部は地域によって設置されないこともある。各部は次の施設を管理する。

・自治部 知事、副知事、役員
・総務部 活動部屋、宿泊施設、展示室、図書館、演芸場、斎場(火葬炉、動物炉)
・保健部 病院、福祉関係
・製造部 工場、陶芸室、ウェブサイト
・保安部 消防警察
・地下部 地下鉄(エアロトレイン)、IT電力水道管理室
・宇宙部 人工衛星
・航空部 空港、航空機、ヘリコプター
・船舶部 港、船

 そしてこれらの施設を運営館、芸術館、製造館の3つに分ける。まず運営館には各部、IT電力水道管理室、病院、消防警察、宿泊施設、斎場など自治体を運営する施設が集まる。芸術館には活動部屋、演芸場、展示室、図書館など芸術活動を行う施設が集まる。製造館は各工場設備や陶芸室など製造に関する施設が集まる。

 そして運営館、芸術館、製造館へはそれぞれ150m以内で行けるように位置する。これにより多目的施設を利用する市民の交流はより活発になり、これ以上の距離になれば移動距離が増し、精神的な疲労感を感じることになる。また、各家庭から多目的施設までの距離は約2km以内を目安にしておくと、徒歩で通うことに大きな苦労を感じることがなくなり、自治体の活性化に繋がる。

 さらにこの多目的施設の地下に地下駐車場を作る。車やバイクで多目的施設へ訪れる人の為の駐車場としての役割で、地下に作ることで地上の自然破壊を無くす。


■工場

 製造館の工場では基本として次の製品を製造することになる。

【住居関連】
 木組みで麻壁のドームハウスと地下住居、麻の外断熱、木製サッシの複層ガラス、全館空調システム、免震装置、地下室、地下式消火栓

【電力関係】
 太陽光発電、水力発電、蓄電池

【家電】
 ・通信 (携帯電話、パソコン、HDD、無線RAN、液晶テレビ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、マイク、スピーカー)
 ・移動 (電動自転車、電気バイク、電気自動車、ヘルメット)
 ・台所 (IH調理器、給湯器、冷蔵庫、炊飯器、脱穀機、精米機、圧搾機、電動ろくろ)
 ・衣類 (洗濯機、アイロン、ミシン)
 ・美容 (ドライヤー、ヘアアイロン)
 ・掃除 (掃除機)
 ・便所 (バイオトイレ、温水洗浄便座 ※温風乾燥、脱臭機能、乳児用補助便座付き)
 ・その他(時計、LED電球、スプリンクラー、小型消化ポンプ)

【日用品】
 ・洗浄 (マイクロバブル、ランドリーリング、石鹸、シャンプー、リンス、洗顔料、洗剤、柔軟剤(大豆由来など)、塩、歯磨き粉、重曹、明礬)
 ・洗濯 (洗濯用ネット、物干しハンガー、洗濯バサミ、物干しスタンド)・台所 (たわし、スポンジ、箸、皿、コップ、スプーン、フォーク、鍋、やかん、フライパン、包丁、まな板、流し台など)
 ・風呂 (ボディブラシ、洗面器、風呂ぶた、風呂マット、簀の子、鏡)
 ・便所 (トイレブラシ、スリッパ)
 ・掃除 (ほうき、ちりとり、モップ、雑巾、ホース)
 ・織物 (生地、ハンカチ、タオル、バスタオル)
 ・家具 (机、椅子、本棚、収納箱など)
 ・寝具 (ベッド、布団、枕、シーツなど)
 ・衣類 (衣服、靴、眼鏡、靴べら、姿見、裁縫道具、天然樟脳)
 ・顔  (歯ブラシ、剃刀、髭剃り、小ばさみ、リップクリーム、義歯用品)
 ・化粧 (口紅、ファンデーション、アイシャドウ、マスカラ、メイク落とし、化粧水、乳液、ヘアワックス、手鏡、櫛)
  ・工具 (スパナ、ドライバー、金づち、やすり、電動ドリル、はんだごて、鋸、ニッパー、ケーブルカッター、ネジ、釘)
 ・文房具(シャーペン、色芯、ボールペン、はさみ、カッター、定規、分度器、消しゴム、絵の具、のり)
 ・紙製品(和紙、画用紙)
 ・医療品(ハーブ、絆創膏、マスク、包帯、テープ、血圧計、体温計)
 ・生理用品(コンドーム、ナプキン、タンポン、軽失禁用品、布オムツ)

【自治体規模】
 運営館、芸術館、製造館、地下鉄(エアロトレイン)、航空機、船舶、空港、港湾、コンピューターネットワーク、医療・福祉器具、救急車、消防車、ダンプカーやショベルカーなど建設機械、植物燃料、糸、生地、塩など食物関係

 各製品には最先端技術が使われ、無公害で、再利用される。これらを製造するため製造館には次の設備が必要になる。

 バイオ燃料工場、紡績工場、織布工場、ヘンプ繊維加工工場、ヘンププラスチック加工工場、コンクリート・アスファルト工場、ゴム・タイヤ加工工場、ガラス工場、鉄工場、家電工場、自動車工場、単車・電動自転車工場、石鹸工場、医薬品工場、飛行機工場、船舶工場、エアロトレイン工場、電気窯、電気炉、高炉、陶芸室、材木集積場

 これら工場から生まれる排水はすべて無害であることが義務となり、川へは流さず、家庭排水と同様に地面から地中へと浸透させていく。火事や災害時、建物や機械の内外部はすすなどによって汚染され、その中にはさび等の原因となる有害物質が含まれているが、それらは洗浄すればほとんどが再利用が可能である。こういったことは水に弱い電子基板等の精密機械にも当てはまるが、現在はドイツの復旧専門会社がそういった汚染を除去する技術を持ち合わせており、物によっては2週間程で再び使えるようになる。煙や消火剤にまみれた精密機器はドライアイスを高圧力で吹き付け丸洗いを行い、壁にこびりついたすすや燃えカスの臭いは特殊な除去フィルムではがし出す。現在の日本では精密機械が水に濡れたりすれば交換することが第一に浮かぶことが多いが、拡張プラウト主義では修理してもう一度使うことが基本となる。こういった技術も自治体の製造館で取り扱われる。
 工場の設計は新しい技術が開発される度に変更されていく。それはあくまで自治体で決めて進めていく事だが、工場設計の基本ルールは次の通りである。

工場と製造品のルール
・自然環境の破壊や汚染がないこと。
・世界中で産出する鉱物資源を原料とした設計とし、地元地域の資源だけですべての生活必需品を作り出す設計。
・プラスチック部分はヘンプを使用する。
・再利用できる素材の使用と、それを前提に単一素材化できる設計。
・世界標準規格を使用して(なることを前提として)設計する。
・初心者のためにボタン一つで資源から製品までを自動で一気に作り出す設計と、熟練者用の資源から原材料、原材料から製品を作り出す両方のレベルに対応した工場設備の設 計。
・初心者用の自動製造品に対しては、一つの自治体では生活必需品の基本デザインを決める。その場合デザインはシンプルでスタイリッシュなものにしておき、市民が完成品に対して色付けなど装飾しやすい状態にしておく。
・技術革新があり部分的に新たな設備と交換する際に、簡単にそれが行える設計。
・女性も製造に参加しやすいおしゃれな工場デザイン。
・工場設備から工場設備が作り出せる設計にし、工場設備自体を輸送できる設計にする。これは他地域の自治体構築や災害時の復興支援が迅速に行えるように。

 こういった工場から作り出される製造品には「性能」と「デザイン」という2つの側面がある。性能面に関しては、すべての人間のアイデアを結集して1つの高性能なものを作り出す。デザインは各個人の好みに合わせて作る。これによって現在の社会のように同じような製品を何百種類も作る必要はなくなる。

 上記のルールの中の世界標準規格とは、現在では電圧や電源プラグなど様々な分野で国ごとに異なった規格の物が使用されているが、拡張プラウト主義では世界中の州が同じ規格に統一する。それによりどこにいても部品の交換が容易になる。家電などのプラグはすべてアース付きコンセントに統一し、指し込み口もアース付きに統一する。電圧によってプラグの形状も異なるが、高い電圧に対応したプラグに形状を統一する。また差し込み口は埋め込み型で住居設計を進める。

 これらのルールに従い、製造館では製品の修理や廃家電を原料に戻して再利用することも行われる。製品は単一素材化しやすい設計が前提となるので、分解して鉄の部分は電気炉で溶かされる。そして自治体で鉄鉱石など新たに天然資源を採掘する必要があると判断した場合に限り高炉が使用される。

 工場では製造を機械化してボタン一つで作り出すか、職人や住民が設備を利用して製品を1つずつ作り出すかの2つに分かれる。よって3Dプリンタの使用が、この場合最も適している。3Dプリンタは、パソコンの画面上に描いた3DイメージやCT・MRI等のスキャナーで撮影した3次元のデータをそのまま立体的に造形できるマシンである。よって将来的に様々なデザイナーが設計したデータはオンライン上で共有でき、市民誰もが好きなデザインを選ぶことが可能となる。上記に記した生活品のほとんどをすでに3Dプリンタで作ることができ、3Dプリンタの原料にヘンププラスチックなど使用できるようになれば、資源の枯渇に困らず、常に再利用できる。

 アメリカのローカルモーターズが、44時間で電気自動車を3Dプリントすることにも成功している。またマウンテンバイクのフレーム自体を3Dプリントで作ることや、パーツは3Dプリンターで作った電動のバイクも製造可能となっている。この電動バイクは1回の充電で約150Km移動可能となっている。またプラスチックだけでなくガラスや金属用の3Dプリンタも数多く存在している。

 ■製造品の資源

 物を生産する際はすべて再利用可能ということが前提になるが、あらゆる製品に使用されている石油からのプラスチックは日常生活を便利にしている反面、化石資源の石油を消費している問題や野外に捨てられた物は分解されずそのままの形で残り、野生生物に害を及ぼすなどの問題を起こしている。こういった問題を解決する方法として、大麻の茎からプラスチックを作る方法がある。大麻は英語でヘンプと呼ばれ、ヘンププラスチックは土の中で自然分解され、燃やしても自然に還る天然素材となっている。これは衣食住の全般にわたり様々な恩恵をもたらす。

 例えばヘンプ断熱材は天然の苦み質を含み、また蛋白質を含まないため虫やネズミの害を受けず、しかも防腐、防かび、防虫性があるのが特徴で、麻繊維がほとんど吸水性をもたないので結露が起こっても吸湿しにくく速く乾く。また吸音効果も高く、高級車の防音・断熱材としても採用されている。ヘンプそのものは捨てるところのない植物で、種子は食用となりタンパク質や脂肪が豊富となっている。茎の芯は建材や内装材、プラスチックの原料などに利用できる。また茎からとれる丈夫な繊維で糸や布、劣化しにくい紙を作れ、木材の代替資源となる。また茎は竹のように多孔質でしっかり呼吸するため、臭いや湿気を吸着する。また断熱性があり、冬は暖かく夏は涼しい環境を作り出すことができるので建築資材に適している。日本の城の城壁や町屋の白壁などの漆喰壁は、昔から石灰、フノリ(海藻の糊)、麻スサ(麻の繊維くず)を原料とし、それらを練り合わせて何回も塗ることで、日本の気候風土に耐えられる壁を作ってきた。さらに茎の皮は優れた繊維になり、自動車用内装材、ひも、ロープ、住宅用断熱材、布、衣料品などに利用できる。またヘンプの穂と葉には優れた薬効成分があり、鎮痛、ぜんそく、睡眠障害、緑内障、神経性難病、がん治療の副作用、うつ病、眼病や皮膚炎の治療などに効果がある。

 大麻は約100日で3〜4mに成長し、栽培には手間がかからず、連作が可能でどんな環境でも育つ植物であり、利用価値が高く、衣類、建材、食品、化粧品、紙、燃料、薬品、プラスチックなど、人間の生活において必要な製品のほとんどに利用することができる。

 大麻は麻薬や大麻取締法という響きなどからマイナスイメージを持たれているが、大麻そのものは日本の伝統文化の中で一般的に栽培され長く利用されてきた文化的な植物で、それが戦後GHQによって強制的に禁じられ現在に至っている。しかしプラウトでは個人に対するストレスや緊張がなくなり、反対に誰もが好きなことに取り組んでいるので、無限に精神的な喜びを得て過ごしている。よって吸引などに対して自制心が働き、飲酒なども含め自分で自分をコントロールできない状態にすることは人格の高まりとともに敬遠される。拡張プラウト主義では大麻の本質的な利用価値に注目し使用していくことで、循環型社会の構築に大きな役割を担う資源となる。

 このようにしてあらゆる製品に使用されるプラスチック部分はヘンププラスチックが使用されることになるが、麻はどこでも栽培が容易なので、すべての部材は出来る限りヘンププラスチックを優先して使用する。そしてヘンププラスチックでは必要を満たせない部材は鉱物などから作り出す。鉱物の優先順位は鉄、銅、鉛、亜鉛、アルミニウムなど比較的埋蔵量が多く、広範囲で採取可能なベースメタルを優先して使用する。そして金、銀、クロム、ニッケル、アンチモン、チタン、タングステン、リチウム、コルタンなど、埋蔵量の少ないレアメタルの使用は検討する必要がある。ただ近年、日本では微生物を使ってレアメタルのパラジウムだけを抽出することに成功した例があり、こういった技術がさらに発展していけばレアメタルの再利用が基本となっていく。

 鉱山の坑道は必要最低限の数と大きさにするために、出来るだけ複数の自治体で1つの鉱山を共有する。使用されなくなった坑道は埋め戻す。自治体の製造部と総務部が中心となり鉱物資源の埋蔵量を調べ、近隣自治体と話し合い数百年先までの使用計画を立てる。製品は再利用が基本なので採集した原料は何度も使われ、市民に必需品が行き渡った時点から原料採集の必要性は最小限に抑えられ、資源が枯渇することはなくなる。そして科学技術が進むにつれて、すべての材料は単一素材よりも優れた複合材料へと移行していく。

■PROUT Villageと地域開発

 PROUT Villageの建設位置は、地震、津波、地すべりなど自然災害が起きることを想定して、危険度が高い場所は避ける。海沿いと川沿いは津波で浸水する。数百年前の地震の教訓として石碑や文献が津波のやってくる位置を示していることがあるので、それも参考に決定する。

 自治体であるPROUT Villageの総務部は自治体人口や労働人口バランスの把握、伝統文化の継承などを管理する。結婚の年齢制限はなくなり、同性結婚も自由になる。引越しの際は総務部などへ住居の引継ぎを行う。必要な届出類は口頭やコンピューターで伝えるだけにし、細かな書類は省く。

 市民は住居を買うのではなく自治体の総務部から無償提供され、居住者はそれを何世代にもわたり借り受け、住人がいなくなれば再び自治体が預かる。住居は6人家族が住める大きさのものを統一して建設する。そのために地上部分は直径13mのドームハウス、地下部分は直径14mの円筒形になり、敷地は直径16mの円である。

 拡張プラウト主義の住居の配置は現代のような直線的な配列はやめ、円を基本としたフラワーオブライフという模様で住居を配置していく。このフラワーオブライフは黄金螺旋トーラスの平面図であり、宇宙の誕生から永続する自然はすべてこの形でデザインされている。
 黄金螺旋とは黄金比の割合で回転しながら上昇する円である。トーラスは内側から螺旋状に上昇し、外側から下降して、再び内側から螺旋状に上昇する。このトーラスを真上から見た時、渦が黄金比の割合で黄金螺旋を描く。黄金比は最も美しい比とされ、自然の中や、人間の各部位、人間が作る芸術、製品の中にも取り入れられている。
 
 宇宙は「黄金螺旋(らせん)トーラス」で創造されているが、そのトーラスを平面で表すと、フラワーオブライフという模様になる。下記の画像のように、この「トーラスとベクトル平行体」を少し展開して、四面体ともいうピラミッドを計64個置く。それぞれのピラミッドを取り巻くトロイドのエネルギーを表す球体を置いてピラミッドを除くとマトリクスができる。これはフラワーオブライフ(Flower of Life)と呼ばれる神聖幾何学(しんせいきかがく)である。


 人間の意識は常に空間によって影響され、例えば四角の机のように人と人とが向かい合い、直線的な関係にある時、相手と自分という意識が形成されやすい。だが人と人とが円形に集まると隣人との境目が曖昧になり、ここからここまでという区切られた辺が消え、自分の敷地という感覚が消える。そしてすべての人々が円形の中央に体を向けるとき、隣に座る人々はみな、同一の対象へと向かう共感する人として意識され、共同する意識が生まれやすい。
 こういった理由もあり、住居は円を基本として配置し、また太陽光がどの住居にも届くように、次の図のように配置していく。

 このPROUT Villageと呼ぶ自治体が、一つの街の単位である。まず住居が円形で作られ、次に6戸の住居が円形に配置され、その円が7個集まり新たな円を作りというように、すべては円形に配列されている。その中央に多目的施設である運営館、芸術館、製造館が配置されている。
 多目的施設がある直径444mの円は中央広場であり、野球のスタジアムが4つ入る大きさで、スポーツ、祭りなど広さが必要な用途に使用する。芸術館がある円には体育館も併設される。こうして生活のすべては、直径4km(半径2km)の円内で全てが完結し、自転車で移動できる距離となる。
 2015年の段階で日本の世帯人数は平均2.5人ほどだが、それは都市部に単身世帯が増えていることが原因でもある。次の数字は江戸時代から現代までの世帯人数の推移である。

江戸時代 1600年代 6〜7人
江戸時代 1750年代 4人
大正・明治時代 1868年〜1926年 世帯平均人数5.02人
昭和時代 1950年代 世帯平均人数5人、具体的には夫婦に子供3人
昭和時代 1970年代 世帯平均人数3.69人
平成時代 2010年代 世帯平均人数が2.51人 子供がいない夫婦も多くなった

 こういった平均人数の中で、5〜6人家族が拡張プラウト主義では平均的になると予測し、一つの住居は5〜6人が住める広さに統一しておく。そして自然災害のためのシェルターという考えも含め、地下1階と地上部分は吹き抜けを多くし、太陽光が入る作りにする。
 上記の図のような配置の街にすると、全家庭が5人家族の場合、7万560人が一つのPROUT Villageに住めることになり、全家庭が3人家族の場合、4万2336人が住むことになる。

PROUT Villageが4kmの円でフラワーオブライフの理由-------------------------------------------

・街の端(はし)から中央の多目的施設まで2kmだが、歩いて片道30分の距離となる。一般的にこの距離であれば気分良く散歩ができる。しかし片道45分〜1時間の場合、行きは歩いたとしても帰りも同じ距離となれば歩く人が減る。PROUT Village内の活性化のためには、気分良く歩いていける距離の街にしておく必要がある。

・歩いていける距離であれば自転車でも通える範囲となる。PROUT Village内での自動車の行き来を減らすために、自転車と徒歩でいける範囲にする必要がある。また中学生くらいの第二次成長期をむかえる前の子供にとっては、3km以上を自転車で通うとなると遠さを感じる。また現代社会の場合、親も自動車事故などを心配して遠い距離を自転車で通わせることをためらう。PROUT Villageでは毎日街の中央の多目的施設に通うと仮定して、小さい子供も自転車で移動できる2〜3kmに住居を配置するよう配慮している。またそのため、PROUT Village内の自動車の交通量も減らせるよう半径2kmにしている。つまり直径4kmという大きさは、大人も子供も徒歩や自転車で気軽に通える限界の距離となるので、街の一つの目安と考えることができる。

・直径4kmの円で住居を配置した場合、全家庭が10人ずつ住めば最大で約14万人が住むことができる。それは現実的には起こりにくいが、PROUT Villageには平均的に6万人前後になると予測している。理由は日本は少子化により人口が2055年には9193万人になると予測されており、つまり2000年代初期から比べると、約3000万人は人口が減る。これは各PROUT Villageの人口が1万人ずつ減る人数となる。よって明治・大正・江戸時代の平均世帯数が5人だったことから、合計7万人の人口になると考えられるが、人口減少で6万人が平均的になると推測できる。最大14万人住める街に6万人が住んでいるという状態にしておけば、近隣で災害が起こった場合、被災者を受け入れる住居が余っているということでもある。

・PROUT Villageをフラワーオブライフという円形にしている理由は、そのデザインが人間、動物、植物、地球、宇宙、銀河など、宇宙にある全てに共通する黄金比とトーラスという普遍的な美しいデザインだからである。そして円形ということで、住居の配置が中央の同一対象へと向かう共感する人として意識され、共同する意識が生まれやすいためでもある。つまり直径4kmでこのフラワーオブライフの自治体を作る。フラワーオブライフ以外のデザインも今後の研究によって生み出されていくことが予想されるが、現時点ではこのデザインが普遍的なものとしてスタートに適している。

日本のPROUT Villageの数-------------------------------------------------------------------------------

 日本の国土面積37万7900㎢のうち33.6%の12万6974㎢が居住可能面積とされている。その中に2942個のPROUT Villageの建設が可能である。その中で4151万7504個の住居が建設できるが、2016年時点での日本の世帯数は5185万世帯であり、一人暮らしが1680万世帯となっている。よって各PROUT Villageには1100個ずつ、計5人が住む一人暮らし専用住居も建設する。そうすると合計3841万個の住居数で足りる。
 現在日本は少子化が進んでおり、2020年には1億2410万人、2030年には1億1662万人、2055年には9193万人と人口が減少することが予測されている。つまり住居数は年々少なくなっていく。
 下記の図はPROUT Village建設可能位置である。
 
 

斜面崩壊・山崩れについて--------------------------------------------------------------------------------

 PROUT Villageは山間部に位置することが多くなることから、山崩れを考慮したドームハウスの建設位置を考えなければならない。
 山崩れ、崖崩れ、土砂崩れは斜面崩壊ともいう。これらは大雨や地震によって発生しやすくなる。

 大雨による斜面崩壊が発生しやすい箇所として,次のようなところが挙げられる。まず地形条件からは,斜面の傾斜が急なところ(傾斜角30度以上)、斜面の途中で傾斜が突然急になるところがある斜面、谷型(凹型)の斜面、上方に広い緩傾斜地がある斜面、などである。最後の2つは多量の水が集まりやすい地形条件である。
 土砂災害防止法による土砂災害警戒区域は急傾斜地の高さの2倍(最大50mまで)と定められている。急傾斜地とは傾斜角30°以上で、高さが5m以上の斜面をいう。

 
 現状は、いつどこで崩れるかを予測するのは困難だが、崩れた場合その崩土(ほうど)がどこまで到達するかは、かなりはっきりしている。普通の崖崩れの場合、崖際から土砂の先端までの距離は崖の高さと同じ距離の範囲内にほぼ収まっている。したがって住居建設の時には、できるかぎり崖斜面から離して建てる。離す距離は安全を見込んで崖の高さの2~3倍以上とすることが望ましい。
 中小規模の山崩れ・がけ崩れでは、崩土の到達距離は斜面の高さと同じ距離の範囲内にほぼ収まっている。ただし地面に傾斜があるとより遠くまで達する。土砂の横への広がりはあまりない。


複雑地形の住居配置ルール--------------------------------------------------------------------------------

 4kmの円(フラワー オブ ライフ)を配置できればそうするが、日本は山が多いのでそうもいかないことがある。その場合は下記の図のように大きい円から優先して場所を埋めていく。


PROUT Villageの農地-------------------------------------------------------------------------------------

 PROUT Village内で食物の栽培を行うが、周辺にもたくさんの土地が余るので、そこで農業と麻の栽培を行う。5人家族に必要な農地は1089㎡(33m×33m)が目安となる。
 さらに食物をより安定的に、そして量を多く得るために運営館の地上部分には水耕栽培の施設を建設する。

PROUT Villageの公共工事-------------------------------------------------------------------------------

 PROUT Village内に工事が必要な際は、総務部に申し出る。またプラウトでは物質的にも満たされることにより貧困がなくなり、犯罪がなくなるので鍵をかける必要性はないが、初期においての鍵の設置は居住者の判断に任せる。そして引越しの際は家財道具を置いていき、次の居住者はそれを利用する。このようにして誰でも好きな所に好きな人と住むことができる。よって子供は自由に好きなところで住めるので、親より子供がしっかりしている場合、親に愛想をつかした子供が家を飛び出し他の場所で自立して生活しているようなことが起こりえる。

 家を建てる場合は製造部の建築家、宮大工、林業技士、配管工などが話し合い、円形の配置を基本として地域のどこにドームハウスを建て、どこの木を伐って建てるかなど、千年単位で利用できるよう話し合う。住居は中央に配置された多目的施設から円形に広がるように配置する。
 木の伐採に関しては近隣の自治体とも話し合って森林伐採区や保護区を決める。住居の建設の際は建物の領域を示すような柵や塀は作らず開放的な設計にし、現代のように隣の家の音が聞こえるような住居の間隔は避け、集合住宅など単調なデザインの住居も控える。自然はそのままで美しいものなので、自然と同化した建築デザインにする必要がある。
 また朝にはドームハウスの屋根から太陽光が注ぐよう設計する。そしてこれらは地震に耐えうる設計にする必要があるので、免震装置は不可欠となる。個人で内装を変えることや増築することは可能となるが、建築家の建てた住居の強度に支障をきたさないことが条件となる。そして各家庭には農地も提供され、大きさは1人55坪(約14m四方)が目安となり、家族分の広さが割り当てられる。また1万人の自治体であれば、住居から多目的施設までの距離は2000m前後を目安にする。プラウトではシータ波の状態になれる散歩を好む人が増えるので、徒歩で30分程の距離までであれば程好い散歩道となる。

 こういった住居のデザインは自治体ごとにある程度統一し、住居の大きさも自治体ごとに一定の基準を持って建てていく。これは自治体の総務部が管理する。これはつまり、その自治体に住む住民誰もが、よく似たデザインの、よく似た大きさの家に住む事になるということだが、現代社会からプラウトへ移行する際、経済力のある富裕層がもっと大きな家に住みたいと申し出る場合があるかもしれない。しかし経済力の格差はプラウトでは関係なくなる事や、自治体の環境を大局的に見て住居の大きさや場所などを選定することなどもあり、そういった特別な例は基本的には認められない。ただこれは誰もが同じものを享受するという単純な平等思想ではなく、誰もが千年使い続けることができる高い質の住居を無償享受するということなので、現代社会の住居よりも住み心地の良い住居に住むことになる。

 自治体内の道路は車などが走るためだけの必要最低限にし、信号、道路標識、柵、塀、ガードレールは作らず、地上ではアスファルトも使用せず、土や芝生などで整備して自然を優先し、山にトンネルを作ることは禁止される。ただ隣の自治体までは災害時の救助などに使用する大型車が通れる土の道路を確保しておく。

 自治体の道、山道、建物の位置は人間よりも自然の都合を優先する必要があるので、林業技師が中心となってそれらの位置設計を進め、大樹は伐らずに残す。地上の道路は土や芝生にしておくことで誰もが注意しながら車を運転することになり、スピードが出せないことから事故を減らすことにもつながる。よって現在では電気自動車の静かさが歩行者の危険につながっている問題が存在するが、自動車が静かであるほど運転者は気をつけて運転することになり、歩行者が知らずに車に接近したときにはクラクションで知らせる。ただ自治体の道路作りの基本として、交差点などの死角を作らないことは頭に入れておかなければならない。よって現在の社会のように、四つ角に建物があるような町づくりは始めから避けていく。

 こういった基本を守りつつ運転者は警戒心をもって運転することで乱暴な運転はできなくなり、地域の騒音もなくなる。クラクションの音量も必要以上に大きければ歩行者の迷惑になるので、音量を2段階、3段階と調節できる造りにしておく。そして道路標識はなくなるので、運転手はカーナビで道路ガイダンスを聞くことになる。そして車が通らない野原などには道を作らず、人が自由にコースを決めて歩けるようにし、社会にはゴミがなくなるのでどこでも裸足で歩けるようになる。夜になれば住居と道路の電灯が光ることになるので、電灯はすべて照明芸術として設計し、夜の景観向上に努める。ただ景観向上に影響力を持たない場所の電灯は、人感センサーなどを使用して通行がある場合にだけ点灯するようにし、それ以外の時間は闇にして星が見えるようにする。河川も現在のようなコンクリートで固められた堤防の建設は避け、自然のままの景観を維持する。よって豪雨によって川が氾濫する恐れのある場所には建物や農地を作らないことが基本となる。またどんな木も一本でも切るには自治体の許可を必要とする。

 こういった制約を守ることで地上には必要最低限の建造物と土の道路だけとなり、後は自然で溢れかえることになるので、家の近所で野生動物が草を食べる光景を見ることができるようになる。そして道路を歩く動物に気をつける必要があり、また自治体の道路は曲線ばかりなので、車も必然的にスピードを控えるようになる。

 各家庭のインターネットや電話はアクセスポイントから接続するが、通信ケーブル、電線、上水道はすべて地中に埋設して、家庭と運営館のIT電力水道管理室を結ぶ。そしてこれら地中の配線は土の道路の下に作る。これにより工事の際に植物を掘り返すことがなくなる。そしてIT電力水道管理室から地下鉄へつなげることによって世界全体とつながる。

 家庭と多目的施設が通信ケーブルや電線で結ばれることにより、緊急時にIT電力水道管理室から家庭へ電力を供給することができ、また自治体からの警報通告を各家庭に直接知らせることもでき、豪雨や暴風時に警報通告が聞こえないなどのトラブルを失くすことができる。よって各家庭のリビングの壁に緊急用電話とスピーカーを埋め込んでおき、自治体の総務部、保安部、保健部などへボタン1つですぐ電話をかけられるようにしておく。緊急の災害時には自治体の警報通告がそのスピーカーから流れてくる。さらに各家庭の各部屋には火災探知機を設置し、それを自治体の保安部とつなげておく。

 そして生活品はすべてワイヤレス給電になる。現在では60wの電力を50cm離れた電子機器に給電することが可能になっている。

■車のドライバーと各種操縦士

 拡張プラウト主義では車の運転は18歳、バイクの運転は16歳と、現在の方式と同じ形式で進める。その際の運転技術指導は自治体が担当する。運転免許やナンバープレートも、現在の方式と同じように進める。

■消防

 拡張プラウト主義では住居が密集することはないので、火災時に住居から住居へ火が燃え移る可能性は少ないが、周辺の樹木へは燃え移る可能性がある。火災が起きれば自治体の消防車が出動し、規模が大きければ近隣の自治体からも応援が駆けつけるが、初期消火活動として住民自らが各家庭に常備されてある小型消化ポンプを使用して消火活動を行う。これにより周辺の木々へ火が燃え移ることが早期に予想された場合に、それらの木々に先に放水して被害を最小限に抑える。

 このために各住居近くの上水道に消火栓を整備する。消火栓は棒が突き出た地上式消火栓ではなく、マンホール型の地下式消火栓で整備する。この地下式消火栓を上水道が住居へと向かって分岐している地点に設置する。そしてこの消火栓と同じ位置に小型消火ポンプとホースが入った格納箱を埋め込んでおき、住居人がすぐに消火活動を行えるようにする。ホースの長さは消火栓から家の裏まで回り込める長さが必要となるので、20m以上が目安となる。そして消防車が到着すれば保安部の消防隊員の指示に従う。

■災害時の救助と復興について

 地震、火山噴火、地すべり、暴風、台風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、津波などの自然災害と人間は常に隣り合わせで生きているが、このどれが起きようとも基本的な対応策は同じである。自然災害の影響が及ぶ範囲は限定的であり、災害の影響が及んでいない周辺自治体が避難場所として被災者を受け入れる。
 災害が起こりまず困ることは被災者の住む場所と食料だが、周辺地域の自治体や市民が避難場所として宿泊施設や自宅を提供し、併せて食べるものも提供する。次にその自治体の総務部がその避難者のリストをまとめオンライン上で周辺自治体と共有し、安否の確認がとれるよう手配する。被災地への救助•救援活動は周辺自治体の保安部が中心となって行うが、事によってはヘリコプターなどが必要になることもあるので最寄りの空港がある場合はそこから、空港がなければ事前にそういった設備を準備しておく。救助を円滑に行うため自治体と自治体を結ぶ地下鉄の利用は関係車両以外禁止とするが、地震などで地下鉄が使えなくなる可能性もあるので、地上にも大型車が通れるルートを確保しておく。基本的にこの手順で被災者の救助を行う。

 次に復興については破壊される前の状態を作り出せば良いだけであり、そのために周辺地域の技術者が中心となって復興を行う。倒壊した住居の木材を回収し、使えるものは再利用し、足りない木材は自治体が管理する木々を使用する。住居の原材料は地元の資源を使用している事が基本となるので、あとは職人が周辺から手伝いにくれば復興は迅速に行われる。現代社会では復興する際の大きな問題として復興するための資金面の問題があり、復興後も経済的に成り立つのかが問題となって復興が遅くなる。しかし貨幣を経済の中心に持ってきていないプラウトでは、そういった問題は起こらず、地元の資源と職人と住民がいれば復興はすぐに行われる。
 そして街が完成すれば再び市民は戻っていく。ただ地震、噴火、洪水などの自然災害の歴史を何百年単位で見ていくと、同じような場所で同じような災害が起こっていることが多々ある。つまり復興する場合もやがて同じ規模の災害が起こると予測されるのであれば同じ場所に街を作らない必要性が出てくる。地域の歴史を慎重に検討し、自分達の子孫の世代のことも考えた上で街作りを行わなければならない。

■消防警察について

 火事が起きた時の対応、災害が起きた時の救助、街の治安を守るなどの業務を自治体の保安部が一括して行う。拡張プラウト主義の時代には現代とは異なりこういった事件が頻発することは少ないが、あらゆる事態のシミュレーションを行っておき準備をしておく。

■医療

 拡張プラウト主義では菜食への移行と生活習慣の改善によって自治体住民の健康状態は良くなり病に伏せる人は少なくなるが、ほとんどの病状は住民自らが薬用植物などを使って治すことになる。そして芸術館にある病院では歯科、眼科、内科、外科、耳鼻科、皮膚科、泌尿器科、精神科、産婦人科、脳神経外科、伝統医療などの治療が無料で受けられる。芸術館に設置する理由は、市民が最も活動している場所となっているからで、その分ケガも増える。
 治療には基本として薬用植物や伝統医療を用い、植物や備品も自治体でまかなう。さらに高度先端医療設備も整え、集中治療室、無菌病室など高度な医療の提供、開発、研修が行えるようにする。
 自治体周辺で車、飛行機、船などの事故や自然災害が起こった場合は、最寄の自治体の保安部や保健部が中心となって救済活動や事故車の処理を行う。事故車などは製造館で原料へ戻される。出産については自宅出産か病院での出産となるが、現在では数が減っている助産師も需要が増す。
 市民が医師になりたいと希望すれば、この自治体の病院で医学も学ぶ。

 そして拡張プラウト主義では、医師のミスで患者が死亡したとしても医師が責任を追及されることはなく、誰も責任を負うことはない。手術が必要な怪我を負うこと、体調を崩すことなどはすべて本人自らが引き起こした問題であり、自己責任が基本となるプラウトでは誰にもその責任を押し付けることはできない。自分の健康について自分で責任を持つことが自立した人間の基本であり、これが前提にあることで助ける側も最善を尽くすことができる。

 また温泉が湧き出る地域では現在のような観光資源として地下から大量に汲み上げるような扱いは基本的に禁止となり、あくまで節度を持った利用と医療目的の使用にとどめる。よって大量に汲み上げて垂れ流し状態ではなく、必要分を必要な時に使用するということであるが、節度と言っても人によって感覚は異なるので各自治体が独自に判断する。ただ自然に溢れ出ている温泉に関しては自然のままの使用が認められる。

 さらに食物の栽培方法や種子の管理など食に関する知識も保健部が管理する。医食同源という言葉にもあるように、食事が健康状態に影響を与えるためである。

■16歳以下のスマホ・携帯電話の使用制限について

 スマホ・携帯から出る高周波の電磁波については、WHO(世界保健機関)が、2011年「発がん性の可能性あり」と発表した。また2001年には、送電線や家電製品から出る超低周波についても同様に「発がん性の可能性あり」と発表している。つまり家電製品もスマホ・携帯も、どちらも健康に影響を与えるリスクはあるが、スマホ・携帯が、他の家電製品と決定的に違うのは、頭に密着して使う点である。スマホ・携帯は中継基地局との間で電波のやり取りをして通話するが、通話時にスマホ・携帯から出る電磁波の50%以上は、頭の中に吸収されてしまう。さらに深刻な問題は、スマホ依存症の子供たちが急激に増え、嫌がらせも増えていることである。
 次の図は、一定時間内に吸収する電磁波の熱量を表すSAR値(比吸収率)で、成人男性、10歳児、5歳児の脳や目のSAR値を比較したものである(米国ユタ大学 オム・ガンジー博士の研究調査より)。SAR値が高くなるほど健康被害が大きくなる。これによると、5歳児の脳は成人の4倍以上の電磁波を吸収してしまい、5歳児の目は大人の約12倍もの電磁波の熱を吸収してしまうということである。

 各国では携帯電話の規制・勧告・要請などは次のようになっている。

▪ 16歳以下の子どもは携帯電話を使うべきではない(ロシア、国立非電離放射線防護委員会)
▪ 8歳未満の子どもには携帯電話を使わせないように(イギリス、国立放射線防護委員会)
▪ 12歳未満の子ども用携帯電話の全ての広告を禁止(フランス政府)
▪ 10歳未満の子どもを販売対象にしない(オーストラリア、バージン・モバイル社)
▪ 8歳以下の子どもたちには固定電話を(カナダ、トロント市公衆衛生局)
▪ 16歳以下の子どもには携帯電話を使用させないように(アイルランド医師環境協会)
▪ 16歳未満の子どもの携帯電話使用・販売は禁止(インド、カルナタカ州)
▪ クリスマスプレゼントに携帯電話はやめよう(オーストリア、ウィーン医師会)
▪ 7歳以下の子どもへの携帯電話の販売は、店頭でもインターネットでも禁止(ベルギー政府)
▪ 小中学校への持ち込みは原則禁止(日本、文部科学省)

 ただ健康への被害は、科学的にはっきりと証明されたわけではないのが現状である。拡張プラウト主義では健康への安全が証明されるまでは、16歳未満の携帯電話の使用は禁止することを検討することになる。16歳というのは第二次性徴がおおよそ終わる時期であり、子供から大人の身体に変化している期間が過ぎた後ということである。

■福祉

 自治体では障害者福祉にも取り組む。多目的施設では車椅子の移動を前提に床面を平坦にし、ゆるやかなスロープや車椅子の幅を考慮した広い通路やドアを基本に設計にする。各案内板には視覚障害者の為の点字を表記し、音声を自動で字幕化して画面に表示する音声認識技術も用いる。電動車椅子などの福祉用具も全て自治体の職人によって製造され提供される。身体障害者の補助犬の手配も自治体で行い、手話の教育なども行われる。

 そして障害者がいる家族に対しては快適な生活ができるように、住居の内装もそれ仕様に設計される。ただ、一般的には建物内の物理的な障害を取り除くバリアフリーが良いとされる傾向にあるが、それによって障害者や高齢者をより軟弱にしているという結果も出ている。社会の至る所に、そして自然の中に障害物は常に存在するものなので、あえて障害物を残したほうが、長期的に見ると障害者や高齢者が自分で行動できる範囲が広がるという結果につながっている。このバリアフリーの程度は、最終的にはどこにどの程度の障害物を残すかというバランスの問題となるので、これは各自治体が、またはその家族が、住居や多目的施設の障害物の量を決めていく必要がある。

 日本には2014年の時点で460万人の認知症の高齢者が確認され、さらにその予備軍に400万人いるとされている。現在では施設に預けられる以外には、金銭面の問題や受け入れ先の有無などで在宅介護を余儀なくされる家庭も多い。
 プラウトではこの問題について、まず認知症と診断された市民が一緒に住む専用の住居を自治体内に設ける。そこには数十メートルなどの一定の範囲に草木で作った柵のような境界を設け、その敷地内なら自由に行動できるようにする。よって敷地内には池などの危険となるものはない状態にしておく。認知症患者は徘徊することが多々あり、在宅介護の場合、家族は文字通り24時間神経をとがらせて患者を意識しなければならないので、心身共に消耗し、現実的にその対応は不可能である。しかし1人の人間として、また家族として24時間家に閉じ込めておくことはできることではない。そういったこともあり認知症患者も1人で自由に行動できるよう、一定の範囲内の行動ができる場所を設ける。その専用住居からの外出は家族や友人が一緒であれば当然自由で、出入りもいつでも可能である。ただ冬場の夜間の外出は凍死の可能性もあることから、冬場は玄関の鍵を閉めておく必要がある。日中は家族と共に自宅で過ごし、夜間は専用住居に預けておくということも可能である。
 またトイレ以外の場所で排泄を行うこともあるので、その専用住居内の床は拭き掃除が簡単な床にする。そして同じく危険となる包丁などの道具は置いてはおかない。この専用住居は遠い場所にある施設ではなく同じ自治体の施設なので、住む家が近所の別の家に移ったという距離感であり、家族はいつでも会える状態である。この専用住居は自治体の保険部が管理し、家族や市民が患者の世話を行っていく。

 また日本では一般的に馴染みがないものだが、福祉には身体障害者の性の介護も含まれる。こういったサービスを行う団体はオランダで近年生まれたが、日本でも徐々に広がっている。どんな重い障害者でも性的欲求があり、それを解消すべくセックスボランティアが住まいへ伺い介助を行う。こういったことも福祉の一環として位置づけられる。

■動物の扱いと植物について

 福祉関係の補助犬など、動物の助けを必要とする人が動物と生活を共にすることはあっても、それ以外の動物の所持については考える必要がある。動物に首輪をつけることや狭い籠に住まわすことは、動物本来の躍動的な動きが制限されるので当然動物のストレスとなる。安易な動物の所持は控え、特別な理由がある場合のみ飼う。そして陸、海、空のどんな動物であっても無意味に殺すことは止め、部屋に入ってきた虫は外へ逃がす。

 また現代社会ではスーツや普段着など世界の人々が同じような服装をすることが多くなっているが、プラウトでは社会的身分が無くなることや文化交流が盛んに行われることによって、民族衣装や自分を表現した個性的な服装や化粧が増える。衣服は動物愛護の思想に立脚し、ウール、シルク、カシミア、革製品などではなく、綿や麻などの植物繊維が主となる。スポーツ用品や楽器に使用される革や毛も使用は避けられ、その代わりにナイロン弦など化学繊維や合成皮革が使用される。また自然死した動物を利用して革製品を作ることも、1人がそれを行えば2人目が現れ、やがて人数が増えれば自制心も薄れることから控える。

 また自分が飼っていたペットが死んだ場合は、自治体の総務部が管理する斎場の動物炉で火葬を行う。

 こういった話でよくある意見として、動物を殺さないことは理解できるが、では植物も同じ生き物であり殺すことになっているのではという指摘がある。それに対する答えとして「自然界の分類」と「文明の進化の段階」という2つの観点から考える。まず自然界に存在するものを次のように4つに分類する。

●鉱物:物質
●植物:物質・生命
●動物:物質・生命・感情
●人間:物質・生命・感情・自我

 この分類で、感情を持って苦しみを表現する人間と動物までの存在を殺すことはやめる。ただこれはプラウト初期段階の話であり、将来的に人間は植物や鉱物も採取しなくなる。しかしそれを実現するためには、科学技術の発展が必要となる。その境目として、植物から必要な栄養のみを抽出できる技術が生み出されれば、植物や花を刈る必要はなくなる。さらにユーティリティフォグのように、ナノレベルのコンピューターが人間の思い描くものに変形するような科学技術に達せれば鉱物を採取する必要もなくなる。つまり現時点での文明の科学技術力では難しいが、数十年、数百年後には科学技術の発展が植物や鉱物の利用も最小限にとどめることになる。

■水道水

 拡張プラウト主義では河川へ汚水の流入がなくなり水質が改善される。河川の取水塔から取水された水は運営館のIT電力水道管理室で水質管理され、家庭へ送られる。下水道や下水処理場は必要なく、排水は農地に還元される。

 そして水道水には野菜などのビタミンを壊す塩素は入れない。また水道管は鉛などが混じらず錆びないものを使用する必要があるので、家庭の水道管の案としてはウポノール配管などがある。炭素と水素だけで構成された人体に無害で健康的な新素材架橋ポリエチレンパイプで作られており、耐久性は50年以上とされている。ウポノール配管システムは錆びや腐食の心配がなく、万が一の交換工事の際にも、壁や天井をはがさずにパイプの交換が可能となっている。

 綺麗な水を取水するため、地元の水源環境は厳しく管理し、出来る限り水が沸き出すポイントから取水する。水質を守る為に周囲数kmに人が住むことを禁止し、それによりミネラルが豊富な生水をそのまま飲めるようになる。取水ポイントから住民が住めない範囲の設定は各自治体が独自に判断する。

 河川が近くにない自治体には、最も近い自治体からパイプを伝って水を供給することが第一優先となり、それが不可能であれば自治体ごと水が供給される場所へ移転する。

 島などで水源が確保できない場合は、水源がある地域から海底水道でつなげて供給する。ただ海底水道が建設できないような場所にある島の場合は地下ダムを検討する。地下ダムとは地中に水を通さない壁をつくって、地下水の流れをせきとめ地下水をためる施設であり、すでに日本を含め様々な国で使用されている。

■栽培環境の整備

 道端に生えている植物の多くは繁殖力の強いものが多いが、自治体に食物栽培に適さない荒地があれば、まずその繁殖力の強い植物を植えて栽培環境を整える。こういった植物が根付くとそこに生息する昆虫やそれらを餌にするクモやムカデ、そしてネズミ等の小型哺乳類や小型の鳥といった小動物が現れ始め、それらが生死を繰り返すことにより土壌が肥沃化していく。現在は草刈りが必要などで雑草と呼ばれ迷惑がられているが、拡張プラウト主義ではこういった植物の力を借りて自然環境を整え、どこもが自然で溢れるようにする。

 繁殖力の強い植物は数多く存在するが、例えば麻がある。さらに地面に沿って茎が長く伸びていくクローバー、林や藪の草木にからみついて成長するカラスウリ、成長が早いニワウルシ、熟した豆を食用にできるヤハズエンドウ、地面を這って伸びるヘビイチゴ、高さ10〜60cm程になるキレハイヌガラシ、黄色い小さな花をつけるイヌガラシなどがある。

 またハーブとして料理、菓子、酒などの材料になるミントも繁殖力が強い。例えば爽快な香りや清涼感があるニホンハッカ、耐寒性が強く防虫効果があるペニーロイヤルミント、生命力が非常に強いペパーミント、ハーブとして用いられた歴史が古いスペアミントなど、この他にも数多くの種類が存在する。どんな地域でも耕作に適していない土地があればまずこういった繁殖力の強い植物を生い茂らせ、栽培環境を整えてから作物の栽培を行っていく。

■無報酬労働と作業範囲

 自治体で取り組む事業など人手がいる労働は市民の交代制で行い、すべて無報酬で行う。それにより1人1週間に数時間の労働で必要を満たす。よって現在の社会のような失業者は存在せず、働く時間がなくなるということは余暇が増え、好きなことに取り組む時間が増えることを意味する。また定年という概念もなくなり、何歳になっても自分がしたいことに取り組むだけとなる。最終的には自治体の仕事はほとんど機械が行うようになる。

 一日2〜3時間の労働であれば時間はすぐ過ぎるので問題ないが、それ以上になってきた場合に注意すべきこととして、個人が行う作業範囲はできるだけ広げ、最低限誰もが職人として1つのことを完成させることができる作業範囲を設定する。それが意欲とモラルの向上、そして労働力と労働時間の削減へとつながる。これは現代の流れ作業の結果を見てもわかるが、作業員1人の仕事は数点の部品の組み付けだけで職人的な技量は求められず、全くの素人でも数時間の研修を行えば事足りるような単純労働では、労働意欲の低下と離職率の高さはすさまじくなる。全ての組み立てを1人で行い、ある程度作業に慣れ、それぞれが工夫を重ね始めると、作業者の独創性によって生産性があがるという結果がでている。よって代表者は常に職人を育成することを前提に作業範囲を設定する。

 拡張プラウト主義では金銭がなくても生活が可能になり、自給自足によって生活を成り立たせながら誰もが天職についているので、その職に取り組んでいるだけで充分な満足感を得ている。よって作業者は見返りを求めず奉仕し、あくまで利用者の自発的なお返しがある場合のみ何かを受け取る。人間は報酬によってではなく、好奇心によって活動しなければならない。このような社会がある程度続き、各人間性が向上すれば、誰もがただ与えるのみによって社会は成り立つ。

■所有物

 無償で与え、無償で与えられる社会では自分の所有物という物はなくなる。すべての物は自然からの共有資源で作られ、そこから何かを作り、与え合う。何かを製造した際の基となる閃きや直感でさえも与えられたものなので、そういった与え合う社会では物も余ることから自分の分を確保する必要はなくなる。これは土地についても同じとなる。つまり誰もが誰の物でも使用でき、「人の物を勝手に使った」「人の物を盗んだ」という表現はなくなる。ただプライバシーは存在し、使用する人は相手の状況を考えることやネガティブな動機がないことが前提となる。

 また物を所有する場合は、必ず本人が最後まで管理する事が責任となる。最後とは原料に戻すまでを指す。常に新しい物を所有または製造する際に、最後の処理までイメージしてから持つ事が重要である。

■葬儀と墓

 基本的に人間は生まれて死んでいく生き物だが、死んだ後の儀式や死に対する考え方は宗教や文化によって様々である。死生観はその人がどういった場所に生まれ、どのような人生を送ったかで形作られていくものである。個人の死生観を他者が無理に変える必要はなく、拡張プラウト主義ではそれぞれに合った方法で葬儀が行われる。これは現代と同様だが、火葬が必要な場合は、自治体の総務部が管理する斎場(さいじょう)の火葬炉を使用する。墓という概念も宗教や文化によって様々だが、まず自治体が基本的に墓地を管理する。家族が望めば墓の場所は話し合って決める。

 ただ拡張プラウト主義では散骨を推奨する。散骨とは故人の遺体を火葬したあと焼骨を粉末状にし、海、空、山でそのまま撒くことを言うが、重要なことは墓などの物質的な物ではなく気持ちが重要であり、死者に対する感謝の念や想いがあれば、それはいつでもどこからでも伝わっていると考えられる。よって仏教で行われる四十九日など各宗教には様々な儀式が存在するが、儀式ではなくあくまで純粋な想いで念ずることが重要であるとしている。ただこういったことに関する考え方は常に個人の自由であり、強制されることはない。

■育児

 拡張プラウト主義での乳児は母乳で育てることが基本となる。しかし母乳が出ない母親やHIVなど体液を通して感染する病気を持つ母親の場合は、自治体の乳母(うば)が母親の代わりに母乳を与える。プラウトでは誰もが自由な時間を過ごしているので、近所付き合いの中で乳母となる女性を見つけ出すことは容易になる。

 そして現在は紙オムツの使用が多いが、これは大量のゴミを生み出し、資源も大量に消費することから紙オムツの使用はなくなる。拡張プラウト主義では基本的にトイレットペーパーやティッシュが製造されないので、温水洗浄便座に乳児用補助便座を設置してそこへ座らせ、温水洗浄と温風乾燥を行う。オムツを使用する場合は布オムツを使用する。布オムツは化学繊維の物を使用するとかゆみを伴うこともあるので、麻など肌触りの良い自然素材を使用する。こういった布製下着は、高齢者の軽失禁用にも使用される。
 拡張プラウト主義では夫婦共に自由な時間があるので常に赤ん坊の側にいることができ、育児に十分な時間を注ぐことができる。


■労働人口のバランス

 こういった自治体では労働人口のバランスを取る。サーカーは地域の30〜40%の人々が直接農業に従事すべきとしている。自然農は労力がそれほど必要なく、誰もが農作業に携わることができる。よって拡張プラウト主義では、仮に1万人の自治体なら全員が農業に従事するが、その中でも3000人程が農産物や調味料などの生産に特化する。原料採集、製造、修理、整備には約3000人。医者、消防警察、運転士など製造された物を使用して活動を行う人は約2000人。事務、調査、管理にも約2000人程が従事する。自ら作った製品を自ら使用する人や修理補修を行う人もいるので、これらの数字はおおよその目安となる。こういった統計は総務部が管理する。

「州」

 拡張プラウト主義では現在の小さな国が州に、大きな国は分割されて州に再編される。そして州都を選定し、自治体の知事が集まって州議会が開かれ、州法が制定される。州からは州知事が1名選出され、世界連邦に州の代表者として参加する。

 州は自治体と同じく自治局、総務局、保健局、製造局、保安局、地下局、宇宙局、航空局、船舶局の9つの局を設置し、州規模の管理を行う。自治体と同じく州も場所によっては宇宙局、航空局、船舶局が設置されない場合がある。また州は警察を保安局に設置することは可能となるが、軍隊を持つことはできない。

■地下鉄

 地下電車に関しては新幹線でもリニアモーターカーでもなく、現在開発段階にあるエアロトレインを使用する。これは数十cm機体を浮かせて、時速400km以上で走る乗り物。磁力を使ったリニアモーターカーを思い浮かべるが、そうではなく、空力を使って浮き上がらせるのが「エアロトレイン」。
 速度については、空気の薄い高空を飛ばないのでエネルギー効率を考慮し、時速を平均400㎞、最高500㎞、浮上速度は時速200㎞程度。翼がないのでトラックの幅が単線で7m、複線で14m程度。トラックは線路がないため、軽くできるので、ルートの設定が容易な高架式が適している。上下2段にすると幅7mで済む。
 乗り心地は、空気力で浮上しているので振動がない。横方向の加速度を機体の傾斜で打ち消す制御によりカーブでも揺れをほとんど感じない。
 経済性の観点については、機体が軽く、効率の高い電気モーターによりエネルギー効率が高くできる。高架式にすると、交差点や踏切がなく自動運転が採用できコストが低減できる。

 これが自動列車運転装置によって無人で行き来する。よって前方監視システムによって障害物が発見されたときには急停止する。エアロトレインの進行方向と駅内にはライブカメラを設置し、IT電力水道管理室で状況を確認し、扉の開け閉めなどの遠隔操作も行う。扉と扉の隙間に衣服などがはさまればそれを感知して発車できないシステムも設備される。また駅にはホームドアが設置され、ホームからの転落や列車との接触事故防止など安全対策を行う。こういった地下施設内の担当区間は自治体から隣の自治体までとなる。

・州内の長距離を結ぶ長距離列車。 現在の新幹線にあたる。
・州同士を結ぶ州間列車。     現在のユーロスターなどにあたる。

 州内の中長距離列車の運行計画は州の地下局が、州間列車の運行計画は世界連邦の地下省が管理する。州内の地下鉄が完成すれば、次に州間の地下鉄を建設する。各州の長距離列車と州間列車を結ぶことで世界中に最も早い列車網が整備され、長距離の移動が円滑になる。

 地下トンネルの建設について、イギリスとフランスの間を走るユーロスターの英仏海底トンネルは、全長約50kmの貫通までに4年の歳月を費やした。拡張プラウト主義での工事は州がまとめた設計に沿って、地域ごとにトンネルの掘削を行う。

 地上と地下の駅とは、階段、エスカレーター、エレベーターで結ぶ。エアロトレインでは自転車、車椅子、患者を運ぶストレッチャーなどが運ばれることもあるので、エレベーターはこれらが入る大きさが必要となる。こうして多目的施設の地下にはエアロトレインの駅と地下駐車場が設備され、それらの出入り口は多目的施設内か周辺に設置される。

■電力設備

 このように、エアロトレイン、電線、通信ケーブル、アクセスポイントが一体となった地下鉄を構築し、太陽光発電などで地下内の電力を一括してまかなう。この電力源の1つとして、各家庭の屋根型太陽光発電の余剰電力を利用する。各家庭の余剰電力は地中の電線を伝って自治体のIT電力水道管理室へ集められ、そこでも利用されなかった電力が地下駐車場を通って地下鉄へ供給される。つまり余剰電力を集めることによって自治体そのものが大きな発電源となる。

 この余剰電力の合計を理解するために、まず自治体であるPROUT Villageには1万4112戸の住居がある。ドームハウスすべての屋根が太陽光発電になり、少なく見積もって一家庭10kwの電力が毎時得られるとし、そこから5kwの余剰電力が生まれるとすれば、自治体からは単純計算で毎時7万560kwの余剰電力が日照時間に得られることになる。この数字は1万kw以下の小水力発電ダムの規模を上回る。これを日本の全人口分のPROUT Village4151万7504世帯に当てはめて計算すると、2億758万7520kwの余剰電力が生まれることになる。日本の原子力発電所約50基は約4800万kw、水力発電は約4500万kw、火力発電は1億4500万kwの発電設備容量で、その合計2億3800万kwを余剰電力だけで超える。

 そしてこの家庭の余剰電力は、現在技術開発が進められている超伝導ケーブルによって地下鉄へ供給され、エアロトレインの電力や電気自動車の充電に利用される。超伝導ケーブルは抵抗がほとんど無いため損失を小さくでき、発熱もないため電流密度を向上させ、ケーブルをコンパクト化することができる。世界中の電力設備は地下鉄内の超伝導ケーブルで結ばれ、最終的には太陽が照り付けている地域の余剰電力は、その間夜の地域へ供給される。そして自治体、州、世界連邦の地下省のIT電力水道管理室が、各規模に応じて地下鉄の電力調整を行う。

 またこの電力設備によって全世界が1つの電線で繋がっているので、今後太陽光発電に勝るエネルギー源が開発された場合にも、発電源を複数個作れば全体に行き渡らせることが可能となる。

 国や地域によっては雨季があったり曇り空や雪が多い地域があるので、太陽光発電から安定した電力を得ることが難しくなる場合は地熱発電を検討する。地熱発電は地下で熱せられた地熱水を蒸気と熱水に分け、熱水は地下に戻して蒸気だけをタービンの動力に利用するフラッシュ方式が一般的なものとなっているが、環境への負担も少なくすることからバイナリー方式も検討する。バイナリー方式とは温泉水など温度が低く、十分な蒸気が得られない時などに、低沸点のペンタン(沸点36℃)やアンモニアなどを加熱し、その蒸気でタービンを回して発電するものである。地熱発電は場所によって使用する方式が検討されるが、その場合の地熱発電所のデザインは景観を損ねないものを充分に検討する。

■植物燃料

 拡張プラウト主義の航空機の燃料は、新しいエネルギー技術が生み出されるまではバイオ燃料を使用する。バイオ燃料は植物から取り出される油を使用する燃料であり、現在ではアブラナ科のカメリナやジャトロファ、藻という非食料の原料を使用することが多い。石油に代わってバイオ燃料を使うことで、食料の競争を引き起こし、穀物価格を高騰させ、農地拡大のために森林が伐採されるなど多くの問題点が指摘されているが、拡張プラウト主義においては食べる量は減り、食物は自給自足するので売買されることはなく、自然も増えるのでそういった問題は起こらない。ただ植物から生産されるので無限に採取できるわけではなく、拡張プラウト主義では地元の空港が取得できるバイオ燃料の量によって、航空機の便数が決まる。現在では便数が減ることはサービスレベルが低下することを意味するので経営危機に陥るが、拡張プラウト主義ではどの空港も利益の為の運営ではなく、あくまで航空関係が好きな人による奉仕として運営されるため、また資材も地域で調達するため、利用者がいなくても経営難に陥ることはない。利用者も料金を支払わなくても飛行機に乗ることができ、乗り換えすればどこまでも好きなところへ行くことができる。つまり化石資源を使わず、採取可能な植物の範囲内で航空機を飛ばすことで、世界の誰もが環境負荷の少ない飛行機を享受できるようになる。

 船はバイオディーゼル燃料で動き、太陽光発電も利用する。バイオディーゼル燃料は菜種油などの植物油や廃油を原料に生産する。拡張プラウト主義においては飛行機も船も現在より小型化され、便数も減らされ、エネルギーの節約に努めることになるが、そもそも生活リズムがゆったりとしているので、時間や利便性を第1優先にする必要はなく、あくまで無理のない運営が優先される。またタンカーやコンテナ船のような巨大な船の必要もなくなる。

 航空と船舶の運航予定がまとまれば、州はこれに必要な植物燃料の合計を計算し、それを州内の自治体で分割して栽培し、多目的施設内のバイオ燃料工場で燃料を製造し、最寄の空港や港へ提供する。

 また麻の栽培が認められるようになれば、麻から作られるバイオ燃料を優先的に使用する。麻は4ヶ月で4メートルの背丈になるほど成長速度が早く、どこでも成長する強さを持っている。

 ただバイオ燃料の計画がある程度具体的になるまでは部分的に石油を使用する。市民の移動には電気で動く車とエアロトレインが主となるので、世界的に見て石油の使用料が大幅に減る。よってバイオ燃料の計画が定まるまでは飛行機などの長距離を移動するものに対しては石油を使用する。

■航空と船舶

 拡張プラウト主義では、交通手段としてエアロトレインを第一優先に街作りを行う。よって飛行機、船、車は極力使用しなくても良い状況を目指す。その理由は、エアロトレインはコンピューターによる自動制御が可能で、人為的な操作ミスによる事故の可能性が低く、そのため死亡事故が起こりにくくなる。また化石資源を使う必要もないため。ただそれでも飛行機や船は、場所によって必要になる。その時は次のように進める。
 
 空港や港も州の航空局や船舶局によって計画され、自治体市民によって建設と運営が行われる。大型機による州間定期便の運航計画は世界連邦の航空省が一括して管理する。州内の中長距離には中型機を使用する。これは州が管理するが、定期便にするのか利用希望者の集まり具合によって飛行日時を決定するのかは州の判断による。そして短距離には小型機や中型機を使用し、これは自治体や個人が管理する。

 この関係性を基本に、まず州の航空局が州内の必要な場所に空港を設置する。そして州は、自治体の小型機や中型機、州内定期便、州間定期便、船舶の4つへ州内で栽培する植物燃料を分配する。この分配された植物燃料内で、それぞれ運航計画が再考される。世界連邦の航空省は州間定期便用に分配された植物燃料の合計をまとめ、それと世界の空港の位置関係から州間定期便の航路を決定する。よって定期便の数は現在よりも減る可能性があるが、拡張プラウト主義では忙しく生きる必要がないことからそういったことに問題はなく、また航空関係者にとっては仕事量が減るので、安全確認が強化される。そして化石燃料の使用はなくなり環境破壊もなくなる。

 そして州や自治体が航空関係で働くパイロットや整備士などの人材を募集し、その人材のために空港近くの自治体に居住地を設け、製造や修理も周辺の自治体で行われる。乗客の座席の予約はオンラインが基本となり、空港での荷物チェックはなく、機内にスチュワーデスが必要かどうかも自由になる。現在は乗客がお金を払っているのでサービスを受けて当たり前という姿勢になるが、拡張プラウト主義での奉仕する側は乗客に対して自然と最善を尽くすので、乗客はそれを利用させてもらっているという姿勢が基本になる。つまり基本は自分のことは自分で行うということで、この関係はすべての事柄に当てはまる。

 船の港に関してはまず水深が深く、島や岬によって、または海が弓なりに陸地に入り込んで風除けができる天然の条件が揃った環境に港を作る。そして必要最低限の桟橋を作る。こうして作られた港の分布を州の船舶局がまとめ、需要があれば州内定期便を決定する。ただ船の定期便に関しては初期段階においては設けず、必要かどうかは自治体や州の判断に任せ、世界連邦による州間定期便は検討しない。この船の運航計画も州から分配された植物燃料内で決定する。

 現在は浜辺をコンクリートで埋め立て、どこにでも大きな港を作ることが可能になっているが、拡張プラウト主義では漁業船などがなくなり、人々の行き来に必要な輸送船や貨物船、そして桟橋があるだけでよいので、港は自然によってすでに条件が整えられている天然の良港にのみ作る。

 そして航空機、船、エアロトレインなど、大人数を運ぶ交通機関の座席は、ファーストクラスやビジネスクラスのような分類分けはせず、すべて同じ種類の座席にする。ゆったりとくつろげる座席が基本となるが、便数、平均乗客数、植物燃料の量、距離によってその航路に応じた適当な座席数を決定するので、それによって座席の快適さも変わってくる。航路によってはすべてがファーストクラスになる場合もある。現在は出退勤の時間帯や祝祭日などに乗客が集中しているが、拡張プラウト主義ではそういった集中する時間帯がなくなり、また都市というものもなくなるので乗客数が全体的に分散し、ある時間帯やある地域は常に混雑しているということがなくなる。

■天然資源

 自治体の製造館で地下鉄、住居、生活品などのすべての製品を製造するが、製造の為に必要となる原料の鉄鉱石、銅、明礬石、珪砂(けいしゃ)や石灰岩などの鉱物は地域の鉱山から採掘する。そしてプラスチックは麻から作る。ゴムの原料となる樹液のラテックスは、パラゴムノキ、インドゴムノキなどから採集する。バイオ燃料はカメリナ、ジャトロファ、藻、セイヨウアブラナなどから、糸や布は麻や綿などから、樟脳はクスノキから、木材は区域を指定して育てる。

■指紋認証と個人情報の記録

 出生後の健康情報、医療情報、親の遺伝情報などの個人情報は、自治体の取り組みとして記録を残していく。その本人が何かの際に使用することでもあるが、何世代も後の子孫が過去を振り返る時にも使用される。
 また自治体によっては個人が3Dプリンタで生活品を作る時に指紋認証でログインし、その月に限度を超える製造を行っていないかや、レンタカーなどを借りる際は指紋認証を使って、これまできっちりと返却しているかどうかを自治体が確認できるようにする。

■更生施設

 自治体の市民は貧困や抑圧されるものがないので犯罪に手を染める可能性は限りなくゼロに近づくが、拡張プラウト主義初期では、誤って道を踏み外した人物のための更生施設を州内の数ヶ所の自治体に建設することを検討し、州と自治体の保安局が中心となって管理する。更生施設内でも普段の生活を行うことになるが、この施設から外へでることを禁止にするのかどうかなどの運営方針は州や自治体で判断する。
 この施設へ送り込まれる加害者のほとんどは、まず自治体内で過ちを犯し、自治体の保安部が拘束し、自治体では手に負えないと判断した場合に限り、最寄の更生施設へ送られる。

「世界連邦」

 連邦制は世界連邦と州が明確に権限を分かち合う体制をいう。アメリカにおいての連邦制は、州単位では扱いきれない国防問題や外交問題、国際貿易についての政治権限を中央にまかせ、それ以外のことについては各州にまかせるという大枠を明文化している。世界連邦は連邦首都を選定し、世界憲法を制定し、立法、司法、行政と権力を分散させ、それらに監査機関を設ける四権分立によって統治する。そして行政府には大統領省、慈善省、総務省、保健省、製造省、保安省、地下省、宇宙省、航空省、船舶省を設置し、州より大きな規模で管理調整を行う。

■立法府

 立法府(連邦議会)は人々の権利義務について法を定め、連邦議会の一院制によって構成される。州の大小に関わらず各州から1人選出される州知事によって構成される。
 立法府での法案は連邦議会の州知事達の全会一致の賛成により効力を有する。また各州の州議会で話がまとまり、全州知事全員の請求がある時は、修正の為の憲法会議を招集する。そして大統領やその他の連邦公務員に対する弾劾裁判も同じく、連邦議会の全会一致の賛成により弾劾対象者を免職する。

■司法府

 司法府では国際紛争などを解決する連邦裁判所をおく。連邦裁判所における裁判官の人事についてはまず、引退や死亡などにより裁判官に空席が生じると、道徳的道に精通した人物を連邦議会の州知事の中から一名選出する。連邦議会に参加している州知事は人格的にも判断力にも優れているので、裁判官としての能力にも問題はない。

■行政府

 行政府には大統領省が置かれ、立法府でつくられた世界憲法に基づき社会全体の利益を実現する。アメリカの合衆国憲法には国政執行権は大統領1人に帰属するとあり、行政府の最高責任者という位置付けになる。例を上げるとアメリカ大統領の役割は大きく5つある。行政府の長としての役割、国賓の歓迎など国家元首としての役割、戦争遂行の権限が与えられた軍最高司令官としての役割、戦争と最も密接に結びつく外交責任者としての役割、法案が法律化することを阻止する権限などがある立法上の役割。

 ただ拡張プラウト主義における世界連邦の大統領にはこういった政治的な役割は必要なく、世界各地を巡り、地域の人々と接し、各地の状況を把握して親しい関係を築くものである。地域社会そのものは自立した循環社会が構築されているので、新しい政策を実行していくような必要性は少なく、全体を統率する重しのような存在になる。
 また行政府には大統領省以外に、自治体や州の自治部、自治局を除いた各省が同じように設置され、世界の様々な統計と管理調整を行う。
 さらに行政府には慈善省が設置される。慈善省は個人や地域が持つ物資や技術の自発的な提供を管理し、世界全体の中から優先的に解決しなければならない問題に対してそれを公平に分配する。

■監査府と世界連邦平和維持軍

 そして拡張プラウト主義では世界各国にある軍事力は廃止され、世界連邦のもとにあくまで平和維持を目的とした1つの軍事力である世界連邦平和維持軍に再編される。これはサーカーのいうサドヴィプラによって、監査府の監査委員会の審議を経た上で執行される。サドヴィプラによる監査委員会は、立法、行政、司法のいずれの党派にも加担せず、冷静な判定者の役割を果たす委員会で、世界連邦が倫理的に運営されているかのチェック役を担う。平和維持軍は核兵器などは持たず、最低限の装備となる。

 サドヴィプラは人格が高潔で、私利私欲がなく、冷静で公平に物事を判断することができ、エゴを抑えることができる人物である。自分を選ぶよう求める人物ではなく、謙虚で冷静で控えめでありながら強い自制心と責任感を持ち、不正に対して立ち向かっていく正義感を持ち、社会情勢に精通した人物である。人格が高い人間ほど絶対的な平和主義者である。

■推薦選挙

 拡張プラウト主義における重要なことは現代とは異なり、社会を無理に発展させる必要はないということである。市民は自治体での生活でほとんどが完結し、現在のように忙しく働かなくても生活は成り立つので、社会の発展はすべての人が恩恵を受けられ、自然環境を破壊しない場合のみとなる。その選択をできる人物が必要であり、それにより平和で安定した社会を築くことが出来る。こういった人物が自治体や州の代表者になる必要があるが、現在の選挙制度ではこういった人物が表に出てくることは少ない。
 知名度や言葉上の公約が先行している現在の選挙制度には大きな問題点がある。それは有権者は限られた情報の中から誰かを選ばなければならない点で、多くの人はテレビ、新聞、街頭演説などの限られた情報からでしかその人物を判断することができない。仮に立候補者の活動的な姿や笑顔ばかりがテレビに映れば、有権者への印象はよくなるが、それは政治活動中の姿でしかない。つまり有権者は投票する人物が本当はどういった人物なのかが理解できないまま投票することになっている。

 こういったことを解決する選出方法として、自治体内で推薦選挙を行う。拡張プラウト主義では、5万人前後の自治体が多くなる。サドヴィプラのような人物を自治体のリーダーとして選出する為には、まず自治体内から自分の推薦する人物を選ぶ。そして自治体内で推薦者の多かった上位何人かが自治体の役員になる。知人として顔と性格を把握できる人数は千人程とし、役員の人数は自治体の人口から千人で割って、約1万人の自治体なら10人の役員が、5万人の自治体なら50人が選ばれる。割る値は自治体によって調節する。これにより私生活で接した印象から推薦する人物を選ぶことができる。こうして自治体の自治部が構成される。
 この時点で選ばれた役員は、人格、能力、健康に優れた人物ということになる。仮に50人の役員が選ばれた場合、まず推薦率トップの人物が全役職が決定するまでの進行役となる。そして50人を10人ずつ5つにグループ分けし、食事、討論、スポーツ、旅行など様々なことをして1週間寝食をともにし、グループの代表者2人を推薦で決定する。そうして選ばれたグループの代表者の計10人が再び1週間共に過ごし、自治体の知事、副知事、各部長を推薦で決めていく。
 お互い知らない者同士のことをいかにすれば知れるかという観点で、食事、討論、スポーツ、旅行の内容は、自分たちで発案して決めていく。討論については、相手が物事をどのように考えているのかを聞き出すテーマや質問を自ら考えて投げかけていくコミュニケーション能力や分析力が必要になる。スポーツを行う利点は、その人物の仕事の仕方がよく現れるからで、計画力、理解力、判断力、協調性、積極性、頭の回転の速さなどが見えやすい。この場合、様々な集団スポーツと個人スポーツの両面を行う。どの作業も相手の本質を見抜く力が必要で、本質を見抜ける人物は自治体における判断も信頼できるものとなる。
 人間には性格的に合う合わないがあるが、1週間朝から晩までともに過ごして、居心地の悪さを感じる人物がいたのであれば、それも一つの判断基準となる。人格者には共通点として、常に周囲の人が居心地よく過ごせるような配慮がある。

 こうして選ばれた自治体の知事は、州内の知事達が集まる州議会に参加する。州議会に集まる知事の中からは世界連邦へ参加する州知事1人を、同じようにグループ分けして共に1週間ずつ過ごした中から推薦で選んでいく。
 知事や役員の引退、死亡などにより欠員が出た場合は同じ推薦選挙で人員補充し、後任を決める際も1週間ともに過ごした後、決定する。知事や役員の能力不足が判明した場合は、自治部の全会一致の場合のみその人物を免職とする。
 このように選ばれた知事や役員などに任期は設けられず、善業を行い続ける限りその職を保つ。こうして常に誰もが推薦する人格と能力のある人物が選ばれ、長期にわたって調和した決定を下していくことができる。

 この選出方法は世界連邦の司法府、行政府、立法府においても当てはまり、それぞれのリーダーは州知事の中から選ばれる。現在世界には200カ国ほどの国が存在するが、拡長プラウト主義の世界においても200カ国であれば、まず州知事を世界連邦の首都に集め、そこで10人ずつのグループに分け、グループの代表者が決まるまで食事など様々なことをして過ごす。そうして20人のグループ代表者が決定される。その後も同様にして10人2グループに分け、5人のグループ代表者を決定する。そして最終的に10人のグループを作る。その10人が最終的にもう一度共に過ごし、最後の一人の世界大統領を決める。
 これは州知事や自治体の知事を決める場合も同じであり、最終の10人グループを目指してグループ分けし、選ばれたグループ代表者が再び10人グループを作り、と繰り返し最終の10人グループが最後に州知事などを決定する。

 自治体内において、知事の推薦する権利は生まれたての赤ん坊を含め、すべての市民に与えられる。ただ条件は、自ら考え、自らの意思で推薦を行うということで、つまり子供が自ら決心した時には、何歳であろうと自分の選んだ人物を推薦することができる。このようにプラウトでは、自治体で日常生活をともにする知人の中から人格者で能力もある人物を選んで推薦する。

 これらを踏まえ自治体の選挙の流れとしてはまず、役員の選出が必要になれば自治体が選挙期間を公表する。その期間内に自治体市民はパソコンなどを使って、自治体のウェブサイト内に設置された推薦選挙のページで推薦する人物を書き込む。このウェブサイトは常に公開された状態にしておく。そして選挙期間内であれば、1度推薦した人物をやめて別の人物に投票することもできる。こうして公平で隠し事のできない推薦選挙を行う。

 プラウトにおける理想的なリーダー像の参考例を上げるとするとならば次のようになる。日本には男性は外へ出て仕事をし、女性は家庭を守るという伝統的な夫婦像があるが、この家庭を守るタイプの女性が州知事、知事、各省のリーダーにつくことが望ましい。プラウトでは現代社会のように常に政策と革新を実行していく必要はなく、自然と人間の秩序を破壊せず、そのルールを頑(かたくな)に守る責任感と全体の調和を考えるバランス感覚を持った人物のほうが適している。そういった意味で家庭を守るタイプの女性が拡張プラウト主義ではリーダーとして適している。これは言い換えるならプラウトの社会は、女性の立場が現代社会よりも強まることを意味し、男性優位の競争的な社会ではなく、女性的な優しい社会となる。また、過去に悪い行いがなく、性格的に狂信的傾向がない人物を選ばなければならない。また人格は素晴らしいが仕事はできないという人物も避けなければならず、反対に仕事の能力はすごいが人格に問題がある人物も避ける。選ばれた人物はすべてにおいてバランスがとれた能力の高い人物が良い。

■四権分立

●世界連邦

●立法府  連邦議会(一院制)、世界憲法
●司法府  連邦裁判所
●行政府  大統領省、慈善省、総務省、保健省、製造省、保安省、地下省、宇宙省、航空省、船舶省
●監査府  監査委員会、世界連邦平和維持軍

 これら諸制度の下、世界連邦は各州がより良く暮らしていけるよう四権分立によって世界を統治していく。こういった制度では家庭、自治体、州、世界連邦のいずれにおいても権力者が生まれることはない。監査委員会は平和維持軍を執行する権利を有するが、監査委員全員の審議によって決定されるので、誰か1人が実行権を持つことはない。権力者がいないことは家庭にも当てはまる。現在の一般家庭では住居の持ち主が強い立場にあり、多くの場合それは亭主で、よって妻は夫に強く反抗できず、子供も同じく親に反抗する力が弱まる。これにより亭主が自分に都合の良い判断をした場合、周囲はそれに従わざるを得なくなり、反抗すれば家を追い出されることになる。しかし拡張プラウト主義では自治体から家を提供されるので、家庭内に権力者が生まれればそれ以外の家族は容易に家を出ることができる。もし自治体の知事が権力を振りかざせば、自治体市民は違う土地へ移住するだけとなる。プラウトでは誰も権力者になることは出来ず、これにより誰とでも公平な関係を築くことが出来る。また社会的な身分もなくなるので世界中の誰もが同じ立場、同じ目線で接しあうことができる。

 ただ権力者の代わりに統治者が必要になる。どんな集団組織においても、複数人がまとまって行動する時には1つの決定を下す必要がある。その決定を下す人物が統治者であり、統治者は権力者ではないので無理強いはできないが、周囲の人間が統治者の決定を尊重し、率先して守っていくことで全体がまとまる。



○世界連邦 - 州 - 自治体の各省の業務内容

自治部(自治体)~大統領省(世界連邦)--------------------------------------------------------------------

【世界連邦-行政府-大統領省】
・世界各州を訪れ、友好関係を築く。

【州】州知事
・州における大きな決定事項を行う。決定事項は拡張プラウト主義のルールに則って行う。
・州の運営が円滑に行えるよう諸問題の調整役となる。

【自治体】知事、副知事、役員
・各部の業務の役割を理解し、可能な限り技術面や仕組みを理解していく。
・自治体における大きな決定事項を行う。決定事項は拡張プラウト主義のルールに則って行う。
・自治体運営が円滑に行えるよう諸問題の調整役となる。

慈善省(世界連邦)--------------------------------------------------------------------------------------------

・世界連邦の首都に慈善省を設置する。
・個人や地域が持つ物資や技術の自発的な提供を管理し、世界全体の中から優先的に解決しなければならない問題に対してそれを公平に分配する。

総務省---------------------------------------------------------------------------------------------------------

【世界連邦】
・世界の人口や男女比などの資料作成。

【州】
・構築された自治体をワールドウェブマップに表示する。

【自治体】
・人口や男女比などの資料作成。
・自治体情報の作成と公開をウェブで行う。(人口、収穫物の収量、専門技術の一覧など)
・自治体市民の個人情報の管理(生年月日、血液型、出生地、家族構成、出産、転居、医療履歴)。この個人情報は保健部と共有し、保健部が医療履歴を更新する。
・住居と居住者情報の管理と、新入居者への住居の割振りとサポート。
・技術者の人員管理。慈善省と共有。
・伝統文化や文化財の管理。
・図書室の管理。
・エスペラントの普及。

保健省---------------------------------------------------------------------------------------------------------

【世界連邦】
・各州ごとの高度医療施設の把握とワールドウェブマップで情報発信。

【州】
・高度医療施設がある自治体の把握とワールドウェブマップで情報発信。

【自治体】
・食物の栽培。
・ハーブを栽培し、薬を製造。
・収穫物の収量をまとめる。
・病院設備や福祉に必要な設備の仕様をまとめ、製造部で作ってもらう。
・食育と医療に関する教材をウェブ用に作成。
・福祉関係の業務。
・育児教育と教育教材の作成と知の集積サイトでの公開。
・総務部の個人情報と連携し、個人の医療履歴の管理。
・需要が少なくなる高度医療設備を、周辺自治体と話し合ってどの地域に作るのか判断する。

製造省---------------------------------------------------------------------------------------------------------

【世界連邦】
・世界中に埋蔵する産出量の少ないレアメタルの埋蔵量の調査と資源分配の管理。
・教育教材、研究結果、設計図などをまとめて表示する知の集積サイトの構築。
・動画共有サイトの構築。
・ワールドウェブマップの構築。

【自治体】
・地域の地図、鉱物資源の分布、樹木の量、植物資源、年間降水量、気候、気温、技術者 リストなどの資料の作成。
・工場設備の構築。
・運営館、芸術館、製造館、住居の建設。
・生活必需品の製造。
・工場設備の使用マニュアルをウェブ用に作成。

保安省---------------------------------------------------------------------------------------------------------

【世界連邦】
・世界的な災害が起きた場合は世界連邦の保安省が中心となり、救助などを進める。

【州】
・複数の自治体が被害にあった大規模災害が起きた場合、州の保安局が各地のヘリコプ  ターなどの大型設備を統率して派遣する。

【自治体】
・消防車やヘリコプターなど災害時の必要設備をまとめ製造する。
・災害対策マニュアルをまとめ、ウェブで公開する。
・自治体の消防訓練。火事が起きた時の地下式消火栓の使用方法の指導や、説明動画の作成など。
・周辺自治体と話し合い、ヘリコプターなど災害救助用の大型設備をどこに設置するか決める。

地下省---------------------------------------------------------------------------------------------------------

【世界連邦】
・世界規模での電力調整。世界連邦の首都にその機能を置く。

【州】
・州の間での電力調整。初期は適切な自治体に、州が増えてくれば各州の州都にその機能を置く。

【自治体】
・地下鉄とIT電力水道管理室の構築に必要な設備をまとめ、構築する。
・運営館にIT電力水道管理室の構築。
・河川からIT電力水道管理室へ上水道を構築。
・IT電力水道管理室から家庭へ上水道、通信ケーブル、電線を結ぶ。
・地下鉄の構築と構築マニュアルの作成。
・エアロトレインと駅を構築。
・エアロトレインの運行計画と運転マニュアルの作成。

宇宙省---------------------------------------------------------------------------------------------------------

【世界連邦】
・世界に打ち上げられている人工衛星の管理。

【州】
・自治体で作られる人工衛星の管理。

【自治体】
・人工衛星の製造。

航空省---------------------------------------------------------------------------------------------------------

【世界連邦】
・国際線の運行スケジュールを管理調整する。
・初期は世界中の石油の合計から、各州の航空機の石油燃料の分配を決める。

【州】
・初期は州全体の空港で必要な航空機用の石油燃料の合計を算出し、世界連邦の航空省に報告する。
・州全体の空港で必要な航空機用のバイオ燃料の合計を算出し、原料となるカメリナやジャトロファの栽培計画を立て、各自治体へ割り振る。
・国内便の運行スケジュールを管理調整する。

【自治体】
・空港に最も近い自治体が空港と航空機を管理し製造も行う。空港に製造工場を設備する。

船舶省---------------------------------------------------------------------------------------------------------

【州】
・州全体の港で必要な船舶用のバイオ燃料の合計を算出し、原料となるカメリナやジャト ロファの栽培計画を立て、各自治体へ割り振る。
・国内の運行スケジュールを管理調整する。

【自治体】
・港に最も近い自治体が船を管理し、製造も行う。

○エスペラント

 世界が1つになる拡張プラウト主義においては、各母国語とともに世界的な共通言語が必要になる。共通言語として有名なものにエスペラントと呼ばれる言語がある。エスペラントは1887年、当時ロシア領だったポーランドのユダヤ人眼科医ザメンホフが提案したもので、これは中立公平で学びやすい国際共通語とされ、それぞれの言語や文化の違いを越えて、人々がコミュニケーションできるようにするための橋渡しを目的としている。現在多くの分野で英語が事実上の国際語として使われているが、英語は特定の民族、国家の言葉であり、英語を外国語として勉強する人間にとっては不都合になり公平ではない。そういった意味でエスペラントは特定の民族、国家、地域と対応しておらず、習得した大部分の人が、この言語を自分の意思によって選択して学習し、その結果習得した人であるという点で公平になる。
 世界ではヨーロッパが活動の最も盛んな地域でアジア、アメリカ、オセアニア、そしてアフリカなど世界各地に100万人程度のエスペランティストが存在すると推定され、日本には1万人程で、中上級者は千人程とされている。日本では宮沢賢治が作中の実在の地名をエスペラント風にしたものを用いていた。また彼の原作になる「銀河鉄道の夜」ではシーンのタイトル、劇中に出てくる商店の看板等にもエスペラントが用いられている。また岩手県花巻市のJR東日本の釜石線は、各駅にエスペラントによる愛称が付けられている。
 エスペラントは基本的にローマ字読みで、【a、i、u、e、o】の5つが母音で、それ以外は子音となる。アクセントは、最後から2番目の母音を強く、やや長く発音する。ただしその母音の後に複数の子音が続くときは短く発音する。

・bonan tagon【ボーナン ターゴン】 こんにちわ
・saluton【サルートン】 やあ
・dankon【ダンコン】 ありがとう
・kunlaboro【クンラボーロ】 協力
・akordo【アコルド】 調和
・suno【スーノ】 太陽
・luno【ルーノ】 月
・kaj【カィ】 〜と、&

 拡張プラウト主義ではエスペラント話者の協力を得て、1日中エスペラントが聞けるラジオや、人気のある映画や本などをエスペラントに翻訳したもの、そしてネット上で使用できる翻訳サイトや辞書などの内容を充実していく。

○ワールドウェブマップ

 世界連邦を構成する各州と各自治体のつながりは、世界地図をインターフェースに持つウェブサイトによって可視化され、世界の人々はそのウェブサイトを利用することで各地の情報が一目で解るようになる。よって各自治体は情報交換の場としてウェブサイトを製作する。自治体や州の情報、地下路線図、道路図、航空情報、船舶情報、各時刻表、GPS、ルート検索、カーナビゲーションシステム、時差計算、天気、写真、各種統計、グラフなどは、この世界地図で可視化され、使用言語は各母国語とエスペラントになる。イメージとしては現在のグーグルマップにこういった機能がついたものとなる。
 ワールドウェブマップの個人情報の入力画面は世界共通フォーマットにし、個人情報は自治体の総務部と保健部しか見られないようにしておく。入力項目は、生年月日、血液型、出生地、家族構成、出産、転居、医療履歴など。個人情報の更新を行えば、その上の階層である自治体、州、世界連邦の数値も自動で更新されていく。

ワールドウェブマップに表示する項目

・世界連邦(世界の情報)
全人口、男女比など、地域の地図、鉱物資源の分布、樹木の量、植物資源、年間降水量、気候、気温、天気、技術者リスト、発電電力図、航空スケジュール、船舶スケジュール、地下鉄分布図と運行表

・州(州の情報)
人口、男女比、公用語、州知事名、設立年月日、時間帯、地域の地図、鉱物資源の分布、樹木の量、植物資源、年間降水量、気候、気温、天気、技術者リスト、発電電力図、航空スケジュール、船舶スケジュール、地下鉄分布図と運行表

・自治体(自治体の情報)
人口、男女比、公用語、知事と役員名、設立年月日、時間帯、地域の地図、鉱物資源の分布、樹木の量、植物資源、年間降水量、気候、気温、天気、技術者リスト、発電電力図、国際電話番号

・個人情報(総務部と保健部が共有管理。基本非公開)
生年月日、血液型、出生地、家族構成、出産、転居、医療履歴

 ウェブ関係においては各製造部のデザイナーやプログラマーが製作と管理を行うが、世界連邦の製造省によって選出されたウェブ技術者がワールドウェブマップの製作を行い、そのサイトに世界連邦、州、自治体の各部が時刻表、路線図、統計、ウェブサイトの情報を随時アップしていく。
 こういった世界規模での通信、放送、観測などを行う人工衛星は、自治体、州、世界連邦の宇宙省が各規模に応じて管理する。そして世界中の衛星の、いつ何の目的で打ち上げられたなどの情報は、個人から自治体へ、自治体から州へ、州から世界連邦へ伝えられ、世界連邦の宇宙省がすべてを把握することになる。

○動画共有サイト

 現在では一般市民が目の前で起こった出来事をカメラで撮影し、それをニュースとして動画共有サイトにアップすることは一般的になっているが、プラウトでもそういった動きは続く。現在はテレビなどの報道の仕方ひとつで視聴者の感情を煽ることは容易で、背景に流れる音楽を変えるだけでもニュースの印象は変わり、視聴者は良くも悪くも疑いの心を持たず内容を受け入れる傾向にある。こういった映像の性質や影響力は戦争などで国民感情を煽る目的でも使用され、大多数は戦争を望んでいない状況でも1人の好戦的な発言が流されると、国民全員が戦争を望んでいるかのような印象を受けることもある。
 スポーツ番組などで音を消し映像だけで見るようにすると、目と耳から得ていた情報が1つ減るので余裕が生まれ、様々なことを考えながら見るようになる。しかし再び音を出すと映像と音の情報で頭は一杯になり、自分で考える割合が極端に減る。よってただ見る内容を無条件に受け入れる洗脳状態のようになる。視聴者はこういったことに気をつけなければ、一方向から伝えられた出来事をただ受け入れるだけとなる。
 テレビの内容は自分に興味があるかないかに関係なく次々と流れ続け、興味がない内容であれば考えて見る割合も極端に減るので、その情報をただ受け入れるだけとなる。興味がないのでその内容の真実を熟考しながら見ることはなく、ただ擦り込みのように印象が脳に刻まれる。ネット上の動画も同じようなことは起こりえるが、テレビと大きく違うのはほとんどの場合興味のある映像を自ら選んで見ることが多く、興味のない映像は見ないということにある。自ら望んで映像を選択するので真実を知りたいという好奇心が強く、よって考えながら見る割合が増え、様々な意見を取り入れようとする。

 こういったテレビとインターネットの2つの傾向を考慮し、少しでも真実に近づけるように、そして視聴者が自ら考えながら情報収集できるようにするには、市民参加型のオンライン動画共有サイトとして運営することが1つの方法となる。つまり報道機関を権力化せず、様々な撮影者の視点で出来事を見ることができるようにする。そして自分の中でその断片をつなぎ合わせ、出来事の全体像を形作っていく。
 拡張プラウト主義では市民が持つカメラの性能が向上することや余暇が増えることもあり、こういった市民の投稿は一層増え、サイトの利用頻度は高まる。

○知の集積サイト

 拡張プラウト主義初期の製造館で作られる製品の種類は約170種類程となるが、月日が経つにつれ人々はそれらの製品に改良を加え、新たな機能やデザインを発明していく。これはビーガンのレシピについても当てはまり、菜食料理が基本となりながら料理の種類は人の数だけ生み出されていく。さらにこれは音楽や絵画など芸術活動についても当てはまる。よってこういった新たな発明、デザイン、レシピ、創作物などをまとめて表示し、情報知識の交換ができるサイトを設ける。これにより例えばある地域で高性能なオーディオ機器が発明されれば、まずその発明者が集積サイトでその設計図を公開する。それを違う地域の職人が参考にし独自の新たな発想と共に改良を加える。そしてその新しく出来たオーディオ機器の設計図も集積サイトで公開し、他の職人がそれを参考にする。音楽なども自分の好きな曲をサンプリングして製作することが自由になり、著作権の問題が起こることはなくなる。教育においては、国語、数学、理科、歴史、外国語などの資料も掲載され、子供や大人の教材としても使用される。書籍も電子化され、翻訳もされて共有される。
 現在は利益主義の為に新たな発明も他人に知られないように隠されたり、特許という形で他人が使用できないようになっているが、拡張プラウト主義では金銭がないためそういった閉鎖的な行為は必要なくなる。科学、芸術、教育など、各職種が別々に扱っている情報知識を、知の集積サイトとして1つのウェブサイトでまとめて扱い、知識の無償公開と交換を円滑にしていく。
 このように利益主義ではない社会においては、自分が生み出すアイデアは数個であっても、自分以外の数十億人が生み出すアイデアを自由に使えるようになる。ただ当然情報知識の提供は個人の自由であり、例えば芸術関係では閲覧者を驚かせるために事前には見せないという行為も必要になることから、無償提供の判断は個人に委ねられる。この知の集積サイトは閲覧者が翻訳を書き込める機能を備え付けておき、ワールドウェブマップや動画共有サイトはこの知の集積サイトの一部となる。

○公平な技術検証

 現在の金銭で成り立つ社会において、石油で動くものが電気に移行すれば石油に関係する企業は利益を得ることができなくなる。よって石油に関係する企業は電気社会へ移行することを阻止する。電気自動車は1800年代中頃にはすでにアメリカで開発され、市販され、市民に利用されていた。日本でも戦後に電気自動車が販売されていた時期があった。電気自動車は当時から静かで環境を汚す排気ガスもなく、構造もシンプルで速度も時速100kmに達していた。それが1900年代に入ると、音は大きく排気ガスを出す複雑な構造の石油自動車に移行していった。金銭社会では本来役に立つはずの技術が意図的に使用されないことがある。しかし拡張プラウト主義ではそういった技術も正しく検証され、社会の為に使用される。

 こういった技術の1つに常温核融合がある。これは室温で水素原子の核融合反応が起こる現象のことで、高熱を必要とせず、豊富なエネルギーを生み出すことができる。これは安全で放射能が発生せず、二酸化炭素も発生しない。つまり太陽光発電とともに社会を支えるエネルギー源となる可能性がある。
 現在では一般的ではない技術や非常識扱いを受けている技術も拡張プラウト主義では公平に検証し、環境汚染がなく社会の発展に寄与する技術は世界中で使用される。

○世界憲法

 次に世界統治に必要な世界共通の世界憲法を見ていく。この世界憲法の内容は、拡張プラウト主義に必要とされる憲法と、シカゴ草案と呼ばれる世界憲法予備草案を組み合わせたものである。シカゴ草案とは、1945年8月6日の原子爆弾投下に衝撃を受けたシカゴ大学総長のロバート・ハッチンスが、次の世界大戦が人類滅亡につながる事を憂慮して、戦争根絶の為に世界連邦の必要性を感じ、そのため結成した世界憲法審議委員会によってまとめられたものである。

 世界憲法

-- 前文 ------------------------------------------------------------------------------------

 全地球上の人民は霊的、精神的、物質的に向上することが共同目標であり、この目標を迫求するためには、普遍的な平和の実現が必要条件である。民族や国家の戦争と不正は国際的無政府状態において生まれるものであり、よって世界連邦による人類統一の時代が始まらなければならないという点で意見の一致をみた。各国政府は各主権を正義に基づく世界連邦に委譲し、ここに制定する憲法をもって世界連邦の基本法を定める。

 人々の霊的、精神的、物質的成長を促す行為を善業とし、それによって現在に生きる人々や後に生まれ来る人々の向上に尽くすことを共通の大義とし、永久不変のものとする。

-- 第1条 世界連邦と州  -----------------------------------------------------------------------

第1節 世界連邦の管轄事項は次の通りとする。

①世界連邦を構成する州において本憲法が遵守されるよう監督すること。
②すべての自然と動植物の安全と平和を保障すること。
③すべての民族の文化を尊重し、多様性を認めること。
④各州の兵器及び軍の所持や暴力行為を禁止し、監督すること。
⑤州の境界変更や新しい州の成立に関してこれを監視し、最終の決定を与えること。
⑥未だ自治の資格をもたない地域の施政を行ない、その資格を得るに至った場合、適時に自治制を布告すること。

第2節 基本的諸権能は次の諸機関に付与される。

・立法府 連邦議会(一院制)
・司法府 連邦裁判所
・行政府 大統領省、慈善省、総務省、保健省、製造省、保安省、地下省、宇宙省、航空省、船舶省
・監査府 監査委員会、世界連邦平和維持軍

第3節 世界連邦や州において、次の内容を規定する法や行為は許されない。差別行為、暴力行為、不公正、奴隷制、死刑、税の賦部、表現の自由の制限、自然破壊または循環と秩序を乱す行為、エネルギー源など共有資源の私物化。ただし州または連邦下の諸制度内において正当なる贖罪として課せられ、社会奉仕および受刑者の更生を目的とするものはこの限りではない。

第4節 新しい州は連邦議会の決定によって、連邦への加入を許されるものとする。

第5節 州は市民に対し、土地、食料、電力、住居、医療、教育、生活品の無償享受を保障しなければならない。

第6節 すべての事業の運用と用途が、世界連邦の公共事業としての規模と性格を持っている場合、またそれらに国際的独占事業の性格と支配力を有するに至った場合は、世界連邦の事業とする。

第7節 世界連邦は標準となるべき公用語をエスペラントと指定する。

第8節 大統領やその他の連邦公務員に対する弾劾裁判では、連邦議会の全員の賛成により弾劾対象者を免職する。

第9節 本憲法により世界連邦に委託されておらず、世界連邦の各州に対して禁止されていない諸権能は州に留保される。

--  第2条 立法府 ----------------------------------------------------------------------------

第1節 すべての立法権は連邦議会に帰属する。連邦議員は各州議会によって選出され、善業を保持する限りその職を保つ。

--  第3条 司法府  ----------------------------------------------------------------------------

第1節 世界連邦の司法権は連邦裁判所及び連邦議会に帰属する。連邦裁判所の裁判官は連邦議員から選ばれ、善業を保持する限りその職を保つ。

-- 第4条 行政府 ----------------------------------------------------------------------------

第1節 行政権は世界連邦大統領に帰属し、大統領は善業を保持する限りその職を保つ。

--  第5条 監査府  ----------------------------------------------------------------------------

第1節 監査委員会は立法府・行政府・司法府が倫理的に運営されているかを監査する。

第2節 監査委員会は審議を経た上で世界連邦平和維持軍を執行できる権利を有し、不正、紛争、暴動、侵略、災害の解決にのみ使用することができる。

--  第6条 憲法改正手続き  ---------------------------------------------------------------------

第1節 憲法修正案は連邦議会の全会一致の賛成によりこの憲法の一部として効力を有する。または全州の州議会において全員の請求がある時は、修正の為の憲法会議を招集しなくてはならない。

--  第7条 連邦優位の規定  --------------------------------------------------------------------

第1節 世界憲法は州の最高の法規であり、これによって各州法の中に反対の規定がある場合でもこれに拘束される。

第2節 すべての人はこの憲法を擁護する義務を負う。

○全一

 拡張プラウト主義では毎日が休日のようになり、人々の1日は好きな時間に起きることから始まる。そして目覚めれば自分のしたい事をし、行きたい所へ行き、遊びたい人と遊ぶ。その中で誰もが天職を発見する。これを可能にするのは食物、電力、生活品などを自分達で補っているからで、天職に取り組み、同じ興味を持つ仲間が周囲にいれば、誰もが充実感を感じながら生活を送ることができる。その中で精神性が高まるほど性格が純粋になっていき、純粋になるほど大人が子供のように無邪気になっていく。人間は苦しむために存在しているのではなく、創造的に遊びながら奉仕し、そこから得られる喜びを経験するために存在している。

 現在では興味があることに出会っても、失敗の恐れからチャンスを逃してしまうことがあるが、毎日好きなことをして過ごす世界では、常に楽しく前向きになるのでそういった恐れはなくなる。そして誰もが自分を楽しませ、自分の満足感が満たされそれを越え始めた時点から他人に奉仕を始める。そして周囲にもそういった人間が増え、喜びを与え合う社会になり、誰もがそういった生活に感謝する。人々のモラルは高まり続け、他人の為に何かをする度に自分も幸せを感じ、知人から初対面の人にまで誰に対しても愛情ある態度で接するようになる。そして他人に迷惑をかけないよう自分を律する。このようにして世界中の人が世界連邦に参加し、人間の精神性が向上して暴力性がなくなれば、拡張プラウト主義初期においては存在する警察、裁判所、世界連邦平和維持軍は必要なくなる。

 しかし現在の社会制度での人間は、金銭、物質、地位、名誉への執着や所有欲、そして常識によって、朝から晩まで永遠に働かなければならない世界に生きている。自分たちを苦しめる仕組みが当たり前として生きているが、ここまで見てきたように、人間が幸せを感じながら生きていくためにはそういったものは必要なく、過不足のない生活品を自分達で作り出すことで、1日中好きなことをして過ごすことができる。現代社会のあらゆる根本は損得で、金銭を得なければ生活を維持できず、結果が重視される社会となっているが、貨幣が無くても成り立つ社会においては、純粋に人の喜ぶものや社会の役に立つことが根本となる。

 人間は純粋な善意で誰かを喜ばせようとすると自分の中にも喜びが芽生えるのを感じる。その喜びを感じることで自分が幸せになり、相手にも伝わるので喜びが共有される。その喜びを常に感じるように誰かの為に奉仕していくと、人間は常に楽しく幸せに満ちた世界に生きることができ、反対に他人を憎んで生きると憎しみの世界に生きることになる。純粋な愛情で奉仕するとはただ与えるのみであり、どのような世界に生きるのかは常に自分の選択次第となる。

 自然や人間の祖先をさかのぼると、すべてを生み出した1つの根源に行き着く。物質を構成する原子や素粒子はその根源から現代まで先祖代々受け継がれてきており、つまり人間も自然もその根源の一部分ということになる。自分の手や足や爪が自分の一部分であり自分でもあるように、人間自身も根源を構成する一部分であり根源でもある。自分の周りに溢れるすべてのものも根源であり自分でもあるということで、自分の体の一部分を傷つけると痛みを感じるように、人間も他人や自然を傷つけることは巡り巡って自分を傷つけることを意味する。現に自然破壊は人間に悪影響を及ぼしている。自然も動物も人間も建物も道具もすべては1つであり、すべてはつながっている。つまりそれらを尊重するということは自分を尊重することになる。

 こういったことは自然から遠ざかった社会では感じにくく、大きな依存で構成される貨幣社会では他人を尊重する気持ちが薄れ、自分を優先し、結果自分も尊重されず、よってお互いの信頼感が失われる。反対に拡張プラウト主義は人や自然を尊重する社会で、他を尊重することは自分が尊重されることを意味する。

 この考え方が基本にあり、拡張プラウト主義では責任の擦り付け合いという問題は起こらない。もし車同士が衝突した場合、現在は被害者と加害者に分かれ責任の追及が始まるが、拡張プラウト主義ではすべての行動が自己責任となる。つまり事故を起こすことも巻き添えに合うこともすべてが自己責任となる。相手に行うことは自分に行っていることとして考えることが基本で、もし故意に他人を傷つければやがて自分が傷つけられることを意味し、責任を押し付ければやがて自分にも災難が降りかかり、相手を許せばやがて誰かから好意を受ける。
 現在の常識で考えるとこういった自己責任の概念は理解し難い面があるが、自分がとる行動の動機を認識する必要がある。動機が怒りや悪意に満ちたものであれば、やがてそれは自分へ返ってくることとなり、許す心や奉仕の心が動機であればやがてそれも自分へ返ってくる。つまり動機が純粋な愛情であれば失敗したとしても問題はない。酒を飲んで車に乗れば他人に迷惑をかける可能性があると知りながら飲酒運転をし、その結果人を跳ねれば、自己中心的な動機の結果として自責の念に駆られ、苦しむことになる。すべての出来事にはその出来事が起こる前に原因となる心の問題がある。
 どんな時も災難に巻き込まれた場合は、寛大になり許すことが必要で、感情に流されれば再び新たな災難を呼び込む。怒りは怒りを生み、親切は親切を生み出す。
 もし内面に苛立ちや憎しみを感じれば、その感情を客観的に見つめる。するとその感情は徐々に薄まり消えていく。これは体をどこかにぶつけて痛みを感じたときも同じで、その痛む部分を避けるのではなく、よく集中して観察すると痛みは薄まり消えていく。感情的になれば感情を客観視する余裕がなくなるが、理性で感情を抑え、「今自分の中に憎しみを感じている。」「足に痛みを感じて苛立っている。」と感情を観察するようにすると、その場の感情が和らいでいく。

 自分がとる行動の動機を自己探求すると、それが自我による行動なのかが認識できる。動機が自我から発せられたものなのかを把握することは、自分の現実を直視するということであり勇気がいるが、直視することができれば精神面を向上させることにつながり、自分を無我へと近づける。
 精神性が高まり続け、人間の自我がどこまでも無くなり無我へ向かうほど、自分が誰かの為に奉仕し、誰かが自分の為に奉仕するのみの調和の世界が生まれる。つまり人間は好きなことをして楽しみながら精神性を高め、その過程で自分は何者であるかを知り、やがて無我へ近づいていくことが目的である。
 生活の在り方そのものを変えれば人間の意識は変化し、あらゆる問題は解決される。しかし生活を変えなければ現状のまま悪化の一途を辿り、やがて崩壊する。自給自足によって生活を成り立たせることで世界すべての問題が解決でき、破壊の時代から調和の時代へと移行する。自然の復元と生活品の享受、これら自治体構築はおおよそ3年〜5年で達成される。その為にすることは自然に手を加えないこと、そして工場を建設し、そこからの資材で住居、生活品、地下鉄を作り出すことにある。そしてこれを世界中で実行すれば10年ほどで世界のほとんどが結ばれる。
 自然の循環の中で自給自足を行う事が人間の基本であり、その基本から外れれば問題が問題を生む悪循環に陥る。本来政治というものは必要なく、人間が在るべき姿で生活すれば地域は自立して運営される。人種性別に関係なく世界各国本質は同じであり、誰もが家族として接しあう世界が訪れる。